807.首領は、遺跡を見つけていたらしい。
翌日の朝食後、俺たちは会議をするために『コロシアム村』の俺の屋敷の会議室に集まっている。
メンバーは俺の仲間たちと、最近一緒にいる国王陛下を始めとした貴族メンバーだ。
今日の会議では、最近判明した新事実の報告が行われる。
『正義の爪痕』の襲撃から六日経っているが、最初の報告以降、引き続き調査を進めていたのだ。
その中で新たに判明したことの報告が、行われるのである。
第一王女で審問官のクリスティアさんは、生け捕りにした構成員に尋問した後も、必要に応じて取り調べを繰り返してくれていて、俺が発見した首領のアジトなどにあったメモ書きや記録の解析も進めてくれていたのだ。
ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんと、『ドワーフ』のミネちゃんは、『魔物人』についての詳しい調査や、俺が接収した『操縦型人工ゴーレム』の二種である通称べつじん28号二体と通称メカヒュドラ一体いついても調査をしてくれていた。
元怪盗と敏腕デカの特捜コンビであるルセーヌさんとゼニータさんは、『正義の爪痕』の下部組織だった『マットウ商会』の徹底的な調査と、『正義の爪痕』の残党が残っていないかの調査を行ってくれていた。
まずは、これらの点について報告が上がる。
最初に、クリスティアさんが報告してくれた。
……それには、驚きの内容が入っていた。
まず、首領が魔物化因子を取り込ませた人々を大量に連れてきて、『コロシアム村』で魔物化させた時に使われた謎の道具についての報告だった。
あの時、なんとなく笛の音のようなものが聞こえた気がしたが、やはり道具を使っていたらしいのだ。
人の感情……特に悪意を増幅する効果がある特殊な音波を出す笛を使って、一斉に魔物化させたらしい。
だがそれは作りたての試作品で、使用途中で壊れてしまったようだ。
それゆえに、その特殊な笛はもう無いらしい。
首領が残したメモに、笛の情報があり、クリスティアさんが構成員たちに追加の聞き取りをして、ようやく明らかにした情報とのことだった。
本当に、人の悪意を増幅するような笛があるなら、恐ろしい限りだ。
簡単に魔物化を流すことができるということだからね。
ただ『魔物化促進ワイン』は全て押収してあるし、その笛は現存していないということなので一安心だ。
もう一つクリスティアさんが突き止めた情報は、今回の襲撃で使われた強力な魔法道具は、ほとんどが最近になって首領が手に入れたものだったということだ。
その強力な魔法道具とは、『隠密のローブ』『遠話のブローチ』『箱庭ファーム タイプセパレート』『プリズンキューブ』のことだ。
『隠密のローブ』は、姿と気配が消せて、波動情報まで誤魔化せる『
『遠話のブローチ』は、 親機一台と子機二十台のセットになっている『
相互に会話ができるという通信の魔法道具なのだ。
『箱庭ファーム タイプセパレート』は、一時的に生活可能な亜空間を作り、そこに繋げるトランク型の魔法道具で、俺の持っている『箱庭ファーム』と同じ『
『プリズンキューブ』は、 ターゲットとして選定した対象を、亜空間に引き込んで閉じ込めるもので、『
これらの強力な魔法道具は、比較的最近、首領が『マシマグナ第四帝国』の遺跡を発見し、そこで入手したものらしいのだ。
これも、首領が残したメモを分析して、突き止めたそうだ。
そしてその遺跡の場所は、首領しか知らなかったらしい。
詳しい資料も残っていなかったので、はっきりとした場所はわからないとのことだ。
構成員たちに尋問しても、誰もわからなかったそうだ。
これらの強力な魔法道具が、比較的最近見つけたものだったというのは、ある意味納得である。
強力な魔法道具を持っていながら、どうして今まで使ってこなかったのか少し違和感があったんだよね。
最近手に入れたということなら、使いようもなかったわけだから納得である。
まぁ最近といっても一ヵ月くらいの範囲らしいが。
手に入れた後の本格的な攻撃活動が、今回の襲撃だったのだろう。
ちなみに、べつじん28号二体とメカヒュドラは、首領のアジトに元からあったもののようだ。
首領のコールドスリープ装置などが置いてあった隠されたスペースに、格納されていたもののようで、新たな遺跡で見つけたというわけではないらしい。
今まで実戦投入されなかったのは、稼働させるのにかなりの時間を要したからとのことだ。
俺が拘束した十五人の研究員たちが、長期に渡って調整と整備をしていたと証言したらしい。
最近になって、やっと動かせるようになったという状況だったようだ。
俺は改めてクリスティアさんに、首領が最近発見したという遺跡の場所について尋ねてみた。
何とかその遺跡の場所を見つけて、調査に行きたいのだ。
普通に考えれば、遺物は首領が全て回収しただろうから、他には残ってないと思うが、念のため確認しておきたいのだ。
クリスティアさんは、場所の特定も試みてくれたようだが、メモ書き程度の資料しか残っていなかったので、特定には至らなかったとのことだ。
ただ『領都セイバーン』を南に下った『ウバーン市』の周辺エリアではないかと、クリスティアさんは考えているそうだ。
具体的にどの範囲か、地図をもとに確認した。
海沿いの都市『ウバーン市』を中心に、半径五十キロ圏内といった感じだ。
ここまで絞れているなら、だいぶ助かる。
まずは、そのエリアから探してみようと思う。
次に、ドロシーちゃんから報告があった。
『
難航しているというか……一朝一夕に、分析できるようなものではないのだろう。
秘密基地『竜羽基地』に格納した通称べつじん28号二体と、メカヒドラの調査も同時並行で行ってくれている。
これらの『操縦型人工ゴーレム』も、かなりの技術が使われているようで、解明するには時間を要するとのことだ。
ただミネちゃんとともに、べつじん28号の『ムーブトレースシステム』の修理に力を入れてくれているらしい。
それが結構進んでいるそうなのだ。
『ムーブトレースシステム』の修理は、『正義の爪痕』の首領が必死に取り組んでいたことであり、首領のアジトに残っていた研究員たちも力を入れていたとのことだった。
だが、遅々として進んでいなかったらしい。
それが、ミネちゃんとドロシーちゃんにかかれば、あっという間に修理を終えてしまう状況ということだ。
やっぱこの二人は凄い!
『ムーブトレースシステム』が使えるようになると、かなり動きが良くなるらしい。
修理が終わるのを、期待して待つことにしよう!
ここでドロシーちゃんから、一つ提案があった。
メカヒュドラやべつじん28号二体を、有効活用した方が良いのではないかとのことだ。
今のところは、制御不能になるとかの危険な兆候も見られないそうだ。
メカヒュドラを移動用の母艦や基地のようなかたちで運用し、べつじん28号二体も移動用の飛空挺のような使い方ができる。
小規模な基地や活動拠点として、運用できるわけである。
そんな使い方ができるように、資材を入れ込んだり、居住空間を充実させてはどうかとの提案だった。
確かに、それはいいかもしれない。
移動できる活動拠点が、三つできるということだからね。
三つとも、ステルス機能もあるし。
この意見にはみんな賛成して、この三つの『操縦型人工ゴーレム』を活用できるように、整備していこうという話になった。
まぁ三つとも俺の戦利品として、俺の持ち物になっているので、俺が中心となって整備するということではあるのだが。
仲間たちと一緒に、イベント感覚で楽しくやればいいだろう。
それから操縦の仕方についても、訓練をしていこうということになった。
基本的には俺の仲間たちで運用するが、緊急事態などに『セイリュウ騎士団』や、『セイリュウ七本槍』の人たちだけでも単独運用できるように、何人かに操縦の仕方を覚えてもらおうと思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます