555.シェアって、なによ?
ミアカーナさんに、俺とニアをはじめとした仲間たちも挨拶した。
「妖精女神様、シンオベロン卿、お噂は我が領にも届いております。お会いしたいと思っていました。これからは、私とも仲良くしてくださいね」
ミアカーナさんは、俺たちに貴族の礼をとってくれた。
「わかった。よろしくね! 私のことは、ニアって呼んでくれていいから」
ニアは、相変わらずお気楽な感じだ。
「私のこともグリムと呼んでください。素晴らしい戦いを見せてもらいました。優勝おめでとうございます」
「ニア様、グリムさん、長いお付き合いになる予感がします。色々お話を聞かせてくださいね」
ミアカーナさんは、俺たちに微笑みかけてくれたので、俺も普通に微笑み返しただけなのだが……。
なぜか……ミアカーナさんは頬を赤らめた。
そして再度微笑みかけてきたので、俺も流れ的に微笑み返すしかない状態になり……ちょっとぎこちない空気になってしまった……。
やばい……これはもしかしたら『頭ポカポカ攻撃』が発動か……と警戒していた矢先に……
なぜかミリアさんが飛んできた!
まさかミリアさんが『頭ポカポカ攻撃』しないよね?
……ふう……さすがにそれはなかったようだ。
だが……俺に抱きついてきた……はて……?
「ちょっとミア、なんで熱視線送っちゃってんのよ! 油断も隙もないんだから! あなた、男に興味がないって言ってたじゃない!」
ミリアさんが喧嘩腰だ。
ミアとは、ミアカーナさんの愛称だろう。
「もちろん男に興味はないわ! でもお母様が言ってたわ。私にも特別な人がいるって! 出会えばわかる……ひと目見た瞬間わかるかもって! 今までは、なんのことかわからなかったけど……今ならわかる気がする。なにか……不思議な魅力を感じるのよね……。これが恋ってやつかしら……」
ミアカーナさんがそんなことを言って、頬を両手で押さえ、はにかんだ。
というか……俺を目の前にして……しかもみんながいる前で、堂々とそういう話をするのはやめてほしい……。
俺はどういうリアクションをすればいいのか……困るんですけど……。
まだ挨拶程度の会話しかしてないし……微笑み返しただけなのに……。
不思議な魅力を感じるって……なによ? ……不思議な魅力ってなに?
てか……そういえば『固有スキル』に『不思議な魅力』っていうのがあるけど……。
いまだによくわかんないスキルのままだけど……まさか発動してないよね?
「ちょっと! あなた今登場したばかりで、何堂々と言っちゃってるわけ! グリムさんはね、私の夫となる人なのよ! というか、もはや私のものですから!」
「「ちょっとミリア!」」
ミアカーナさんに対抗するように、ミリアさんが暴走発言をしている。
夫になると言った覚えはないし……俺はミリアさんのものにもなってないんですけど……。
そして、シャリアさんとユリアさんが飛んできて、お約束のツッコミを入れた。
「ちょっとミリア、何言ってるの!? あなたのものじゃないでしょう! グリムさんはものじゃないでしょう。でもグリムさんは、私のものにするけど! もしミリアのものだって言うなら、ミリアのものは私のものよ!」
ミアカーナさんは、ミリアさんに対抗するように言ったが……。
“俺は物じゃないんだよ”という俺の気持ちを汲んでくれて、注意を促してくれたと思ったら……その後に、普通に俺を物扱いしてるんですけど……トホホ。
そして、滅茶苦茶なことを言ってるし……。
俺は右腕にミリアさんに抱きつかれ、左腕にミアカーナさんに抱きつかれるという状態になり、只々苦笑いするしかない状態になってしまった。
さっき出会ったばかりのミアカーナさんにまでなぜ……?
そして誰も助けてくれようとしないのはなぜ……?
完全に放置プレイなんですけど。
シャリアさんとユリアさんも、最初こそミリアさんにツッコんだものの……ミリアさんとミアカーナさんのバトルが面白かったのか、ニヤけながら腕組みして見ている。
止めてよ……。
「まぁまぁ二人とも、グリムさんの取り合いをしてもしょうがないわよ。グリムさんは、私たちみんなのグリムさんですから。独り占めは無理なの! ニア様を中心にして、みんなでシェアするのよ! ねぇニア様」
やっと仲裁してくれる人が現れたと思ったら、またもや意味不明発言だ。
しかもその発言の主は……第一王女のクリスティアさんだ。
茶目っ気たっぷりに言っているから、完全に冗談だとは思うが……シェアって何よ!?
ルームシェアじゃないんだから!
俺はツッコミたい気持ちを抑えて、苦笑いを続けた。
変にツッコむと薮蛇になりそうな予感がしたのだ……何か危険を察知してしまったのか……。
「さすがクリスティアちゃん、わかってるじゃない! グリムのことで、喧嘩や取り合いは無し! みんな仲良くね!」
ニアが明るく言った。
うまく仲裁してくれたような気もするが……なんとなくニアさんが黒幕となって、何かを企んでいるような気がしないでもない……深く考えたら負けだな……無視!
それはそうと、せっかく仲裁してくれたのに、ニアは満面のドヤ顔で、いつもの残念ポーズをとっている。
右手人差し指を突き上げて、左手を腰に当てるというあの古臭いポーズだ。
そしてなぜか……ハナシルリちゃんもやってきて、楽しそうに同じポーズをとった。
残念ポーズで共感し合うのはやめてほしい……。
本当にこの二人……キャラかぶってる気がするんですけど……『残念コンビ』の誕生か!? ……トホホ。
「まぁまぁ、みんな仲良くってことで話がまとまったから、いいじゃないかい」
ユーフェミア公爵が突然そう言って、最終的に話をまとめてしまった。
俺的には微妙だが……まぁ一旦話を締めてくれて、この変な状態から解放されるのでいいけどね。
そして、さっきからずっと続いてる溺愛オヤジとシスコン三兄弟の氷のような冷たい殺気は、ハナシルリちゃんが解除してくれた。
溺愛オヤジとシスコン三兄弟のところに行って、甘えてくれたのだ。
その瞬間彼らは……俺の事など忘れ、ニヤけ顔でふにゃふにゃになっていた。
やっぱり完全に手玉にとられている……残念。
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