1121.バナナの皮で、ものづくり。
「このバナナは食べられるのだ?」
「おっきいけど、ミネちゃんがいれば一人で食べちゃうなの〜」
俺とバナボさんの話が終わったタイミングで、リリイとチャッピーが質問してきた。
まぁチャッピーのは、質問じゃないけどね。
『ドワーフ』のミネちゃんなら、確かに余裕で食べちゃいそうな気がする。
ただこのバナナは、普通のバナナのようには食べれないみたいなんだよね。
いずれにしても、二人は、この巨大なバナナの中身に興味があるようだ。
というか……若干よだれが垂れ気味だ。
他の子供たちもそんな感じみたいで、なんとなくそわそわしている。
子供たちの期待もあるし、とにかく中身を見てみよう!
ボートとして使えるように、湾曲の内側になっている所の皮だけ綺麗に切って、外すことにする。
切れ味抜群の『魔剣 ネイリング』を使いたいところだが、ここは普段使いの『青鋼剣 インパルス』で切る。
……かなり硬い。
切れないほどではないが、頑丈だ。
ちょっとした武具にはなりそうだ。
昔は、武具としても、利用されていたというのも頷ける。
綺麗に取り外すことができた。
中には、白い実がぎっしり詰まっている。
「バナボさん、これはお芋みたいな味なんですよね? じゃがいもみたいに使えますかね?」
「そうです。同じように料理で使えます。大体は煮たり蒸したりして、食べていました」
「生では食べられませんよね?」
「生では美味しくありません」
バナボさんの言葉を聞いて、何人かの子供たちががっかりした顔をしている。
だがお芋と考えて使えばいいなら、美味しい料理が作れるはずだ。
俺は、今から特別な美味しい料理を作ると告げ、子供たちを安心させた。
もちろん、みんなから喜びの声が上がった。
バナナ一本に詰まっている実の量がすごくて、もしじゃがいもに換算したら何個分なのか、すぐには予想もできないが、大勢の子供たちが待っている今の状況にはぴったりだ。
俺は、大人メンバーに指示を出して、いつもの焼き場に鍋をセットしてもらった。
以前特注で作った炊き出し用の大鍋があるので、それをいくつも出して焼き場にセットしたのだ。
バナナの実を、輪切りにする感じで切り分けて取り出す。
実は固く、ずっしりしている。
輪切りにしたものを、さらに切ってじゃがいもくらいの大きさにした。
そして、どんどん鍋に投入していく。
柔らかくなるまで煮込む。
バナナの原型を留めた皮の部分は、ボートとして使えるのである。
実を取るために、一枚剥がした状態になっている皮も使えるわけだから、試しに盾でも作ってみようかなぁ。
三分割ぐらいに切ると、子供たちが訓練で使う盾として、ちょうどいい大きさになりそうだ。
バナナの皮の盾って、結構面白いかもしれない。
本当は、この巨大なバナナの皮が、普通サイズのバナナの皮のように、踏んづけると滑るようなら、魔物を転ばせるアイテムとして使えたのだが……。
可能だったら、めっちゃ笑えるアイテムになったのだが、とてもそんな感じではない。
それから……考えてみれば、これは植物素材だから、ボタニカルゴーレムが作れちゃうよね。
巨大なバナナのゴーレム……なんか面白い感じになりそう。
今ふと思ったが……バナナボートに、いくつかの足と顔をつけてゴーレムにしたら、子供たちが乗って遊べるかもしれない。
スワンボートみたいな感じで、鳥の形のボートとかにしたら、可愛くていいんじゃないかな。
地上を歩くボート……もはやボートではないが。
とりあえず、取り外した一枚をこの場で加工してみた。
二メートルくらいあるのだが、三分割にして二枚を盾に、もう一枚は更に縦に三分割して木剣にした。
子供たちが練習で使うのに、ちょうどいいサイズだ。
粗く形を作った後に、サメ魔物の皮をヤスリのように使って仕上げた。
あまり凝らずにサッと作ったのだが……『木工細工』スキルがあるので、一流職人の手際だったかもしれない。
同じ『木工細工』スキルを持つバナボおじいさんが、「グリムさんは、何でもできるんですね」と言って、驚いていた。
皮の本体のほうは、このままボートにできちゃうのかなあ?
「バナボさん、これは加工しないでボートにできちゃうんですか?」
「そうなのです。それがいいところなのですよ。中を綺麗に洗えば、もうボートの出来上がりです。はっはは」
「そうなんですか。楽でいいですね。丈夫そうだし」
「よほどのことがない限り、穴も開きません。何十年でも使えますよ」
そう答えたバナボおじいさんが教えてくれたが、農地にある池のバナナボートは、実際何十年も使っているものだそうだ。
まぁここ数十年素材が手に入らなかったのだから、当たり前かもしれないが。
ふと思ったが……二メートルくらいあるから、このまま横になって寝ることもできちゃう気がする。
寝返りをうつには、ちょっと狭いけどね。
そうだ!
俺は閃いた!
そして、バナナの皮本体の内側をすぐに綺麗にした。
次に、バナナ形状の両端にロープを設置。
これを『養護館』の前にある大きな木の枝にセットする。
手を広げるように左右に大きな枝が伸びているので、右側の枝にロープをくくりつける。
ハンモックの完成だ!
かなり低い位置になるようにセットしたので、子供たちがブランコのように乗って遊ぶこともできる。
試しにリリイとチャッピーを乗せてみた。
バナナを横向きにして、前後に動かしてみる。
二人とも、しゃがむ感じで乗っている。
めっちゃ楽しそうだ。
ハイテンションになったのか、二人はその場で立ち上がった。
バランスをとるのが難しいと思うんだけど、楽しそうにクネクネしながら手放し状態で立っている。
すごい体幹だ……。
クネクネしているから、体幹がすごいようには見えないが。
てか……その乗り方、推奨できないからやめて欲しいんですけど。
まぁいいけどさ。
俺は、子供たちに、近づきすぎてぶつからないようにと注意を促し、順番に仲良く乗るように伝えた。
小さい子から順番に、乗り出した。
すごい順番待ちの列になっちゃってるけどね。
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