1188.非道な魔法道具を、有効な武器に改良。
強制休眠に入ってしまった自分の状態を確認し終えた俺は、寝室を出て、集まっているみんなに顔を見せた。
といっても、今は朝の時間帯なので、ほとんどのメンバーは仕事中でここにはいない。
ここにいるのは、リリイとチャッピーと、ここのラボが主な仕事場である『ドワーフ』のミネちゃんとゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんだ。
『アメイジングシルキー』のサーヤたちも、『フェアリー商会』の仕事をしているので、ここにはいないのだ。
「起きてよかったのだ。ツンツンしても動かないから、心配したのだ」
「チャッピーは……チャッピーは……心配だったの〜」
「ミネは、すぐに起きると信じていたのです。グリムさんが早く起きるように、グリムさんの分もいっぱい食べたのです」
「突然休養に入っちゃうなんて、やはりグリムさんは特別な人です。休養についても研究しなければなりません。やはり一生をかけないと、研究し尽くせないすごい人です。グリムさんの全てを研究し尽くします」
四人は、相変わらずの感じで俺を出迎えてくれた。
みんな涙目だ。
俺は、心配をかけたことを詫びた。
それから、ここにいない『絆』メンバーについては、『絆通信』の一斉発信で、目覚めたことを伝えて、心配をかけたことを詫びた。
『絆』メンバーになっていない貴族メンバーについては、今日の夕方にでもまた来て、謝ることにしよう。
ただほとんどのメンバーは、転移の魔法道具を持っているので、その通信機能で話をすることができる。
あとで、個別に連絡をして安心してもらおうと思う。
「ミネは、グリムさんが寝てる間に、ゴーレムを操る魔法道具を改良したのです! 頑張ったのです! 見て欲しいのです!」
ミネちゃんがそう言って、長い杖を持って来た。
二メートル近くある杖なのだが、上の方には、なんとあの『ドクロベルクラン』の連中が装着していた腕型の魔法道具が付いている。
ミネちゃんに分析を頼んでいたわけだが……普通に使えるように改良できてしまったらしい。
ミネちゃんの説明によると……この魔法道具は、腕を切り落として代わりに装着することで、魔力を効率よく吸い上げ、かつ神経系も接続するという極めて優れた技術の魔法道具だった。
直接体と接続することによって、一度に五体のゴーレムを起動させることができるスペックだったようだ。
そして、ミネちゃんの解析によって判明したのは、腕に装着しない状態もで、魔力を流し込むことができれば、一体は動かせるということだ。
体に直接組み込むのは、五体を同時に操るためで、一体だけなら体に組み込まなくても動かせる基本性能だったようだ。
そこでミネちゃんは、体と接続する神経系の装置を排除し、間違っても体に接続しないように安全措置を講じたとのことだ。
ちなみに、体内の魔力を吸収しつつ神経系とも繋げる装置は、操縦型ゴーレムの機能向上などに役立てられないか、今後研究するとのことだ。
ミネちゃんは、安全措置を講じた腕型の魔法道具を、使いやすいように棒状のパーツと接続し、長い杖として完成させてくれた。
この棒状のパーツは『魔鋼』でできていて、打撃武器としても使えるとのことだ。
回収した魔法道具は、全て左手仕様だった。
それ故、杖の先には左手が付いているわけだが、拳を握り親指だけが立っているという、まるで親指将軍のようなポーズで固定されているのだ。
これは、ニアのアイデアらしいが、まぁいいんじゃないだろうか。
この腕型の魔法道具は二種類ある。
その場で土を素材にゴーレムを作り出す上級土魔法『土魔法——ゴーレム創造』を再現したものと、土素材でできた人形を稼働させる上級土魔法『土魔法——
前者が六本、後者が十二本あるのだ。
ちなみに『波動鑑定』をしてみると……
『名称』が『魔具 ゴーレム創造術式構築アームロッド』と表示される。
元の『名称』に『ロッド』という部分が追加されたようだ。
『階級』は『
もう一つのほうも、同様に『ロッド』という部分が追加されている。
『名称』が『魔具
『階級』も同様に、『
俺は、ミネちゃんに礼を言って、それぞれ一本ずつをあげた。
今後の研究に役立ててもらうためだ。
ミネちゃんは、研究開発をドロシーちゃんと一緒にやっていることが多いので、二人で使ってほしいという話もした。
残りの杖も、有効に使おうと思っている。
ただ、『土魔法——
その魔法自体が、『共有スキル』にセットされているからだ。
トヤッキーから『エンペラースライム』のリンちゃんが、『ランダムドレイン』で奪ってくれたんだよね。
この杖は、『ツリーハウスクラン』に常駐してるスタッフに渡して、何かあったときの防衛戦力として役立てるかたちが良いかもしれない。
庭に土素材の人形をオブジェのように置いておいて、襲撃があったときに、スタッフがこの杖を使って稼働させる、という使い方ができるだろう。
場合によっては、クランの冒険者に貸し出してもいいしね。
それから、ミネちゃんがもう一つ、俺が頼んであったものを持ってきてくれた。
実は、密かに頼んでいたことが、もう一つあったんだよね。
それは、ホバー機能で浮遊する車椅子だ。
クランのメンバーになった地図売りのチャラ男氏ことイグジーくんのお母さんが、弱体化の呪いで足腰が弱り、長い時間立っていられないと言う話を聞いたので、車椅子があったら便利だろうと思ったのだ。
もちろん呪いを解くのが最善策だが、難しいようなので、一旦車椅子で、活動が楽になればいいと思ったのだ。
これをプレゼントしてあげようと思っている。
ミネちゃんのオススメポイントは、ホバー機能を最小出力にしてあるので、音や風など周囲への影響がほとんどないということらしい。
違和感なく使えるとの事だ。
素晴らしい技術である。
きっと、チャラ男氏とそのお母さんも、喜んでくれることだろう。
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