1137.孤児院の、情報収集。

 『ドクロベルクラン』を後にした俺たちは、ギルド酒場に立ち寄ることにした。


 無事にクランから抜けることができたみんなと、少し話をするためだ。


 酒場を喫茶店的に利用するのは、微妙だが、まぁいいだろう。


 Dランクのパーティー二組とEランクのパーティー三組が、抜けることができた。


 オーツさんとライさん以外の四組も、俺のクランに入ることになっている。


 借金の肩代わりを申し出たときに、オーツさんたちのようにクランに入れてほしいとお願いされたのだ。

 恩返しをしながら、借金を返したいと懇願されたので、入れてあげることにした。


 人間性に問題がある人はいなかったしね。


 総勢二十二名が、新たに加わることになった。


 ちなみに肩代わりした借金の合計は、五つのパーティ合わせて、九百万ゴルとなっている。


 本来払う必要もない九百万ゴルを、ポロンジョに払ったのは業腹だが、あのクランの存続は長くない。


 なぜなら、俺がロックオンしたからだ。


 できれば今回払った金額も合法的に取り戻し、この冒険者たちの借金を帳消しにしてあげたい。



 俺は、みんなにおごるので、好きなものを飲み食いしてほしいと伝えた。


 無事に退会できたお祝いである。


 皆恐縮していたが、遠慮せずに食べて、クランのメンバーとして頑張ってほしいと発破をかけておいた。


 もっとも、クランのメンバーになったからといって、何かをがんばらなければならないということは、ないんだけどね。


 みんな搾取されている環境から抜けれたことで、精神的な負担が取れたと思う。

 スッキリとした顔つきになっている。

 今までのストレスは、相当なものだったと思う。

 この顔を見れただけで、援助した甲斐があったというものだ。



 俺はニアとハートリエルさんとともに、ギルド長室を訪ね、報告することにした。


「ギルド長、おかげさまで何とか無事解決することができました」


「そうか、それはよかったわい」


「それでギルド長、一つお耳に入れておきたいことがあるのですが……」


「なんじゃね?」


「はい、実は……ギルド長も『ヨカイ商会』のメーダマンさんの息子さんたちのパーティーが騙されて、奴隷にされて連れていかれた話をご存知だと思います。

 きっかけは、騙されたことですが、最終的には変な薬を飲まされて、意識が混濁した状態で奴隷契約を結ばされたそうなのです。

 他にも同じ目にあっていた冒険者たちがいて、私が助けたのです。

 その人たちが、今その件について調べているのですが、『ドクロベルクラン』も関わっていたようなんです」


「なに!? 『ドクロベルクラン』が関わっていたのか!?」


「はい、そうみたいです」


「もしそれが証明できるなら、確実に捕まえることができるのだがなぁ……」


「ええ、そうですね。その冒険者たちが、引き続き調査を行ってくれています。何か情報が入ったら、ギルド長にもお伝えします」


「ああ、頼む」


「それからギルド長、別件で一つ訊きたいことがあるのですが……」


「なんじゃね?」


「それは、孤児院についてです。

 実はメーダマンさんから、この迷宮都市の孤児院は、評判が良くないという話を聞いています。

 全てではないと思うのですが……何か聞いていますか?」


「その話なら……メーダマンさんと同程度の情報しか持っておらん。子供たちがいなくなっているとか、奴隷として売られているとかじゃろ?」


「はい、それで今ムーンリバー伯爵令嬢のムーランさんたちが、調べてくれているんです。私の方でも、気になるので少し調べようかと思いまして」


「なるほどのう。ムーンリバー家は、確かすべての孤児院に、私的に援助しておったはずじゃ。万が一酷い運営実態なら、許せんじゃろうのう」


「ええ、良くない評判をご存じなかったみたいで、深刻な表情をされていました」


「まぁ彼女たちが本気になれば、いろいろ情報が出てくるじゃろう」


「はい。噂が杞憂に終わることを望みたいですね。

 それから、ギルドの近くの孤児院を、助けてあげている話を聞いています。

 掲示板の読み上げ係の仕事を世話してあげているですよね?」


「ああ、そうじゃ。支援といっても大した事はできないが、子供たちに仕事を与えて、給金を払っとる。

 後は……ここだけの話じゃが、ギルド酒場の残り食材をあげたりもしとるけどのう」


「そうなんですね。すごく賢い子が掲示板のところにいて、お勧めのクエストを教えてくれて、助かりましたよ」


「そうじゃろう、そうじゃろう、優秀な子が多いのじゃ」


 ギルド長が自分のことのように誇らしげに、表情を緩めている。


「その孤児院には、問題はなさそうですね?」


「あそこはないと思うのう。個人でやっておるし、みんな子供たちを大事にしてくれておる。ただ収入源がまともにないので、運営は大変なようじゃ」


「これから、寄ってみようと思っているんですけど……」


「おおそれはいい、地図を渡そう」


「ありがとうございます。その孤児院は、どうやって収入を確保しているんですか?」


「もう三十年以上やっておるでのう。

 卒院生が少しづつ寄付してくれておるようじゃ。

 もちろん国からの支援もあるし、伯爵家も支援しているが、運営には不十分なようじゃ。

 もしかして、支援してくれるのかな?」


「はい、子供たちに貧しい思いをさせたくないので、支援したいと思っています」


「それはありがたいのう。もちろんお金でもいいが、食べ物も喜ばれる。魔物の肉でもいいと思うぞ。食べ盛りの子が結構おるでのう」


「分りました。一度、院長先生と話をしてみます。これから寄ってみます」


 俺はそう言って、ギルド長室を後にした。


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