1258.超本気モードで、付喪神化成功!

 『キジムナー』のカジュルちゃんが、『絆』メンバーになってくれたお陰で、レアな植物魔法のスキルを二つ追加することができた。

 『共有スキル』が、更に充実した。


 また『種族固有スキル』には、『釣り名人』という面白そうなスキルもあった。


 ただ俺としては、姿を変えるようなスキルがあるのではないかと思ったが、それはなかった。


 カジュルちゃんは、四十センチくらいの赤いふわふわの毛玉の形態と、人型の形態になれるのだが、それはスキルの力ではなく、本来持っている能力とのことだ。


 カジュルちゃんによれば、精霊たちが力を貸してくれるので、ある程度姿かたちを変えたり、大きさを変えることができるのだそうだ。


 だから人型形態は、基本三十センチくらいなのだが、人間の十歳位の大きさになろうと思えば、なれるらしい。


 そんなことができるなんて、やはり精霊色が強いというか、かなり特別な妖精族だと思う。


 ただ人間サイズに大きくなっているのは、エネルギー消費が激しくて効率が悪いから、あまりやらないらしい。

 『基本ステータス』の中にある『スタミナ力』や『魔力』の消費が大きいようだ。

 人間サイズになっていたら、食料とかも、元のサイズの時よりもたくさん必要になっちゃうしね。


 森の中にいる時は、毛玉の状態の方が過ごしやすいようなのだが、ここにいるときは、人型形態で過ごすとのことだ。


 まぁ子供たちを含めたクランメンバーには、すでに特別な妖精族であることは教えてあるから、突然毛玉になっても、大騒ぎになる事はないだろうけど。


 しばらく子供たちと一緒に遊びたいというので、自由にさせてあげることにした。


 それから、『デミトレント』たちを強化したので、後はレベル上げをしっかりやることにした。


 魔物を捕まえてきて、『デミトレント』たちに戦ってもらって、パワーレベリングをする予定だ。

 レベル20か30くらいまでは、上げてしまおうと思っている。


 そうすれば、『ツリーハウスクラン』の守りは、かなり向上するからね。



 それから俺は、生垣を作ったときに、爆弾テロ事件で大きく破損した正門や、えぐれた地面も修復した。


 植樹式をしているときに、衛兵隊が来て被害状況の検証もしてくれたので、修復しても問題なかったしね。



 もう『ツリーハウスクラン』は落ち着いたと言えるので、俺はイチョウちゃんと共に、『セイチョウ迷宮』に向かうことにした。


 ニアが回復魔法をかけたおかげで、アバターボディーは大丈夫なようだが、一応総合的なメンテナンスをしたほうがいいだろう。


 転移で、ダンジョンマスタールームに移動した。


 アバターボディーをメンテナンス槽に入れ、チェックと修復を行う。


 その間に、俺はやることがあるのだ。


 実は……この『セイチョウ迷宮』のダンジョンマスターになってから、密かに毎日、夜な夜なやって来て、やり続けていることがある。


 今日の事件を受けて、俺はその作業を、今改めて全力で行うことに決めたのだ。


 今までは、毎日コツコツとやって、長い時間をかけて、もしうまくいけばいいという程度でやっていた。


 だが今は、なんとしても成功させたいと強く思っている。

 超気合を入れて、これからやろうと思う。


 それは何かというと……付喪神化だ。


 実は、この人造迷宮である『セイチョウ迷宮』を付喪神化できないかと思って、毎日夜な夜なやって来ては、スキルを使っていたのだ。

 俺の『固有スキル』の『波動』の『生命力強化』コマンドを迷宮に対して、使い続けていたのだ。

 『生命力強化』コマンドは、付喪神化を促進することができるコマンドである。

 そして今までの経験で、このコマンドの使い方もわかってきたので、コツコツ実行していたのだ。


 ただ、そう簡単にはうまくいかなかった。


 この迷宮のダンジョンマスタールームの壁に手を当てて、スキルを発動し、俺の生命エネルギーを流し込むイメージで、ある程度の時間、集中して頑張るということを続けてきた。


 だが、いかんせんダンジョン自体が超巨大だから、全体にエネルギーを流し込む感覚をつかむだけでもかなり大変だったのだ。

 まぁ超巨大といっても、迷宮としては小さい方なんだけどね。


 俺が付喪神化させた『闇の石杖』の闇さんの大きさと比べたら、迷宮は超巨大と言える。


 毎日やり続けて、うまくいけば儲け物と思っていたが、なんとしても成功させたい。


 今すぐは無理でも、できるだけ早くに成功させたい。


 そうすれば、レベルを上げることもできるし、俺の『絆』メンバーとして、『共有スキル』が使えるようになる。


 俺は全力で集中し……スキルを発動する。


 この『セイチョウ迷宮』すべてに、俺の生命エネルギーが行き渡るイメージ……そして精霊たちに助けを求める。

 ……どうか力を貸してほしい……この迷宮を付喪神化するために……。

 強く念じながら……スキルを発動し続ける……。



 どのぐらいの時間が経ったのか……?

 実際の時間としては……三時間程度、体感としては十時間以上ある。


 これほどの時間、集中してこのスキルを発動したことは無い。 

 『スタミナ力』も『気力』もかなり減っている。


 だが何故か……この迷宮と一つになった感じというか、一体感のようなものを覚え、スキルの発動を止めてしまったのだ。


 なんとなくの……予感めいたものがある。


 しばらく様子を見る。


 そして……変化が始まった!


 迷宮全体が光だし、というかダンジョンマスタールームがうっすら光り、一瞬フラッシュのように強い光を発した。


 そして……『迷宮管理システム』のホログラム映像が映し出された。


「マスター、ありがとうございます。この『セイチョウ迷宮』は、付喪神化に成功いたしました。ご確認ください」


 『迷宮管理システム』がそう言った。


 確認してと言っても……どこをどう……?


 俺は、ダンジョンマスタールームの壁に焦点を当てて、『波動鑑定』を行う。


 よし!

 確かに成功した!

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