773.仲間の最高レベル、更新。

 ヴァンパイアの始祖である『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』のドラキューレさんであるヒナさんと、その娘の真祖の血統『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』のカーミラさんが仲間になった。


 そこで、二人に改めてレベルやスキルについて教えてもらうことにした。

『波動鑑定』をさせてもらえば早いのだが、ヒナさんはまだ会ったばかりだし、『波動鑑定』をさせてもらうよりも、口頭で教えてもらったほうが良いと判断した。

 ちなみにカーミラさんについては、以前救出したときに、簡単にではあるが『波動鑑定』をさせてもらっている。


 まずドラキューレさんことヒナさんのレベルは、なんと89だった。

 過去最高だ!

 敵として現れたレベルの過去最高は、この前倒した『イビル・アーマークラゲ』のレベル80で、仲間の中での最高レベルもその『イビル・アーマークラゲ』が浄魔になった『マナ・アーマークラゲ』のレベル80が最高なのだ。


 それを軽く超えている。

 さすが元勇者……そして吸血鬼の始祖だけはある。


 ヒナさんの話によると、約三千年前に『勇者団』として活動していた『九人の勇者』は、最終決戦の時には、皆レベル80を超えていたようだ。

 ヒナさんは、その後一旦死んで吸血鬼に変性したわけだが、レベルは持ち越しになったそうだ。

 吸血鬼になってからも、多少レベルが上がって、現在は89になっているとのことだ。


 ちなみに同じ九人の勇者の一人だった『守りの勇者』のフミナさんも、当時はレベル80を超えていたそうだ。

 だが、今のフミナさんは、そのフミナさんの残留思念が主人格となって新たに付喪神となった存在なので、レベルは1からのスタートだった。

 それでも、今はレベル33まで上がっているけどね。


 カーミラさんは、前に救出したときに『波動鑑定』させてもらったが、レベルは50だった。


 真祖であり始祖であるヒナさんと、『真祖の血統』であるカーミラさんは、すべての吸血鬼が持っている『種族固有スキル』が使えるとのことだ。

『下級吸血鬼 ヴァンパイア』『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』『上級吸血鬼 ヴァンパイアロード』の『種族固有スキル』が、全て使えるらしい。


 そして実は、『上級吸血鬼 ヴァンパイアロード』の上にはもう一つ『貴族吸血鬼 ヴァンパイアロイヤル』という存在があって、その『種族固有スキル』も使えるとのことだ。


 『下級吸血鬼 ヴァンパイア』はレベル30を超えると『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』になり、レベル60を超えると『上級吸血鬼 ヴァンパイアロード』になる。

 そしてさらにレベルが上がり、レベル80を超えると『貴族吸血鬼 ヴァンパイアロイヤル』になるらしい。

 ただここまでレベルを上げることは、どの種族にとっても容易ではなく、現在『貴族吸血鬼 ヴァンパイアロイヤル』は、三人しかいないらしい。


 ちなみに『真祖の血統』は、真祖の血を受け継ぐ者しかなれないので、レベルが上がったからといってなれるようなものではないとのことだ。


 通常の吸血鬼の中で、事実上の最上位は『貴族吸血鬼 ヴァンパイアロイヤル』ということになるようだ。


 ただ、レベル100を超えたら、更なるクラスチェンジがある可能性もあるので、確定ではないとヒナさんは言っていた。


 ちなみに、『貴族吸血鬼 ヴァンパイアロイヤル』の三人は、約三千年前に、ヒナさんが吸血鬼になったばかりで、子供が産めなかった時に、保護して養子とした最初の三人の子供なのだそうだ。

 血の繋がりがないために、真祖の血統にはなれなかったが、通常の吸血鬼としてレベルが上がって『貴族吸血鬼 ヴァンパイアロイヤル』になったのだそうだ。


 当時、他の吸血鬼にした人たちと同じように、魔物化の兆候が現れてしまい、やむなく吸血鬼にしたのだそうだ。


 カーミラさんにとっては、一番上のお姉さんとお兄さんということになるようだ。

 一番上の姉と、その下の兄二人ということらしい。


 三人とも、他の吸血鬼の兄弟姉妹たちと一緒に、休眠しているそうだ。


 ヒナさんが改めて話してくれたが、ヒナさんや『真祖の血統』の『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』は、休眠を五百年くらいすることによって、人に近い体になって、子供を産むことができるようになるのだそうだ。

 ただ、そのために休眠しているということにはなっているが、仮にそういうことがなかったとしても、休眠していただろうとのことだ。

 長く生きてるのは結構退屈らしく、しばらく寝た後に目覚めると世界が新鮮に感じられるらしい。


『貴族吸血鬼 ヴァンパイアロイヤル』の三人については、休眠したからといって子供が産めるようになるわけでは無いらしいのだが、飽きちゃったから寝ているという状態だとのことだ。


 永遠の命というのは、意外に大変なのかもしれない。


 少し気になったので、他の兄弟姉妹たちは目覚めないのか尋ねてみた。


「私の子供たちは、全員が吸血鬼になっているわけじゃないの。生まれた時は、あくまで人間として生まれるから、本人に選択させているのよ。吸血鬼になることを選ばずに、人としての限られた人生を選んだ子供たちもいるわ。だから二十八人の母親ってことになってるけど、吸血鬼として残っている子は十五人しかいないのよ。そして吸血鬼になった子たちも、何かあったときに対処するために、順番にずらして休眠に入っているの。だから他の子たちはまだ目覚めないと思うわ。緊急事態には、もちろん目覚めさせることもできるんだけどね。とりあえずすぐにでも目覚めそうな子は二人ぐらいしかいないわ。あと貴族吸血鬼の三人はいつ目覚めてもいい感じだけどね」


 ヒナさんが、教えてくれた。


 子供の二十八人全員が、吸血鬼ということではなかったようだ。

 人としての人生を選んだということは、その子たちは既に亡くなっているということだよね。

 吸血鬼になっている子供十五人のうち、三人は養子である『貴族吸血鬼 ヴァンパイアロイヤル』の人たちだろうから、純粋な『真祖の血統』の子供たちは、カーミラさんを入れて十二人ということだろう。


 もう少し突っ込んで訊いてみたところ、子供がある程度大きくなったら、人としてそのまま生きるか、吸血鬼になって永遠を生きるかを自分で選ぶらしい。

 カーミラさんのように、成人してすぐに吸血鬼になることを選ぶ子もいれば、歳をとってから吸血鬼になることを選ぶ子もいるのだそうだ。


 ヒナさんは、今はいない子供たちのことを思い出したのか、少し憂いを帯びた表情になった。


「大丈夫よ、心配しなくて。子供には子供の人生があるから、吸血鬼になることは強要できないもの。ただ……人として人生を終えた子供たちのお陰で、一つ嬉しいことがあるの。極稀にだけど、その子たちの子孫に出会えることがあるのよ。探して出会えるものじゃないんだけど、出会うとなんとなく直感的にわかるのよね。それが活動期の楽しみの一つでもあるのよ」


 ヒナさんは、気を取り直したかのように、明るく言った。

 俺たちに心配させない気遣いだろう。


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