1060.称号にまで、キング殺し……。

 ギルド酒場での飲み会は、まだ続いている。


 多くの冒険者が俺に挨拶に来てくれて、一言二言ではあるが言葉を交わすことができた。


 そういえばその時に、俺のクランに入りたいと話す冒険者も結構いた。


 夕方の時間から、俺がクランを作ったという告知が張り出されていたようだ。

 もちろん、同時に俺がお願いした募集条件も貼り出してくれていたようだ。


 そんな時に、俺が迷宮の中での『連鎖暴走スタンピード』を止めて、カエル魔物のキングを倒したという報告が入ったものだから、冒険者たちが騒然となって、より注目度が上がってしまったらしい。


 リホリンちゃんが教えてくれたのだ。


 俺に挨拶に来たときに、クランについて質問する人もいたのだが、剥がし役のリホリンちゃんとナナヨさんが、「掲示板に貼ってある通りです。個別の質問は受け付けません」と言って、ガードしてくれていた。


 今このギルド酒場にいる人たちの仮に半分が応募してきたとしても……八十人ぐらいになっちゃうと思う。

 まいったなぁ。

 まぁ予定通り選考するしかないけどね。


 俺に挨拶に来てくれた冒険者には、若手の冒険者も結構いて、目を輝かせて、俺に憧れていると言ってくれる人たちがいた。


 ああいう清々しい子たちは、ぜひ応援してあげたい。


 別におじさんを嫌っているわけじゃないけど。

 俺も中身はおじさんだし。


 あと女性も多かった。

 なぜか……俺に握手を求めては、そのまま手を胸元に持っていってくれるというサービス精神旺盛な女性が結構いた。

 ラッキースケベではないけれど……ラッキーな状態だった。


 その時は、ニアさんも握手会状態で冒険者の挨拶を受けていたので、『頭ポカポカ攻撃』を発動する事はなかったのだ。


 ところがここでも俺の幸せは……ほんの数秒だったのだ。


 なぜかそういうときは、リホリンちゃんとナナヨさんがすぐに引き剥がしちゃうのだ。


 今改めて思い出しても……何か背中に寒いものを感じる。

 まさかこの二人……『お尻ツネツネ攻撃』の要員になったりしないよね?

 密かにサーヤとミルキーが来て、伝授するとか……絶対ないよね?



 そういえば、今日からギルド酒場では、先行してキンキンに冷えたエールと唐揚げが提供されているのだ。

 これはギルド長たっての希望で、俺のおごりの飲み会をやることとは関係なく、すでに納めていたのである。


 大量に納品していたはずだが……途中でエールが切れたと言うので、俺は『波動収納』から出して補充してあげた。


 唐揚げも大量に出たらしく、肉はあるがトッピングのレモンが切れたという情報も入ったので、レモンも補充してあげたのだ。



 俺とニアは、タイミングを見てギルド酒場から脱出した。


 リホリンちゃんとナナヨさんが少し不満そうだったが、「後は任せて」と言ってくれたのでお願いしてきた。


 支払いは、明日すればいいだろう。


 ニアと一緒に、『ツリーハウス屋敷』を目指す。


 同じ『西ブロック』にあるが、ギルド酒場が『上級エリア』なのに対し『ツリーハウス屋敷』は『下級エリア』にあるので、歩くと二十分ぐらいはかかる。


 飲んだ後に、のんびりと夜風に当たりながら散歩をするのが好きだから、俺的には楽しい。


「ねぇねぇ、そういえばさ……今日の戦いの後に、スキルが身に付いてたんだよね!」


 ニアが思い出したとばかりに、手をポンと叩いた。


「おお、何のスキル?」


「『拘束バインド耐性』が身に付いてた。あの攻撃、結構きつかったからね。必死でバインドされないように耐えた甲斐があったわ。一回攻撃を受けただけで身に付くなんて、超ラッキー!」


 ニアが得意顔だ。


 もしかして俺にも……俺は自分のステータスを確認した。


 おっと、俺にも新たなスキルが!


「俺にもスキルが身についてた!」


「なに、なに?」


「『超音波耐性』だよ。あの攻撃は、超音波攻撃でもあったからね。物理的な破壊力もあったよね。それにしても、一回攻撃を受けただけで身に付いたのは、ラッキーだね!」


「ほんとよ! 結果的に、超美味しい魔物だったってことね!」


「確かに」


「なんかさー……昨日の戦いでは、被害を出さないためにキングを瞬殺したんだろうけど、ちょっともったいなかったかもね。今度、キングみたいな上位クラスに遭遇したら、ある程度攻撃を受けたほうがいいんじゃない? グリムだったら、大事にはならないでしょ。そういう作戦で行ってみたら?」


 なるほど……それは一理あるかもしれない。


 俺が倒したキングボア、キングバッファロー、キングクロコダイルは、全て瞬殺しまった。

 リリイとチャッピーが倒したキングチキンも瞬殺だったようだ。


 上位クラスなんだから、特殊な攻撃を持っている可能性が高い。

 それを敢えて受けていれば、今回のように耐性スキルが身に付いていたかもしれない。


 そういう意味では、もったいないことをした気がする。


 今後余裕があるときは、敢えて攻撃を受けるというのも確かに一つの手だな。


 そしてもったいないことをしたと言えば、後から気が付いたんだけど……ワニ魔物のキングとか……仲間にしようと思えばできたんだよね。

 上位種で貴重な奴だったし。


 ワニ魔物だけは、爬虫類系だから『操蛇の矢』が使えたんだよね。

 打ち込めば、俺が『テイム』スキルを使って仲間にすることができたと思う。


 まぁあのときには、他の人の目もあったから、仲間にするのは微妙だったけどね。


 今後、迷宮探索をした時に、爬虫類系の魔物や魚系の魔物でキングクラスの上位種に出くわしたら、攻撃を受けるだけ受けて、何かスキルが発現することを期待しつつ、最後には『操蛇の矢』や『操魚の矢』を使って、仲間にするという作戦がいいかもしれない。


 うん、そうしよう!


 今回、俺とニアが取得した『超音波耐性』と『拘束バインド耐性』は、早速『共有スキル』にセットして、仲間たちも使えるようにしておくつもりだ。



 それから、見逃すところだったが……なぜか俺の『称号』が増えていた。

 『キング殺し』と『連鎖暴走スタンピードの鎮圧者』の『称号』を得ていた。


 とうとう『称号』にまで……キング殺し……トホホ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る