687.首領アジトの、宝物。

 保護した『真祖吸血鬼 ヴァンパイアオリジン』のカーミラさんが奪われたという魔法カバンは、『正義の爪痕』の首領のアジトの宝物庫で、無事確保した。


 そしてそのお陰で、思わぬプレゼントをいただいて、念願だった吸血鬼一歩手前の人たちを元に戻してあげることが可能となった。



 せっかく宝物庫を訪れたので、他のお宝も確認し、全て『波動収納』に回収してしまおうと思っている。

 回収する前に、簡単に確認だけ済ませておく。


 まずは、宝箱だ。


 大型の宝箱五つに、『マシマグナ第四帝国金貨』が入っていた。

『メカヒュドラ』の宝物庫で見つけたのと同じで、これも五億ゴル以上の価値はあるが、流通させにくいので、単なるコレクションになりそうだ。


 そして『コウリュウド王国金貨』や周辺国の金貨が、大型宝箱三つ分あった。

 三億ゴルくらいになるが、これは問題なく流通させることができる。

 これらは、遺跡の中で発見したのではなく、『正義の爪痕』が活動資金として集めたものだろう。


 この三億ゴルについては、『メカヒュドラ』の中で見つけたのと同じように、使い分けようと思っている。

 一億ゴルが密かに行っている仲間たちのための貯金に使い、もう一億ゴルは活動資金、残りの一億ゴルはお小遣いにしようと思う。


 これで、お小遣いの額が二倍になったので、一人当たりかなりの額になると思う。

『魚使い』のジョージが、特に喜びそうだ。

 ただジョージは、貯金が趣味みたいで派手に使うわけじゃないんだよね。

 ジョージも含めた仲間たちの分を、俺がしっかり貯金しているから、お小遣いの分は使い切ってもいいという話を前にしたのだが、貯金が好きらしい。

 あいつは、預金通帳を見てニヤけるタイプだな……。

『アイテムボックス』スキルの中を見て、ニヤけているに違いない。


 そういえば他の仲間たちも、あまりお金を使っている様子を見たことがない。

 もっとも、食事を含め大体の必要なものは俺が用意しているというか、『アメイジングシルキー』のサーヤたちがすべて手配してくれてるからね。


 各人の『アイテムボックス』スキルには、かなりのお金が溜まっているのではないだろうか。


 改め考えると……一番お金を使っているのは、フードファイターこと『ドワーフ』のミネちゃんかもしれない。

 買い食いの量が、半端ないからね。


 ミネちゃんは、俺の『絆』メンバーにはなっていないのだ。

『土の大精霊 ノーム』の『大精霊の神殿』を守る特別な『ドワーフ』である『ノームド』氏族の子だからだ。

 でも彼女の買い食いのお小遣いは、全て俺が出している。

 彼女が提供してくれる物や、協力してくれることに比べればお安い御用なのだが、それ以前にリリイやチャッピーと同じく可愛い大事な仲間なのだ。

 ミネちゃんの分の貯金も、リリイやチャッピーと同じように作ってあるのだ。



 この首領のアジトに置いてある金貨の額は、メカヒュドラの宝物庫にあったのと同額くらいだ。

 半分ずつに分けて保管していたのかもしれない。


 それから、大型宝箱三つ分の様々な宝石の原石らしきものがあった。


 これの価値も相当じゃないだろうか。

 詳しくは見ていないけどね。


 原石一つ一つが大きくて、削って加工するのがもったいないと思えるほどだった。

 なんとなくそのまま残した方が良いというか……それ自体が一つの置物として通用するぐらい大きいし、そんな良いオーラを放っているのだ。


 装飾品が入った大型宝箱も一つあった。

 中身は、やはり指輪が多かった。

 それと、腰に巻きつけるチェーンの装飾品みたいな物が、多く入っていた。


 それから『魔芯核』が満載されている大型宝箱が五つあった。


 あと……『メカヒュドラ』の宝物庫にあったのと同じ大きなアタッシュケースがあった。


 それを開けると……『メカヒュドラ』にあった『魔法の指輪 シールドリング』と同じデザインの指輪が百個入っていた。

『シールドリング』は銀色だったが、色違いの緑色をしている。


『波動鑑定』してみると……


『魔法の指輪 キャッチネットリング』という『名称』になっていた。


 相手を拘束する魔力ネットが、指輪から射出できるらしい。

 魔力ネットは、一定時間経過で消えてしまうようだが、多くの敵をどんどん拘束していく場合には便利だと思う。

 魔力を流せば、何回でも射出できるらしい。



 武具もいくつか置いてあったが、その中で一番階級が高かったのが、『究極級アルティメット』の槍だ。


 『魔槍 フタマタ』という『名称』で……穂先が二股に分かれている。

 詳細説明を確認すると……『ともに踊れ』という発動真言コマンドワードを発すると、二本の槍に分裂し、中に浮かんで自動で攻撃するらしい。

 そして、簡単な指示が出せるようだ。

 どうもこれも、魔法AIが搭載されているようだ。


「それ……多分ですが……『マシマグナ第四帝国』時代にいた九人の勇者の一人『突撃の勇者』という槍を使う勇者の武器だと思います。母に聞いたことがあります。踊るようにして、宙に浮いて自動で戦う槍があると」


 カーミラさんが、そう教えてくれた。


 もしその話が本当だとしたら、すごいお宝だと思うんだけど……。


 後で『魔盾 千手盾』の付喪神で『守りの勇者』フミナ=センジュの残留思念でもあるフミナさんに見てもらおう。


 俺は、槍を手に取ってみる。

 白銀色の綺麗な槍だ。

 柄が普通の槍よりも太く感じる。分裂するからだろう。


 特になにかが起きそうな気配は無いのだが……なんとなく魔力を流してみる……

 流し出してみると……すごい勢いで魔力が吸収されていく……

 一度流したら……俺の意思とは関係なく、魔力が吸い上げられていく……。


 初めて『魔盾 千手盾』を起動したときの感じとそっくりだ。


 どうやら、これらの特別な『魔法の武器マジックウェポン』は、起動する為に大量の魔力を必要とするのかもしれない。


 しばらくしたら、魔力の吸収が緩やかになった。

 十分に魔力が充填できたのだろう。


 もしかしたら、この大量の魔力を必要とする仕様は、使用者認証システムの意味もあるのかもしれない。

 それだけの魔力を持った者でないと、扱えないということなのではないだろうか。


 『限界突破ステータス』の俺にとっては、大きな影響はないが、普通の勇者……レベル60とか80とかの者にとっては、全量を吸われて足りるかどうかというくらいの魔力量だと思う。


 ただ千手盾と同じように、一度大量の魔力を吸収すると、通常使用のときは多くの魔力は必要としないようだ。


 機能を試してみることにした。


「ともに踊れ!」


 発動真言コマンドワードを発すると、白銀の槍が縦に二つに分かれた。

 二股だった穂先は、それぞれ湾曲気味の一つの穂先になっている。


 そして穂先を正面に向けたかたちで、二本の槍が宙に浮いている。


 俺は『波動収納』から少し大きめの石を取り出した。


「石を攻撃しろ!」


 槍に命じてみるすると、すぐに動き、石を貫いた。


 なるほど……千手盾と同じように、ある程度の行動を命じることができるようだ。

 これは、すごいお宝を手に入れてしまったようだ!


 おそらく『正義を爪痕』がこれを使わなかったのは、起動することができなかったからだろう。


 千手盾は付喪神化して、人格を持ったので、今後はこの『魔槍 フタマタ』を千手盾の代わりに使おう。

 誰かを守ってもらうとき等に、役立つだろう。



 俺は、全てのお宝を『波動収納』に回収する前に、カーミラさんに必要なものをあげると言って声をかけたのだが、特に必要はないとのことだった。


 逆に欲しいものがあれば、助けてくれたお礼に提供すると言われてしまった。

 家に戻れば、多種多様なお宝があるからそこにあるものならば、譲ってくれるとのことだった。


 長期睡眠を繰り返しながらとはいえ、何千年も生きている家系だから、確かにいろんな宝物があるんだろう。


 今度じっくり見せてもらいたいものだ。



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