1069.ハーフエルフの、種族固有スキル。

 『絆』メンバーになってくれた『ハーフエルフ』のハートリエルさんは、レベルが高い冒険者だったこともあり、数多くの『通常スキル』を持っていた。


 その中で俺が持っていない五つのスキルは、どれも素晴らしいスキルだった。


 彼女は『固有スキル』は持っていないが、『種族固有スキル』を二つ持っている。


 『二種融合のヒュージョン可能性ポッシビリティー』と『ハーフの異能——特殊魔法適性』だ。


 『二種融合のヒュージョン可能性ポッシビリティー』は、二種類の魔法を融合させて、特殊な魔法を作り出す能力と表示されている。

 詳細表示によれば……スキルレベル5までは、一つの融合魔法を『通常スキル』として構築して、使用できるようにセットできるらしい。

 融合させる二つの魔法は、本人が『通常スキル』として所持している魔法の中から、任意に選ぶことができるようだ。


 このスキルを使って、ハートリエルさんが取得していた『通常スキル』の『風魔法——疾風』と『水魔法——怒涛』を組み合わせ、『融合魔法——疾風怒濤』という特殊魔法を構築したようだ。

 それが『通常スキル』として使えるように、セットされているわけである。


 なんとなく……一時的に使えるようにセットしているみたいな感じっぽいので、もしかしたら俺の『波動複写』でコピーできないかもしれない。

 『通常スキル』でも『使い人』スキルなどのように、特殊なスキルは『波動複写』でコピーできないからね。


 と思ったので、試しにやってみたら……なぜか問題なくコピーできてしまった。

 これはありがたい!

 もしかしたらダメかと思っていたので、めっちゃラッキーな気分だ!


 構築してセットできる融合魔法は、スキルレベル6で二種類、7で三種類、8で四種類、9で五種類と増えていくようだ。


 ちなみに、ハートリエルさんの現在のスキルレベルは5なので、あと一つスキルレベルが上がれば、もう一種類の融合魔法が作れるということだ。

 ぜひ頑張ってもらいたい!


 そんな気持ちで見つめてしまったら……また頬を赤らめうつむいて、ニマッとしている。

 完全にデレじゃないか!


 そしてまた、ニアさんの『頭ポカポカ攻撃』が発動してしまったじゃないか!


 いかんいかん、気を取り直して……。


 なんとスキルレベルが10になると、セットした融合魔法をリセットして、新たな融合魔法をセットすることが可能になるらしい。


 スキルレベルを10にするなんて、かなり大変だと思うが、是非頑張ってもらいたいものだ。


 俺の『絆』メンバーになったから、意外と早くスキルレベルが上がるかもしれない。


 前にニアも言っていたが、何かが作用して、スキルレベルが上がりやすくなっているようだからね。



 もう一つの『種族固有スキル』の『ハーフの異能——特殊魔法適性』は、特殊な魔法スキルが発現しやすくなるという羨ましすぎるものだった。


 この『種族固有スキル』があるお陰で、レアスキルである『植物魔法』が二つも発現したのだろう。

 しかも、一つは上級魔法だ。


 本当に羨ましい限りだが、ハートリエルさんほどの実力者でも二つしか発現していないとも言える。

 このスキルの力があっても、そうやすやすと発現するものではないということだろう。

 ただ、今のスキルレベルは5なので、まだまだ伸びしろはあるわけだよね。



 ハートリエルさんのステータスの確認が終わったところで、改めて俺の『絆』メンバーの仲間たちについても話をした。


 今度時間をとって、主要なメンバーと合わせたいと思っている。


 ちなみに『絆』メンバーになった直後のハートリエルさんは、お約束の驚きの声をあげていた。


『共有スキル』についてと『念話』についてだ。


『共有スキル』の数とスキルレベルが10であることに、みんな驚くからね。

 そして『念話』が繋がることにも、感動してくれるんだよね。


 念話の機能を確認するために、俺が念話して“これでいつでも話せますよ”と言っただけなのだが……その直後にうつむいて、真っ赤になっていた。


 そして、その後からあのニマッとした感じが続いていたんだよね。


 うつむいて、髪の毛を顔のほうに寄せて表情を見られないようにして、ニマッとしている感じが……今までとギャップがありすぎるんだよね。

 まぁそれが“ツンデレ”ということなんだろうけど。



「ハートリエルさんは、どちらの出身なんですか?」


 俺は、少し気になったので尋ねてみた。


 普通の状態に戻っていたハートリエルさんだが、なぜかまた少し頬を赤らめた。

 ニマッとはしていないけどね。


「『アルテミナ公国』を出て、北に進んだ大山脈の山の一つに、『ハーフエルフ』の里があります。フォレストウォーカー氏族の里です」


 少しはにかみながら答えてくれた。


 そういえば、ハートリエルさんの名称は、ハートリエル=フォレストウォーカーとなっていた。


「里には帰らなくていいんですか?」


「ええ、大丈夫です。『ハーフエルフ』は自由を好むので、みんな好きにしています。だから……私と家族になったからって、挨拶に行く必要は、ない……です」


 なぜかニマッとしながらそう言った。

 どうも表情が維持できずに、ニヤけてしまったらしい。


 ——コン、コン


 おっとドアがノックされた。

 来たかなぁ……?

 俺は、ある人を呼んでいたのだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る