1246.ゴロツキに、金棒……?

 俺は、制圧したゴロツキどもが自前の回復薬を飲むのを、温情で見逃したが、そのせいで思わぬ結果を招いてしまった。


 一般に出回っている回復薬の瓶だったので、見逃してやったわけだが……中身は違ったようだ。


 全員高揚し、顔を真っ赤にして、狂ったような雄叫びを上げている。


 膝が回復しただけではなく、身体強化されたようで、全身の筋肉量が増えている。


 『波動鑑定』をかけてみると、『状態』表示に、『呪いによる強化状態(狂乱)』と表示されていた。


 『呪いによる強化状態(狂乱)』って……?


 強化薬の効能自体が、呪いによるものなのか?


 ……気になるが……今考えてもしょうがない。

 後にしよう。


 さらに『波動鑑定』で確認すると……『サブステータス』の『攻撃力』『防御力』『魔法攻撃力』『魔法防御力』の数値が、跳ね上がっているようだ。

 表示される数値が、赤い光を発している。


 今見ているゴロツキのレベルが20となっているから、レベルから推測される数値より、それぞれ1.5倍から2倍ぐらい能力値が上がっているようだ。


 攻撃性も強化されている感じだ。

 狂乱状態みたいだから、当然かもしれないが。


 俺が取り上げたので武器は持っていないが、素手で襲いかかってくる態勢だ。


 いや、俺だけじゃない。

 だれかれ構わず襲うつもりのようだ。

 何人かが入り口の門の所に向かっている。

 ……門の外にいるとは言え、俺が仕込んだ目撃者要員の人たちが、危険にさらされる可能性がある。


 奴らを止めないとやばい!


 俺は、速攻で門に向かっていた三人のゴロツキを追い、次々に蹴り飛ばした。

 もう一度膝を砕いて、動けなくしてやった。


 ……と思ったのだが……何これ?


 膝が折れたまま……痛がりもせず……這いつくばりながら動いている。


 攻撃を加えた俺に向かって来ている。

 狂乱状態だからか、痛みを感じている様子はない。

 ただ膝が砕かれているので、立つことが出来ず、這いつくばっているのだ。


 厄介だ。


 ここは『状態異常付与』スキルで動けなくするしかないな。

 眠らせでもいいが……少し様子を見たいから……麻痺させることにしよう。


 俺は、『状態異常付与』スキルで『麻痺』を付与し、三人を動けなくした。


 だが微妙な違和感があった。


 どうも俺の『麻痺』に対して抵抗したようだ。


 『状態異常付与』スキルのスキルレベルが10だし、使用者の俺が『限界突破ステータス』だから多少の抵抗感を感じただけで、レジストはされていない。

 だが、普通の人が使う普通のスキルレベルの『麻痺』だったら、多分レジストされていたのではないだろうか。


 『狂乱状態』は、スキルによる干渉に対して、ある程度抵抗できるのかもしれない。

 まぁ考察は後からゆっくりやろう。


 まずは、残りの奴らを全員麻痺させて、動けなくしなければ。


 そう思って改めて視線を送ると、なんと皆再度武器を構えている。

 おそらくストックしてある武器を、何人かが取りに行ったのだろう。


 狂乱状態と言いつつも……ある程度の思考ができる状態なのか?


 剣、斧、棍棒などを持っている。

 それから……絵本なんかに出てくるような鬼が使っている金棒を持っている奴が、三人いる。

 鉄っぽい材質の多数の突起がついた棒だ。


 あまり見ない武器だが……。


「ぐあぁぁぁぁ」

「うおぉぉぉぉ」

「しやぁぁぁぁ」


 え!

 あれは……?


 金棒を持った三人のゴロツキの両腕が、パンパンに膨れ上がり二倍位の太さになった!


 腕だけが巨大化して……異様だ。


 金棒を持った奴らだけがなっているから、さっき飲んだ薬の影響とは違うようだ。


 もしかして……あの金棒が何か影響を与えているのか……?


 『波動鑑定』をかけてみると……『魔具 剛力金砕棒』となっていて、『階級』は『上級ハイ』だ。


 『状態』表示欄が……『呪われた武具状態』となっている。


 呪いの武器らしい。


 そして説明を見ると、『魔力を流すことで自動的に両腕の筋力を強化し、攻撃力を二倍にする』と表示されている。

 それから……呪いの説明も表示されている。

 これはある意味ラッキーだ。

 それによると……効果時間が過ぎると、呪いの力で、両腕の筋肉が破壊されるらしい。


 それ以上の詳しい事は表示されていないが……おそらく呪いの効果で筋肉が破壊されるのだから……回復薬を飲んで簡単に治るという事はないのではないだろうか。

 最悪……治らないか、治るとしてもかなりの時間を要するとか、そんな重篤な状態になる気がする。ただの筋肉破壊ではなく、呪いでの破壊だからね。


 そうでなければ、このゴロツキたちが、今までも何度も使ったはずだ。


 今は、『狂乱状態』になっているから、躊躇なく使ったのだろう。


 『サブステータス』の『攻撃力』の数値が、さらに大きく増えている感じなので、先程の特殊な薬での強化値が二倍になっているようだ。


 俺だったから良かったが、普通の冒険者だったら、全く歯が立たなかっただろう。

 俺の仲間たちでも、『攻撃力』の数値だけ見れば、油断ならない状態だ。


 それにしても……ただのゴロツキだと思っていたが……一体こいつらは何なんだ?


 ……まぁとにかく、無力化しないと。


 俺は、次々にゴロツキたちに接触し、『状態異常付与』スキルで『麻痺』を付与し、行動不能にした。


 やはりいつもと違って、若干の抵抗を感じたから、この薬による『狂乱状態』は、ある程度のレジスト能力を持っているようだ。


 今後注意しないといけない。


 さっき飲んでいた薬についても、確認しなければ……。


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