646.討滅魔物は、全量お持ち帰り?

 ユーフェミア公爵と、その次女ユリアさんと三女のミリアさん、アンナ辺境伯とその長女のソフィアちゃんと次女のタリアちゃん、『ドワーフ』の天才少女ミネちゃん、エレナ伯爵とその執政官のキャロラインさん、護衛官のエマさんが、『神獣の巫女』たちのもとに駆け寄った。

 ソフィアちゃんとタリアちゃんとミネちゃんは、各ブロックに散らばって人々を元気付けていた『光柱の巫女』たちを回収して戻っていたのだ。

 彼女たちの操船する『浮遊戦艦 ミニトマト改』が、『光柱の巫女』たちの輸送に大活躍していたようだ。


 集まったみんなは、それぞれに声をかけている。


 ユーフェミア公爵とユリアさんは、長女のシャリアさんを気遣い、ミリアさんはライバルという名の親友スザリオン公爵家長女のミアカーナさんに寄り添った。

 『ドワーフ』のミネちゃんとソフィアちゃん、タリアちゃんは、親友のゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃんを囲んだ。

 アンナ辺境伯とエレナ伯爵、キャロラインさん、そして護衛官のエマさんは、第一王女のクリスティアさんに声をかけている。



 ユーフェミア公爵が、『神獣の巫女』たち全員に声をかけた後、俺のところにやってきた。


「今回は、またあんたたちに助けられたようだね。我が領を、そして我が国を守ってくれたことに、深く感謝する。ニア様も、本当にありがとうございます」


 ユーフェミア公爵はそう言って、俺とニアに頭を下げた。


「いえ、私たちができることやっただけです。何とか攻撃を凌げてよかったです」


「そうよ。まぁ結果オーライよね。でも今回は私たちだけじゃなくて、クリスティアちゃんたち『神獣の巫女』やテレサちゃんたち『光柱の巫女』の活躍も大きかったわ。もちろん、ユーフェミア公爵やセイリュウ騎士をはじめとしたみんなの力も大きかったわ」


 俺とニアは、そう答えた。

 ちなみにニアは、この『コロシアムブロック』に戻るときに、元の羽妖精サイズに戻っている。


「それにしてもあんたは……今回も派手にやったねぇ……まさかあれほどの実力とは、私でも信じられなかったさね。もうかける言葉もないよ……」


 なぜかユーフェミア公爵が、呆れたような顔でそう言った。


 はて……一体どれを見られたのだろう……。

 確かに今回は、遠慮なしでやった部分もあるが……基本的に見えないところでやったつもりなんだけど……。

 やっぱり……キンちゃんの映像中継が、隕石とか、巨大クラゲを映し出してたのかな……?

 まぁそれがなかったとしても……『亜竜 ヒュドラ』を屠ったり、巨大ザメを屠ったりしたからなぁ……冷静に考えると、やっちまった感があるなぁ……。



 俺は、そんな微妙な感情を一旦棚上げして、ユーフェミア公爵と戦後処理について打ち合わせした。


 まず避難している人々については、各ブロックの避難スペースでしばらく待機してもらって、衛兵たちが各人の状況を確認するということになった。

 そして、その場で炊き出しをして、美味しいものを食べてもらおうということになり、その担当は『フェアリー商会』が受けることになった。

 俺は、すぐに仲間たちに手配をした。


 つぎに、魔物や『死人魔物しびとまもの』や『魔物人まものびと』の死骸の処理についても、俺たちに任された。

 実際問題、衛兵たちを使って魔物の死骸を処理するのは、かなり大変だし時間がかかる。

 復興の為にも早く処理しないといけないので、俺の方から申し出たのだ。

 もっとも、ユーフェミア公爵も俺に頼もうと思っていたらしく、喜んでくれていた。


 超大型の魔物や邪魔になる魔物の死骸は、戦闘の中で『波動収納』に回収してしまっていた。

 だが、回収していない魔物もかなり多く残っているし、『コロシアム村』の外のエリアには、大量の魔物の死骸が転がっているのだ。

 連鎖暴走スタンピード状態で現れた、あの大量の魔物たちだ。


 すべての魔物の死骸を合計したら、おそらく……数千という数になるだろう。


 この魔物については、ユーフェミア公爵の即断で、全て俺の報酬として与えると言われてしまった。

 俺は特に必要としているわけではないが、一応受けることにした。


 数千体の魔物の死骸を処理するのは、人材の充実したセイバーン軍でも大変だと思ったからだ。

 それに、ユーフェミア公爵としては、本当に俺に対する報償という意味もあるだろうから、その厚意を受けておこうと思ったのだ。

 後日、改めて報償の話が出たときに、既に多くの報償をもらっていることになるので、その分セイバーン公爵領の負担を減らすことができると判断したというのもある。


 実際もし全てを換金したとしたら……相当な金額になると思う。

 魔物から取れる『魔芯核』、角や骨や皮などの素材、肉、それら全てが換金できたと仮定するならば、おそらく一体あたり五万ゴルから五十万ゴルくらいの価値になるだろう。

 もちろん、五十万ゴル以上の価値になる魔物もいるだろうけどね。

 魔物の大きさ、素材の貴重度、『魔芯核』の大きさや品質などによるので、だいぶ幅があるが小さめの魔物でも五万ゴルくらいにはなるようだ。


 まぁあくまで全て売れればという話であって、数千体もの魔物を一気に売りさばくなど普通はできないよね。

 換金性の厳しい資産を、また大量に抱えてしまった。


 ただ俺の場合は、『波動収納』にしまっておけば腐ることなく保存されるので、資産価値としては全く落ちないんだけどね。


 『魔芯核』は、今まで倒した魔物の分でも相当な数を持っているが、まだ一度も換金したことがない。

 お金に困っていなかったので、あえて換金する必要もなかったんだよね。


 『魔芯核』は、魔法道具を動かす燃料として使ったり、魔法道具作りや魔法薬を作るときの素材としても使われる。

 俺の元いた世界で言えば、石油とレアメタルを合わせたような優れた素材といえるのだ。


 それ故、魔物を安定して効率よく狩れる迷宮は、油田と鉱脈を合わせたような存在なのである。

 迷宮があるだけで国が豊かになり、逆にそれがしばしば争いの原因になったりするようだ。


 以前、『ミノタウロスの小迷宮』のミノショウさんに聞いたが、失われたの古代文明『マシマグナ第四帝国』が人造迷宮を作った理由は、人々の暮らしを良くするためだったとのことだった。

 だが世代を経るにつれて、その純粋な理念は失われたらしい。

 そして、それが国を滅ぼす原因にも繋がったということのようだった。


 前にサーヤに聞いたところによると、『魔芯核』は、大きさと品質で値段が決まるらしい。

 ネズミ魔物の『魔芯核』のように、小さくて品質もあまり良くないものでも五千ゴルくらいの値段はつくようだ。


 ただ実際は、同じ魔物の『魔芯核』でも、大きさや品質は違うようだが。


 大きさや品質は、魔物のレベル、体の大きさ、どのぐらい生きているか、などに影響されるらしい。

 大きさは、ビー玉くらいのサイズから、ビーチボールくらいの大きさ、そしてそれ以上のものまで幅広いようだ。


 品質については、『低品質』『中品質』『上品質』『極上品質』というかたちで判定するらしい。


 あの巨大なクラゲ魔物の超巨大な『魔芯核』は、一体いくらになるか……すごく気になる。

 まぁ倒した時に『魔芯核』を破壊しちゃったから、割れてはいるんだけどね。


 巨大クラゲ魔物のような特別な魔物以外の通常の魔物の『魔芯核』だけでも、大量にある。

 今回回収した魔物の分だけで、おそらく数億から数十億ゴルという金額になると思う。

 仮に二千体の死骸があったとして、少なく見積もって一体十万ゴルの価値としても二億ゴルになる。

 実際は、おそらくこの二倍から四倍くらいの価値はあると思うんだよね。

 今回倒した魔物には、小さいサイズのものはあまりいなかったからね。




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