657.大量発注、いただきました。
商売気のない俺の発言に対し、一通りのダメ出しをいただいた後に、改めてヒュドラ肉の販売についての話が進んだ。
結局、俺の意見は差し置いて……国王陛下の方でヒュドラ肉の百グラム当たりの単価を決めて、購入量を決めてしまった。
結論から言うと、百グラム五千ゴルもの値段をつけられてしまった。
もちろん普通の肉の値段ではありえない高値だが、入手困難なヒュドラの肉で、一生見ることもできないような特別な肉なので、その価値は十分あるとのことだ。
しかも高確率でスキルが手に入るし、一時的ではあるものの『基本ステータス』の中の『身体力(HP)』『魔力(MP)』と『サブステータス』の中の『防御力』『魔法防御力』が、一割くらいアップするという効能付きだ。
国王陛下としては、百グラム一万ゴルつけてもいいと思ったらしいのだが、後で一般の人に安く売りやすくするために、五千ゴルに留めたらしい。
最初に貴族や兵士といった必要性が高い人たちに、しっかりとした値段で販売し、その後に一般の人たちに少し値段を落として販売したら良いというアドバイスまでしてくれた。
国王陛下って、意外と商売が上手な感じだ。
『毒耐性』が身に付けば、一般の人でも生存確率が高まるから、後で値段を下げて販売してあげたいので、国王陛下のアドバイスに従うことにした。
それでも買えないような貧しい人たちには、炊き出しの時に内緒でこのヒュドラ肉を混ぜて、知らない間に食べさせてあげるという手はある。
突然スキルが発現して、まさか炊き出しを食べたからとは思わないだろうけど、プレゼント的な感じでいいかもしれない。
結局、国王陛下からは、王都の貴族や兵士たちの分ということで、一億ゴル分の注文をもらった。
ドンダケと思ったが……一回食べて終わりというのではなく、何回も食べるという想定なのだろう。
だから納品自体は、何回かに分けて行うということになるようだ。
同様に、セイバーン公爵領からは、五千万ゴル分の発注をもらった。
貴族が俺しかいないピグシード辺境伯領では一千万ゴル、財政難のヘルシング伯爵領では二千万ゴル分の発注をいただいた。
ビャクライン公爵領でもほしいということで、五千万ゴルの発注をもらった。
ゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃんと、スザリオン公爵家長女のミアカーナさんも、自分たちに権限はないが、仮予約として五千万ゴル分をそれぞれ頼まれた。
合計で三億三千万ゴル分の発注をもらってしまった。
肉を切り出す手間はあるものの、ほぼ利益なのでかなり儲かってしまったのだ。
『ドワーフ』のミネちゃんからも、「『ドワーフ』の隠れ里のみんなに食べさせたいので、いっぱい欲しいのです!」と言われたので、それなりの量を確保しておこうと思う。
ミネちゃんにはいつも魔法道具でお世話になっているので、後でこっそりとお礼として届けておこうと思っている。
もう一つ、国王陛下から依頼があった。
このヒュドラ肉を食べれば、一時的にではあるが、『基本ステータス』の中の『身体力(HP)』『魔力(MP)』と『サブステータス』の中の『防御力』『魔法防御力』がアップするということがわかり、それを有効活用するために、日持ちする干し肉に加工してほしいという依頼だった。
兵士たちが戦闘に入る前に、食べられるように配りたいとのことだ。
その用途の配給品として、軍や衛兵隊で備蓄しておきたいらしい。
これは『フェアリー商会』の食肉加工施設で、大量に生産することが可能だし、日持ちもするので即答で注文を受けた。
具体的な数量はこれからとのことだが、干し肉はある程度の保存が効くので、作ったら作っただけ買い上げてもいいと言っていた。
干し肉は乾燥させる手間があるし、重さも軽くなってしまうので百グラム当たり一万ゴルという値段をつけてくれた。
干し肉としては高いかもしれないが、魔法薬的な考え方をすれば妥当な値段かもしれない。
それからヒュドラのパーツで、武具などを作った場合には、提案してほしいとも言われた。
この話にはビャクライン公爵やセイリュウ騎士たちも反応していて、すごく興味がある感じだった。
高くてもいいから特注品の武具を作ってもらえないかという話が、セイリュウ騎士格付け第一位のヤーリントンさんから出ると、他のセイリュウ騎士からも同様の意見が出された。
ビャクライン公爵に至っては、遊んでほしい犬みたいな表情を俺に向けていた……残念。
ちょっと気になって国王陛下の方を覗いてみると……ビャクライン公爵と同じ顔をしてるじゃないか! 威厳ゼロか!
二人とも、俺に殺気を飛ばすくせに……なんだろうな……自由すぎるだろ!
まぁいいけどさぁ。
俺は、すぐに作れるか分からないので、前向きに考えますとだけ答えておいた。
ただ、武具作りの俺のパートナー『家精霊』こと『付喪神 スピリット・ハウス』のナーナが、後で要望だけは聞いておくということになったので、みんな目を輝かせていた。
事実上、断れない感じになってしまったが、まぁ期限はいつでもいいということなのでいいだろう。
個人専用のハイスペックな武具を、オーダーメイドで作るというのも面白いかもしれない。
おそらく家宝のように大事にしてくれるだろうし。
そしてその特注品を簡素化した廉価版みたいなものを作って、『ヤーリントンモデル』みたいな名前にして売っても面白いかもしれない。
少なくとも、セイバーン公爵領では、『ユーフェミアモデル』『マリナ騎士団長モデル』『シャリアモデル』みたいなものを作れば、兵士や衛兵たちがこぞって買うのではないだろうか。
コアなファンも多そうなので、コレクターズアイテムとしても人気が出そうだ。
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