1163.戦闘中にお金を入金していた、貯金箱。

 クラン加入メンバーや、仲間たちへの声かけも終わったので、後処理を担当してくれたニアから、改めて全体の状況の報告を受ける。


 駆けつけた衛兵隊の指揮を取っていたのは、独立部隊隊長のムーニーさんだったそうだ。


 彼は、太守のムーンリバー伯爵の次男でもあるわけだが、今となっては、よく見知った間柄になっているので、彼が担当してくれた事は好都合だ。


 それから、ハートリエルさんに遅れて、ギルド長も駆けつけてくれたらしい。

 一緒に、ギルドの綺麗可愛い受付嬢リホリンちゃんと、綺麗セクシーな受付嬢ナナヨさんも来てくれたとのことだ。


 時を同じくして、騒ぎを聞きつけた一般の冒険者や、まだ到着していなかったクランメンバーの冒険者も集まって来たそうだ。


 そんなこともあり、周辺に住んでいる人たちも騒然となって、集まって来たようだ。


 俺たちが悪いわけではないが、近隣の人に迷惑をかけ、不安な思いをさせたので、あとで、謝りに行かなければと思っている。


 『ツリーハウス屋敷』と同じ区画ブロックにある住民は、買取交渉に応じてくれているので、引っ越すことになっているから、極端な不安を感じている人は少ないと思う。

 そういう意味では、買取交渉の話がまとまっていて、良かったと思う。


 隣接する区画ブロックの住民たちには、迷惑をかけたお詫びはしっかりしないといけないけどね。


 衛兵隊のムーニーさんとギルド長への事態の報告は、ニアがしてくれたそうだ。


 ニアがいなかった戦場の状況は、『美火美びびび』のニャンムスンさんや、子供たちと一緒にいた管理長のバーバラさんが伝えてくれたとのことだ。


 幹部のトヤッキーとボンズラー、下っ端のおかっぱ達は、衛兵隊が連行したそうだ。

 今、衛兵隊の詰め所で厳しく取り調べを受けているらしい。


 衛兵隊の現場検分は終わっているので、戦闘現場の散らかっているところは、片付けて構わないということになっているそうだ。


 それから土素材の人形を動かしていた魔法道具の腕と、土からその場で作ったゴーレムを動かしていた魔法道具の腕は、俺たちの戦利品として、もらうことができたとのことだ。


 ニアが交渉して、回収したらしい。


 危険な魔法道具と判断し、万が一誰かに再利用されると困るので、倒した自分たちが戦利品としてもらいたいと主張してくれたようだ。


 ムーニー隊長もギルド長も、当然の権利だと言ってくれて、異論はなかったそうだ。


 ただ事実を調査するために、一つずつ貸し出してほしいと頼まれたので、預けたらしい。


 破壊された土素材の人形も戦利品として、もらうことになったそうだが、一体は解明のために貸し出したとのことだ。


 土素材の人形は、全て破壊してるので、もうガラクタでしかないんだけどね。

 土からできていたゴーレムは、庭で盛り土のようになっている。

 それは、後で普通に片付ければいいだろう。

 ただの土だからね。


 土素材の人形に装着されていた『魔芯核シナプス』についても、戦利品として確保したらしい。

 もちろん、衛兵隊に一つは貸し出したとのことだが。


 個人的には、この魔法道具が一番使えそうだと思っている。


 俺の作った『ボタニカルゴーレム』に装着して、機能させることができれば、より強いゴーレムにすることができるはずだからね。

 今から楽しみである。


 それから、衛兵隊のムーニーさんにもギルド長にも報告していない、仲間内だけの秘密があると言われた。


 その内容を訊くと……トヤッキーとボンズラーとおかっぱ達が所持していた硬貨を、奪ったということだった。


 多分だが……それも俺たちに戦利品としてくれるだろうから、何も隠す必要はないと思ったのだが……奪ったのは『魔法の貯金箱』の付喪神セントンちゃんたちだったらしい。


 『種族固有スキル』の『ピギーバンク』の『入金業務』コマンド使って、戦闘中に奪い取っていたらしいのだ。


 魔法カバンや『アイテムボックス』スキルで収納されているものは無理だが、普通に所持しているお金は、スキルを発動すれば、いつでも奪えちゃうらしい。


 俺が危惧した通り……完全に泥棒ができるコマンドだったようだ。

 全部合わせて、百万ゴルくらいにはなったそうだ。


 泥棒ができるコマンドと言ってしまったが……今回みたいに悪い奴から奪うなら、ありかもしれない。


 悪い奴を懲らしめるために、お金を盗むというのは、有効な手段ではある。


 セントンちゃん達は、善良な人からお金を奪うような事はしないだろうし、むしろ悪人から奪って、善良な人に配るという義賊みたいなことを、していたはずだからね。


 昔話は失われているが、あらすじが残っていて、そんな内容だったはずだ。


 ニアが不思議に思って訊いたらしいが、セントンちゃん達は、かなりお金を持っているし、自分でスキルを使って増やすこともできるそうだ。

 まぁ増やすといっても……落ちてるお金を拾うということのようだが。

 ただ、今回のように悪い奴から奪えば、ガッツリ増やせるわけだけどね。


 攻撃の武器として吐き出した銭貨なども、後から全て回収できるらしい。


 また、お金の匂いに敏感らしく……落ちているお金を見つけるのが得意だとドヤ顔をしていたそうだ。


 お金の匂いって、ほんとにあるのだろうか……?

 素材になっている金とか、銀の匂いはあるんだろうけどね……。


 自分たちの使うお金は、貯金箱としての機能で預かるお金とは、別に保管されているとのことだ。


 付喪神だけあって、収納容量も大きく、収納する亜空間を分けて管理することができるようだ。


 セントンちゃん達は、『魔法の貯金箱』の付喪神となっているが、『魔法の貯金箱』は、魔法カバンの一種となっているから、本来的な性能として……お金に限らず、収納できるのだそうだ。


 特に付喪神化している状態では、『アイテムボックス』スキルと同等以上の能力を持っているとのことだ。


 セントンちゃん達は、『絆』メンバーになっているから、『共有スキル』の『アイテムボックス』も使える。


 でも、彼女たちにとっては、完全な被りスキルだよね。


 ちなみに貯金箱になっている時でも、硬貨以外のものも、ある程度は収納できるのだそうだ。


 背中の硬貨投入口に宝石などを近づければ、収納できてしまうらしい。


 ただ普通は、そんなことができると思わないから、誰も入れようとしないだろうけどね。


 今回奪ったお金も、クランの子供たちのために使うようにと、全部出してくれたらしい。


 なんとなく……最初にセントンちゃんが言っていたように、この子たちがいたら……お金に困ることはなさそうだ。


 まぁそれはさておき、今回、かなりいい活躍をしてくれた。


 存在自体が愉快な仲間だし、今後も期待したい。



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