1269.残念親衛隊が、自警団に進化!?
『ツリーハウスクラン』に戻ると、ニアが出迎えてくれた。
ニアはやることがあると言って、別行動をしていたのだ。
それはいいのだが、出迎えてくれたニアは、めっちゃドヤ顔をしている。
そして、合間に少し悪い笑みも浮かべている。
この人やらかしたな……。
何やって来ちゃったんだろう……?
嫌な予感しかしないが……うーん、怖すぎる。
「何か……いいことあったの?」
俺は、恐る恐る訊いてみた。
「まぁね。昨日の件を受けて、この迷宮都市の治安を守るために私なりに考えたことがあるよ。それを形にして、作り上げて来ちゃった!」
再びの超ドヤ顔だ。
完全にやっちゃったわけね。
というか、この感じ……やり切った感すらある。
聞きたくない気がするが……この流れでは聞かざるを得ないし、聞かない方が不安でしょうがない。
「何をやって来ちゃったわけ?」
「ちょっと! 何よその顔! 凄くいいことしてきたんだから、そんな残念そうな顔しないでよ!」
「え、そんな顔になってた? ごめんごめん、まぁそれはいいから教えてよ」
「わかったわよ。よーく聞いてよね! えーっとねぇ……」
そう言って、ニアが語りだしたのは、ある意味衝撃、ある意味笑撃の内容で、ニアさんらしい内容でもあった。
それは……この迷宮都市を守るために、新たな組織を作り上げてきたということだった。
その組織というのは、治安維持に協力する自警団組織だ。
そして、そのベースになっているのが、ニアさんの残念親衛隊だった。
ニアさんの下に集まる中堅冒険者たちに対する残念親衛隊という名称は、正式なものではなく俺が勝手にそう呼んでいるだけだ。
だが、そんな彼らは日増しに連帯感が強くなっていたらしく、正式に組織化してニアの役に立ちたいという申し出をニアにしていたらしい。
ニアは、保留というか、正式な許可を出していない状態だったとのことだ。
残念親衛隊のメンバーは、みんな『ツリーハウスクラン』の賛助会員になっているので、クランのサブメンバーとなっていて、無理に組織化する必要はないと考えていたかららしい。
ニアには珍しく冷静な判断で少し驚いたが、俺もそう思う。
そんなニアだが、今日になって組織化を決断したらしい。
昨日のテロと呪いの薬が流通しているという現状に鑑みて、少しでも迷宮都市の人々を守る手段を増やそうと考えたとのことだ。
ニアの残念親衛隊は、今までも迷宮探索の合間に、『ミトー孤児院』周辺を巡回してくれたりしていた。
そんな街中の巡回警備活動を、これからは本格的にやってくれるということのようだ。
そんなこんなで、新しく作られた組織を紹介された。
ニアさんは、わずかの時間で組織を発足させただけでなく、組織の幹部も決定したらしい。
そして、その幹部になった者たちは、密かに『ツリーハウスクラン』に集まっていた。
俺に紹介されるために控えていた幹部たちが、ニアの合図と共に次々に俺の前に来た。
幹部たちは、ほとんど顔を見たことがある連中で、残念親衛隊の中でも中核的なポジションの者達だった。
それにしても、わずかな時間でここまで組織を作り込むなんて……。
元々残念親衛隊のみんなが、準備していたからできたんだろうけど。
だが、ニアさんに関わる組織だけに……変な風に作り込まれた組織になっていた……残念。
まず組織の名前だが……『ニアーズハイ』という組織名だった。
その名前を聞いたときには、思わず吹いてしまった。
さすがニアを崇める残念親衛隊がベースになっている組織だ。
そしてなんとなく、危ない名前だ。
ニアの存在が、薬物のようにハイにしてしまっているのだろうか……?
まぁそんな怪しい組織でなかったとしても、俺にはパシリ組織にしか見えなくなってきた。
さらには……俺の『自問自答』スキル『ナビゲーター』コマンドのナビーさんが作っているチンピラ更生組織、もとい社会復帰訓練組織の『舎弟ズ』のニア版のようにも見えてきた。
まさか、『舎弟ズ』のように規模拡大しないよね?
迷宮都市だけで収まればいいんだけど、『アルテミナ公国』全土とか、『コウリュウド王国』とか、大規模組織になったら怖いんですけど……。
いかん考えちゃダメだ。
考えたら負けな気がする……無視。
ちなみに、ニアさんは今現在、様々な種類の猿で構成された『猿軍団』や選りすぐりパーティー『モンキーマジック』を有している。
今回それに、自警団組織としてのニア親衛隊『ニアーズハイ』が加わるかたちである。
まぁ『ニアーズハイ』は、『絆』メンバーにはなっていないので、チートな能力はないんだけどね。
それでも中堅冒険者の集まりだから、普通の衛兵隊とかよりは全然強いとは思うが。
この『ニアーズハイ』には、名誉隊長がいて、それは、ギルドの買取センター長のドンベンさんだった。
いつも上半身裸でテカテカにテカッているスキンヘッドの人である。
彼は冒険者たちからの人望も厚く、今までも残念親衛隊の実質的なリーダーみたいな感じだったから、名誉隊長というのも頷ける。
ギルド職員であるために、表立って組織に入れないから名誉職の肩書を得たのだろう。
と言うことなので、彼はこの場にはいない。
実際の組織運営も、別の人がやるようだ。
ニアによれば、ドンベンさんは正式に組織が発足するからには冒険者ギルドを辞めて、そっちに専念したいとあきれた申し出をしてきたそうなのだが、ニアの必死のお説教で思い止まったらしい。
ニアにしては、冷静なナイス判断である。
と思いながらニアを見てしまったら……なぜか『頭ポカポカ攻撃』を発動されてしまった。
女子が絡まないパターンで、『頭ポカポカ攻撃』を発動されるのは珍しい。
というか、ニアって時々俺の心の中を読んでいるようで……ちょっと怖い……。
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