1170.戦利品を使って、ボタニカルゴーレムを強化。
昨夜の襲撃時に、突然枝を動かして子供たちを守ってくれた木が、『デミトレント』として覚醒した。
その一連の様子を見ていた子供たちは、驚いている感じだが、誰も声を発していない。
「僕は……子供たちが大好き。みんな、よろしく」
『デミトレント』はそう言って、少し枝を揺らした。
子供たちは、驚いて固まっている感じで、反応してくれない。
「みんな、大丈夫。怖くないよ。この木は、『デミトレント』という特別な存在になったんだ。これはからは、お話しすることもできるよ。それに昨日みたいに、みんなを守ってくれるって」
俺がそう言うと、子供たちが笑顔を作った。
好奇心旺盛な何人かが、早速話しかけている。
俺は、この『デミトレント』に名前をつけてあげた。
名前がないと、呼びにくいからね。
屋敷を正面から見たときに、左側にあるのでヒダリーという名前にした。
我ながら……ノーセンスな名前だと反省せざるを得ないが……それしか思い浮かばなかったし、わかりやすいほうがいいと思ったんだよね。
なぜわかりやすいほうがいいかと言えば……他の三本の木についても、同様に覚醒させようと思っているからだ。
レントンの話では、十分に覚醒できる可能性があるということなのだ。
そして俺とレントンは、同様にして、他の三本の木も覚醒させることに成功した。
皆同じ『ワイルドカジュマル』の木なので、『種族』が『デミトレント(霊木ワイルドカジュマル)』となっている。
レベルもみんな1で、『状態』も『グリムの眷属』となっている。
名前は、右側にある木をミギーとした。
中央にある二本……絡んだ枝にツリーハウスが乗っているペアのような二本は、右側がウキ、左側がサキという名前にした。
右の木と左の木という事なんだが……。
この名づけセンス……だいぶやっちまった感がある。
もちろんニアさんは、全力のジト目で俺を見ている……トホホ。
でもニアは、何も言ってこなかったから、いいアイデアは持っていないと思うんだよね。
木に名前をつけるのって、意外に難しいと思うんだけど。
俺は、改めて四体の『デミトレント』のスキルを確認した。
四体とも『通常スキル』は、何も持っていない。
『種族固有スキル』は、持っている。
『
枝葉や根を、自由に動かすことができるスキルのようだ。
『固有スキル』も持っている。
『固有スキル』と言いつつも……四体とも同じものを持っている。
どうも『ワイルドカジュマル』としての特性が、持たせているようだ。
『キジムナーとの絆』というスキルで、縁がある『キジムナー』と、念話をすることができて、呼び出すことができると表示されている。
『キジムナー』とは、樹木の精霊とも言われるレアな妖精族らしい。
精霊と妖精の中間のような存在で、くくりとしては亜妖精に入るようだ。
『キジムナー』は、『カジュマル』『ワイルドカジュマル』を家とすることが多く、関わり合いが深いらしい。
これらの情報は、レントンが教えてくれたのだ。
そんなレアな妖精族を、呼び出すことができるスキルというわけだ。
だが、それ以外の事は、明示されていない。
呼び出した『キジムナー』が、きっと助けてくれるっていうことだよね?
『デミトレント』が、四体も仲間になってくれて嬉しい。
やはり問題は、この子たちのレベルをどうやってあげるかだ。
無理に戦ってもらう必要はないから、レベル1のままでもいいような気もするが……何かあったときに、自分を守れるくらいは強くなってほしい。
この子たちは、この場所から動けないというハンディキャップがあるからね。
俺の『絆』メンバーで、『共有スキル』が使えるからレベル1でもある程度の攻撃や防御はできるけど、やはりレベルが低いままだと心もとない。
レベル上げをするには、どう考えても、魔物を捕まえてきて、ここで戦わせる以外ないんだよね。
周辺の住民に見られないように、何か対策をして、実行するしかないね。
それから俺は、もう一つ確認をしたいことがあり、それをやってしまうことにした。
それは、昨夜『ドクロベルクラン』から没収したゴーレム強化用のアイテム『魔芯核シナプス』が、俺の『ボタニカルゴーレム』にも、装着可能かを確かめることだ。
ここには、敷地内の巡回警備用の『竹取じいさん一号』、『パンダさん一号』、それから子供たちの遊具として作った『アヒルボート一号』から五号がある。
『アヒルボート』は、巨大バナナ『三日月バナナ』の皮を活かして作るバナナボードに、アヒルの頭などのパーツをつけて人形化したものだ。
昨夜の襲撃では、『アヒルボート』たちは戦わず、『竹取じいさん一号』と『パンダさん一号』に戦わせてみたが、相手のゴーレムが強すぎて、歯が立たなかった。
もともと魔物相手の戦闘用の人形じゃないから、しょうがないんだけどね。
あくまで、不審者が入って来た時とかに、子供たちを守る為のものだ。
迷宮での戦闘用に作っておいた『かぐや一号』と『かぐやライダー号』は、それなりに戦えていたが、倒すまでには至らなかった。
ただ、充分戦力になり得る事はわかった。
この戦闘用の『ボタニカルゴーレム』を、敷地内巡回用に使っても良いのだが……武器の威力が強くて、侵入者を殺してしまう可能性があるだよね。
まぁ仮に殺してしまったとしても、自業自得とは言えるが……事故的に侵入した人とか、コソ泥程度の人を殺してしまうのは、避けたい。
『殺さずに制圧しろ』というような細かな指示が確実にできるようにならないと、投入はできなそうだ。
俺は、『クラン本館』の工作室に行って、この『ボタニカルゴーレム』たちを全て並べた。
各人形の胸のあたりを加工し、この装置を入れ込む為のスペースを作った。
早速、そこに『魔芯核シナプス』を入れてみるが……何の変化もない。
……
それとも魔法を発動して、人形をゴーレム化すれば、この装置も稼働するのかな?
試してみるしかない。
『竹取じいさん一号』にセットし、蓋となるパーツは付けず状態がわかるようにして、稼働させてみる。
「
俺は
問題なく起動した。
そして、その軌道に合わせて『魔芯核シナプス』の突起が伸びて、人形の素材に突き刺さった。
どうやら接続したようだ。
一旦、魔法を解除し人形に戻す。
『魔芯核シナプス』の突起は、素材に刺さったまま固定されている。
完全に、人形のパーツの一部となったようだ。
最初に起動したときに、人形全体を掌握し、そのまま一体化するのだろう。
もう外すことができないのか確認するために、取ろうとしたが……外れなかった。
もちろん『限界突破ステータス』の俺が本気を出せば、外れると思うけど、壊れちゃうと思うんだよね。
ただそんな感じで触っていたら、何となくイメージが伝わり……少し魔力を流してみたら、『魔芯核シナプス』だけが稼働状態となった。
そして外そうと思ったら……突起が元に戻り、外すことができてしまった。
試しにもう一度入れて、魔力を流してみたら、また稼働状態になって、突起が伸びて素材に突き刺さった。
どうも、この装置に直接魔力を流すことで、セットしたり解除したりできるようだ。
この装置は、『ボタニカルゴーレム』に対しても、問題なく使えることがわかった。
少しして……俺はすべての『ボタニカルゴーレム』に『魔芯核シナプス』を設置した。
そして稼働させてみたのだが、設置前と比べて稼働中の俺の魔力の消費量が、低く抑えられていた。
やはり稼働効率が良くなっている。
ほんの少しだけ、ゴーレム同士で戦わせてみたが、やはり強化されている感じだった。
だが強化される事は、良いことばかりとは限らない。
敷地内巡回用のゴーレムが強すぎると、わざと弱く作った意味がなくなってしまうのだ。
戦闘用の『ボタニカルゴーレム』みたいに、ちょっとしたコソ泥を殺してしまう可能性が出ちゃうからね。
まぁ術者の俺が、殺さないで制圧するイメージを強く持って稼働させればいいのかもしれないけど。
今後そんな修練を積んで、対人制圧が出来るゴーレムになるようにしたいと思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます