631.魔物、放出!
隕石は、ほぼ全て回収した。
もう降ってくる気配はないし、俺の分身『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーからも同様の報告が入っている。
俺とナビーで対処しきれず、下に落ちてしまった小隕石は仲間たちが迎撃してくれた。
何割かは迎撃できなかったようだが、クリスティアさんたち『神獣の巫女』とキンちゃんたち『化身獣』の力で発動させた『五神絶対防御陣』の防御障壁のお陰で、奇跡的に被害を出さずに済んだ。
普通なら、壊滅的な被害になっていたと思う。
考えるだけで恐ろしい。
これは、ほんとに殲滅兵器の攻撃の一つなのだろうか……?
『マシマグナ第四帝国』に、これほどの技術があったというのか……。
魔法的な何かで、隕石を呼んだのか……?
いろいろ疑問があるが、今考えてもしょうがない……後にしよう。
小隕石の迎撃にあたってくれたのは、防御障壁の外で待機していた『聖血生物』たちと『魚使い』ジョージの仲間のカジキの浄魔と巨大ザメの浄魔たちだ。
この仲間たちからも、報告が入っていた。
小隕石に対し、攻撃を加え破壊したつもりだったようだが、よく見ると弾いただけで隕石自体は、ほとんど破壊されてなかったとの報告だった。
やはり……かなりの強度があるようだ。
俺は、その隕石をかけらも含めて、出来るだけ回収するように指示をした。
『共有スキル』の『アイテムボックス』が使えるから、回収自体はすぐできるはずだ。
一息つきたい気分ではあるが……そうもいかない。
やはり、殲滅兵器の中核である空飛ぶヤドカリ……移動型ダンジョンが行動を開始したようだ。
防御障壁に向かって、体当たりをかけた!
——ゴウォーンッ
大丈夫だ、防御障壁は、びくともしてない。
ん……そのまま不時着するのか?
ヤドカリは、球状に張られた防御障壁を滑るように移動しながら、不時着した。
やけにあっさりしているが……
なんだ!?
ヤドカリの口が開いた!
何かが出てくる…………魔物か?
いろんな魔物が、猛烈なスピードで出てくる!
まさか……迷宮内の魔物を放出しているのか!?
移動型ダンジョンだということだから、中に魔物がいてもおかしくはない。
それを全てを排出しているのか!?
しかも……狂乱状態のように見える……。
これは……『
『コロシアム村』と『セイセイの街』は、『五神絶対防御陣』の防御障壁があるから大丈夫だと思うが……。
魔物たちは、狂乱状態だから辺り構わず進んでいる。
周辺の自然環境が破壊されるのはもちろん、下手をしたら近隣の市街まで押し寄せてしまうかもしれない。
こいつらを倒してしまわないと……。
そう思った時だ……
クリスティアさんたち『神獣の巫女』が現れた!
防御障壁をすり抜けるように、出て来たのだ。
『コウリュウの巫女』となった第一王女のクリスティアさん、『セイリュウの巫女』となったセイバーン公爵家長女のシャリアさん、『ビャッコの巫女』となったビャクライン公爵家長女のハナシルリちゃん、『スザクの巫女』となったスザリオン公爵家長女のミアカーナさん、『ゲンブの巫女』となったゲンバイン公爵家長女のドロシーちゃんが現れたのだ。
防御障壁はまだ張られたままなので、どうも『化身獣』となったキンちゃんたちが残って、維持しているようだ。
クリスティアさんたちを包んでいたシャボン玉のような球体は消えているが、みんな宙に浮いたままだ。
そしてなぜか一緒に『クイーンピクシー』となったニアと、『魔盾 千手盾』の顕現精霊『付喪神 スピリット・シールド』のフミナさんも一緒にやって来ていた。
おそらく、この防御障壁は、普通では通過することができないはずだ。
『神獣の巫女』だけが、特別に通過できるのだろう。
その『神獣の巫女』に触れていることで、一緒に通過できたようだ。
ニアとフミナさんは、外に出たいと直訴したのだろう。
ハナシルリちゃんが念話で教えてくれたが、クリスティアさんたちも、コウリュウ様の指示で外に出て戦うことになったようだ。
「戦巫女として戦うことで、自ら希望の光となれ」と言われたようだ。
『五神絶対防御陣』は、クリスティアさんたちが抜けることで強度が弱くなるものの、キンちゃんたちだけで維持することになったとのことだ。
俺としては、ちょうどよかった。
あのヤドカリ……移動型ダンジョンに侵入して機能停止させるつもりだったが、フミナさんを連れて行きたかったのだ。
彼女が救いたいと言っていたニコちゃんが、生体コアとなっている可能性が高いからだ。
フミナさんもその思いがあって、ニアに相談し、クリスティアさんたちに直訴したと言うことのようだ。
「グリムさん、溢れ出た魔物は、私たちで何とかします。敵本体を叩いてください!」
クリスティアさんが俺にそう言うと、他の巫女たちも共に頷いた。
(大丈夫よ! こっちは任して! ついに私の無双のターンが始まるから!)
ハナシルリちゃんが、念話でそう言ってきた。
てか……君のことが一番心配だけど……。
なんと言っても四歳児の体だし、レベル5ですから!
いくらビャッコ様の力を宿してるからといっても、レベル5はまずいでしょうよ!
(無理したら危ないから、充分気をつけて)
俺は、一応注意を促したのだが……雰囲気的にあまり自重する気は無いようだ。
「大丈夫。私が残るから。こっちの事は、私がフォローするわ!」
ニアがそう言ってくれたので、少し安心できた。
ニアも一緒に突入するかと思ったが、残ってフォローすることを選択してくれたようだ。
「ニア、頼むよ。じゃあ行ってくる!」
俺はそう言って、フミナさんとともに移動型ダンジョンの入り口を目指した。
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