1067.ツンデレさんは、すごいスキルを持ってます。

 ハートリエルさんが、『絆』メンバーになってくれた。


 改めて、彼女の基本情報の確認だ。


 最大のポイントは、まだ確定ではないが……“ツンデレ”だと言うことだ!


 いや、そんな事はどうでもよかった。

 ギャップ萌えがすごくて、悪乗りしてしまったようだ……自重、自重。


 彼女は、薄紫の癖っ毛が胸のあたりまで伸びた目鼻立ちのすっきりとしたスレンダー美人だ。

 背も高い。

 耳が尖っていて、横に伸びているのは、『ハーフエルフ』の特徴のようだ。


 彼女は、十四年前にオカリナさん達と迷宮攻略者パーティー『火縄魔釣ひなまつり』を組んでいた人だ。

 弓の名人で、『ロングアタッカー』ポジションだったとのことだ。

 昨日の北区での防衛戦でも、『魔法の武器マジックウェポン』の大弓を使って、ワニ魔物に対して無双していた。


 大弓は青く輝く綺麗なもので、矢も専用の青い矢だった。

 カートリッジのような独特の形の矢筒との三点セットなのだろう。


 ハートリエルさんに聞いたところによると、矢筒には高性能の矢が二十本入っていて、全て射ち尽くすと、魔法装置を作動させて回収するとのことだ。

 自動回収された矢は、矢筒のそれぞれのスペースに収まるらしい。


 あの戦いの時の俺の見立ては、当たっていたようだ。


 『魔弓 蒼穹弓』という名称で、『階級』は『極上級プライム』とのことだ。

 『究極級アルティメット』とかでもいいような気がする性能だと思うが……。

 ただ魔法道具としての機能は、矢がカートリッジの元の場所に戻るという単純なものだけのようなので、それほど『階級』が上がらなかったのかもしれない。


 攻撃力が高いのはハートリエルさんの腕前と、弓矢の素材がいいからだろう。

 『コボルト青鋼あおはがね』でできているのだそうだ。

 あの青い輝きは、そうではないかと思っていたんだよね。


 十四年前に攻略者パーティーを組んでいた時に、『コボルト』のブルールさんにもらったらしい。


 『コボルト』の里では、複雑な『魔法道具マジックアイテム』や『魔法の武器マジックウェポン』を作るほどの職人はいないのだが、特定の物を特定の場所に回収するという魔法装置は作れたのだそうだ。


 本来はブルールさんの武器だったが、弓が得意なハートリエルさんにあげたらしい。

 それ以来、ハートリエルさんは大事に使い続けていたとのことだ。



 ハートリエルさんに断りを入れて、簡単に『波動鑑定』させてもらった。


 それによれば……『種族』はもちろん『ハーフエルフ』だ。


 『ハーフエルフ』は、妖精族の『エルフ』と『人族』のハーフが、種族として固定化したもので、純粋な妖精族ではないが亜妖精と呼ばれる存在らしい。


 レベルは、55である。

 完全にトップランカー冒険者のレベルである。

 前に聞いたが、単独で迷宮に挑むので周りの冒険者たちからは、『狂気のハートリエル』という二つ名で呼ばれていたとのことだった。

 微妙な二つ名だと思うが……本人はどう思っているのだろうか?

 怖くて、とても訊けないけどね。


 『通常スキル』を、多数持っている。


 その中で、俺が所持していないスキルは、『風魔法——疾風』『水魔法——怒涛』『融合魔法——疾風怒濤』『植物魔法——植物由来の力ボタニカルパワー』『植物魔法——植物由来の人形ボタニカルゴーレム』の五つだ。


 なんか、凄い!

 さっと内容確認させてもらう。

 詳細表示を見ると……


 『風魔法——疾風』は、中級の風魔法で、激しく強い風を放出できるようだ。

 同じ中級の風魔法で『旋風』というのがあったが、あれは渦巻き状の風を放出するものだった。

 この『疾風』は、強い風を押し出すようだ。

 台風の時のような風ではないだろうか。

 敵の動きを鈍らせたり、弾き飛ばすかたちで使うのだろう。


 『水魔法——怒涛』は、中級の水魔法で、大波のように水を放出する魔法のようだ。


 『融合魔法——疾風怒濤』は、『風魔法——疾風』と『水魔法——怒涛』を融合させた魔法で、強風とともに大水を放出する魔法のようだ。


 この『融合魔法』というのは、初めて聞く。

 完全にレアすぎるだろう!


 ハートリエルさんに聞いたところによると、合体魔法が二種類の魔法を、発動した後に合わせるのに対して、『融合魔法』は、初めから融合させた状態で放出するという特別なものなのだそうだ。


 そして、この魔法が使えるのは、実は『ハーフエルフ』の『種族固有スキル』を使っているかららしい。


 ただ『ハーフエルフ』だけが使えるわけではなくて、『融合魔法』という概念自体は、元々存在していて、『ハーフエルフ』の『種族固有スキル』のおかげで、本来発現が難しいレアスキルが使えるということのようだ。


 『植物魔法——植物由来の力ボタニカルパワー』は、初級の植物魔法で、植物や植物系の素材の力を引き出すことができるというスキルらしい。


 『植物魔法』というのは初めて聞いたが、ニアによれば霊域にいる『ドライアド』のフラニーが使う『森魔法』の下位互換のような魔法らしい。

 というか、実際は『植物魔法』の上位魔法が、『森魔法』ということのようだ。


 特定の妖精族に発現しやすかったりもするが、レアスキルであることは間違いないそうだ。


 ハートリエルさんによれば、薬草の薬効を高めたり、毒草の毒を強めたりできるらしい。


 ちなみにハートリエルさんは、このスキルを活かして、様々な薬草をブレンドした薬草茶を作って、愛飲しているそうだ。

 本人曰く……「ほとんど魔法薬に近いくらい身体力(HP)回復効果、魔力(MP)回復効果、スタミナ回復効果があります!」とのことだ。


 そのお茶、めっちゃ凄いと思うんですけど!


 ただ……飲んだことがあるアイスティルさん曰く……「めっちゃまずい」らしい。

 罰ゲームレベルだそうだ。

 それはそれで面白いけどね。


 今度、何かのイベントで罰ゲームとして取り入れたらいいかもしれない。

 罰でありながら、健康になれるっていう……もはや罰ではない罰だけどね。


 スキルレベルは、まだ低く3となっているが、スキルレベルが上がれば、もっとできることが増えるのではないだろうか。

 面白そうなスキルだ。




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