967.アイドル活動と、ファンショップ。

 『マスカッツ』のみんながアイドル活動をすることと、ファングッズのお店を作ることについては、シャインを始め弟のシャイニングさんと妹のシャイニーさんも賛同してくれた。


 問題は、その店をどこに出すかということなのだ。


 『フェアリー商会』の施設棟に出店しても良いという話もしたが、いずれにしろファンがこの屋敷に押し掛けてくることを考えると、屋敷の正門近くの壁を一部取り壊して、お店を作るのも良いのではないかと提案してみた。

 シャインにもファンがついてしまっているので、シャイン目当てにこの屋敷に来る人もいるだろうから、その対策も含めて屋敷の一画にお店を作った方がいいのではないかと判断したのである。


「さすがグリムさんですね。我が家の状況を見て、もう解決策を考えていただいたんですね。実は私も、今日一日仕事をしながら頭を悩ませていたんですよ」


 次男のシャイニングさんが、感動の笑みを浮かべた後、しみじみと言った。


「本当にありがとうございます。『フェアリー商会』の施設棟にお店を出すというのも、ありかもしれませんね。『フェアリー商会』に迷惑がかかりそうな気もしますが、うまく活用すれば集客力になるかもしれません……」


 今度は妹のシャイニーさんが、いい笑顔だ。

 彼女はすでに『フェアリー商会』で働きだしているので、両方の立場で考えることができるのだ。


「友よぉ、やはり君は素晴らしい! この子たちが人々を幸せにするなんて、最高じゃないか! まさに美しい……。この子たちを見たいと我が家に集まってんだから、ここに店を作ったほうが、喜ぶだろう。そのほうが美しいよ」


 シャインは、金髪をかき上げながら、爽やかな笑顔を作った。


「グリムさん、やはりこの家に人が集まるのはやむを得ないと思うので、屋敷の一画をお店にするほうがいいかもしれません。それなりに広い屋敷なので、ある程度の人数までは近隣の屋敷の迷惑にもならないと思いますし……」


「そうですね。やっぱりここに作ったほうがいいかもしれません。無理にここから人を動かさないほうが、いいと思います」


 シャイニングさんとシャイニーさんも、シャインの意見に同意した。


「分りました。じゃぁその方向が良いようですね。お店作りなどは手伝いますよ」


「ありがとうございます。ところで……そのファングッズというのは、どうやって作るのですか?」


 シャイニーさんが、礼を言った後に首を傾げた。


「この屋敷の誰かが作れるようになれば、一番いいのですが、それまでの間は私の仲間たちが作ります。『精密画』スキルを持っている者もいますから。他にもアクセサリーを作ったりしても良いでしょう。あとサンディーさん達が作るお花を鉢植えにして売るのも、立派なファングッズと言えますよ」


「ありがとうございます。それでは『フェアリー商会』から仕入れるかたちにすればいいですね」


 シャイニーさんは、ニコッと微笑んだ。

 改めて思ったが……シャイニーさんもめっちゃ美人だ。

 この笑顔……普通の男ならコロッとやられてしまうな……。


 というか……シャイニーさんも『マスカッツ』に入れたいくらいだ。


 まぁ彼女は、『フェアリー商会』の熱狂アナウンサーとして活躍してもらう予定だから、アイドル活動はできないけどね。

 でも、たまに『シャイニー &マスカッツ』みたいな特別ユニットを組んで、限定公演なんかをしても面白いかもしれない。

 いずれにしろ……俺の予想では、格闘技興業や各種のイベントを通じて、人気スターになると思うので、アイドル状態になる事は間違いないだろう。



 俺が思っていた通りに、うまく話がまとまってくれた。

 『マスカッツ』は、今後少しずつアイドル活動をしていくことになり、ファングッズのお店を屋敷の一画に作り、彼女たちが運営する。

 お店については、魔法建築でささっと小洒落たものを作ってあげよう。


 ふと思ったが……喫茶店をやっても大繁盛するのは間違いないだろう。

 お目当てのアイドルが働いている喫茶店なんて……絶対人だかりになっちゃうなぁ。

 アイドル喫茶……。


 もっとも……今の段階でそこまでやるのは、ちょっと行き過ぎな気がするのでやめておこう。


 今後専業アイドルが誕生したり、アイドル候補生がいっぱいできたときに考えれば良いだろう。


 今後の事は、シャイニーさんと『フェアリー商会』総支配人のサーヤで詰めてもらうことにした。


 俺は、あとで『魚使い』のジョージと『マスカッツ』のアイドル活動のプロデュースについて打ち合わせしようと思っている。

 ジョージが、めっちゃ張り切りそうだ。


 前にアイドルを育てようという話をしたときに、見た目は四歳児中身は三十五歳のハナシルリちゃんと一緒に、大盛り上がりしていたからね。

 悪乗りしたジョージは、アイドルを育てるプロデューサー名として『S.T.ジョージ』を名乗るとか、ふざけたことを言っていた。『S.T.』は『魚使い』の訳らしい。

 アイドルを育てる事務所を作るときは、『ジョジーズ事務所』という名前にするとか言って、更なる悪乗りをしていた。

 おそらく元いた世界の男性アイドルの有名な事務所のパロディーだと思うが……。


 それを聞いていたハナシルリちゃんが、負けじと『ハロハロプロジェクト』を作るとか、『フィフティーエイトグループ』とか『山道シリーズ』とか、『虹雨プロジェクト』とか、悪乗りプロジェクトを構想していた。


 でもそういうのって、結構面白いかもしれない。

 アイドルをプロデュースする仕事は、かなり楽しそうなのだ。



 その他にも、『ふさなり商会』の収益性をより高めるために、『シャインズマスカット』を使ったワイン作りや、花の鉢植え作り等についても打ち合わせをした。

 養鶏場を作る件も説明して、『ふさなり商会』のお店で卵の販売もしてもらうようにお願いした。


 ただ……そんな地道な商売の努力よりも……ファングッズのお店がオープンしたら、すごい売り上げを稼ぎ出して、『ふさなり商会』の収益を爆上げしそうな気がするけどね……。



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