1118.闇の掃除人は、偉そうな感じのキャラ設定で。
盗賊たちのアジトにやって来た。
街道に、ほど近い湖のほとりだ。
ほとりといっても、鬱蒼とした林が隣接していて、その中にアジトがあるので、外からは見えない。
近づくと……二十数人いる。
ほとんどの者が、外のテーブルで酒を飲んでいるようだ。
やはり、それなりの規模の盗賊団だった。
大規模とまでは言えないが、中規模な盗賊団と言っていいだろう。
俺は、姿と気配を消したまま近づき、『状態異常付与』スキルで『麻痺』を付与した。
奴らは何が起きたのか全くわからないだろうが、麻痺しているだけで意識はあるから、俺の存在は認識はしているはずだ。
……結局二十四人だった。
さっき捕まえた盗賊たちは、盗賊だとわかりやすくするために、そのまま縛った。
だが、こいつらは、軽鎧などの装備を全部脱がせ、服だけの状態にした。
ほぼ下着状態になった奴も多数だったけどね。
さっきの一味とわかるはずだから、身ぐるみ剥いでやったのだ。
とは言っても、服は無理には脱がせてないわけだけどね。
その過程で、身に付けていた武具、装飾品、硬貨などは没収した。
荷運び用の馬車が三台あったので、そのうちの二台に詰め込んだ。
もう一台の荷馬車には、アジトにあった小型馬車を積んだ。
例の戦車だ。
既に納品していて、実際に使われていたのだ。
これも証拠としてつけておけば、あの会頭の罪は重くなるだろう。
旅人から奪ったであろう通常の馬車が、三台あった。
それは俺が没収した。
ここには、母屋みたいなものが二つあり、倉庫と思われる建物も二つある。
それぞれの中を確認する。
母屋二つは、盗賊たちが暮らしている場所で、はっきり言って汚い。
武器がいくつかあるが、価値の高そうなものはない。
一応、全て没収しておく。
次に倉庫を確認に行くと……驚くことに、人がいた。
明らかに、盗賊に捕まった人たちだ。
怪我でぐったりしているし、縄で縛られている。
俺は、すぐに回復薬をかけてあげた。
八人いるが、重傷者が半分以上だ。
たが、回復薬が効いてすぐに皆回復した。
「ありがとうございます。あなた様は……?」
年長の白髪混じりの紳士が、声を上げた。
執事服を着ている。
「私は、闇の掃除人だ。悪党どもを掃除しに来た。お前たちは捕まっていたのか?」
声色を変えつつ、口調も偉そうな感じにしてみた。
なんか演技している感じで、ちょっと楽しい!
いや、不謹慎か……。
『隠れ蓑のローブ』の機能をオフにして姿が見える状態になっているわけだが、仮面をつけているので顔はわからない。
そしてローブの前を閉じ、フードもかぶっているので、俺の服装もわからないだろう。
「私どもは、怪我をして動けないでいたところを、盗賊たちに襲われ捕まったのです……」
あれ、なんとなく……話の感じが、もしかして?
「どこから、何のために来たのだ?」
「はい、我々は『ヘスティア王国』の者です。迷宮都市に届けるものがありまして、旅してきました」
意図的に、明言を避けているようだが、この人たちは、第三王女のファーネシーさんに、補給物資を届けに来た輸送隊の人たちに違いない!
よかった、無事だったみたいだ。
「よく殺されなかったな?」
「はい、私たちを奴隷として売ろうとしていたようです。最低限の手当てで弱った状態に止め、無理矢理奴隷契約を承諾させるつもりだったのでしょう」
そうだったのか……早く見つけられて良かった。
「そうか。ならばお前たちを、救ったことになるな。
恩返しのつもりで頼まれてくれ。
ここの盗賊たちを連れて、迷宮都市へ行け。
衛兵に突き出すのだ。
私が衛兵にメッセージを書くから、それも渡してくれ!」
「はい、かしこまりました。助けていただいたご恩は、忘れません」
全員俺に対し、頭を下げた。
みんなかなりお腹が空いてるようなので、食べ物を分け与えたいのだが……グリムと繋がるような特殊な食べ物はあげられない。
あくまで『闇の掃除人』だからね。
そこで俺は食べ物ではなく、『スタミナ回復薬』を渡して飲ませた。
これからもう一つの倉庫を見るから、食べ物があったらそれを食べてもらえばいいだろう。
今いる倉庫には、旅人から強奪したと思われる物品と、武器のストックがある。
「お前たちが盗賊から盗まれた物は、この中にあるのか?」
「はい、私どもが捕まったときには、魔物との交戦のせいで、ほとんどの荷を失っておりました。
ですが、ここにはそれがかなりあります。
私たちが魔物から逃げる際に失った荷物を、拾ったようです。
おそらく荷の痕跡を追って、私たちを見つけたのだと思います……」
「そうか、ではその荷は、お前たちが回収しろ。残りは私がいただく」
「おお、ありがとうございます。どうしても、届けたい荷物があったのです。本当に感謝いたします」
また全員が俺に対して、頭を下げた。
俺は、さっき波動収納に回収した普通の馬車を、二台を取り出した。
そしてこの人たちに、使わせてあげることにした。
荷物も十分運べるだろう。
盗賊や戦車を乗せた荷馬車が三台と、この人たちが乗る普通の馬車が二台、合計五台になるが馬の問題は大丈夫だ。
ちょうど十頭の馬がいる。
二頭づつで、引いて行くことができる。
馬たちは、もちろん俺の仲間にした。
念話で、北門まで行くように指示してある。
今回はこの人たちがいるから、この人たちに任せればいいけどね。
先行して北門に向かってもらったさっきの馬たちもそうだが、北門まで運んだら、適当なタイミングで脱出するように言ってある。
俺の『絆』メンバーとなって、『共有スキル』が使える馬たちにとっては、馬車に繋がれた状態から脱出することなどたやすいのだ。
密かにこの湖のほとりに戻るように、言ってあるのだ。
適当なタイミングで俺が戻って来て、転移で連れて帰ろうと思っている。
さすがにこの数の馬たちを『ツリーハウスクラン』に連れて帰ると、俺と『闇の掃除人』の繋がりを疑われる可能性がある。
今回の馬たちは、ピグシード辺境伯領で、これから復興する『セイネの街』で活躍してもらうことにした。
レジスタンスが保護した人たちも『セイネの街』に移住してもらうが、『アルテミナ公国』で保護した動物も、クランに入れない場合は、『セイネの街』に住んでもらおうと思っている。
ここには、他の動物はいない。
魚も漁れるし、野生動物も狩れるからあまり必要性がないのだろう。
もしくは、ずっとここにいるわけでは無いのかもしれない。
盗賊であることを隠して、迷宮都市に普通に出入りしている可能性はあるからね。
もう一つの倉庫には、木箱に詰められた梨が三箱もあった。
これを囚われていた人たちに、食べてもらうことにした。
他にはワインの樽が五つ、エールの樽が二つあった。
ブランデーと思われる樽も二つある。
米や小麦粉などはない。
まともな食事はしていなかったのだろう。
倉庫の奥に、鍵のついた箱があったので、鍵を壊して中身を確認した。
金貨が入っていた。
三百枚くらいあるので、三百万ゴル程度はある。
結構ラッキーだったかもしれない。
盗賊とかのアジトって、あまり多くの金が置いてないことが多いんだよね。
派手に使っちゃうんだろうからね。
この金貨は、もちろん戦利品として頂戴する。
そうだ! この『ヘスティア王国』の人たちに、分けてあげよう。
きっと路銀とかも、失くしちゃってるよね。
「これは、お前たちにやる。好きに使え」
俺は、馬車に荷物を積み込んでいる輸送隊のところに戻り、半分与えた。
「『闇の掃除人』様、良いのですか……? なぜ私たちに、ここまで?」
「理由などない。たまたま出会い、たまたま金があったから、分け与えただけだ。気にするな」
我ながら、ちょっとかっこいい感じで言ってしまった。
またもや、全員で俺に対して、頭を下げた。
俺は、荷造りが終わった輸送隊を送り出した。
俺も引き上げるつもりだが、ここは盗賊のアジトにするには、いい場所だ。
再利用されると困るが……どうするか?
まぁすぐに良い案は思い浮かばないので、定期的に、様子を見に来ることにしよう。
湖で釣りもできるしね。
秘密の別荘的な感じで、いいかもしれない。
もしその時に、新たな盗賊が住み着いているようなら、捕獲してしまえばいい。
“盗賊ホイホイ”みたいなかたちで機能すると、それはそれで面白いんだけど……。
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