480.フェアリー商会の、新体制、その八(カッコ悪い武具も人気です……)。

 

 十五、武具販売事業本部——『フェアリー武具』を展開。

 現在は、『マグネの街』に本店、『領都ピグシード』『ナンネの町』に支店がある。

 今後『イシード市』にも出店予定。ヘルシング伯爵領には、今のところ出店の予定は無い。

 事業本部長は、『マグネ本店』の事業支配人のブキンさんにお願いした。

 ブキンさんは、『マグネの街』の『フェアリー武具』の店長をしていた人だ。

  事業内容は、武具、魔法道具、回復薬などの販売である。

『領都支店』や『ナンネ支店』では、それほど売れていないが『マグネ本店』では『アルテミナ公国』から多くの冒険者が訪れているために、かなり売れている。

 最近売り出したばかりの新シリーズで蜂魔物の素材を使った『ビーシリーズ』は、早くも評判を呼んでいるようだ。

 これは『家精霊』こと『付喪神 スピリット・ハウス』のナーナが作ったもので、軽鎧はシースルーのセクシー装備になっているものだ。

『闇影の義人団』の正式な装備として採用されたものと、ほぼ同じものだ。


 軽鎧は『ビーアーマー』という名称だ。

 装着性の良さを重視して、上下二つのパーツに分かれていて、上半身がジャンバーのように、下半身がズボンのようになっている。

 上半身のジャンバーパーツは、蜂魔物の胴体の外皮を利用した黒いノースリーブで、ベストのようなかたちになっている。

 そして、肩から両腕に透明な袖がついているのだ。

 蜂魔物の羽根を利用したもので、スケスケなのである。

  蜂魔物の羽根は防御力もあり、適度な柔軟性と通気性もある。

 ナーナによれば、動きやすい装備にしたいとの考えから、手足は蜂魔物の羽根を使ったとのことだ。

 普通の小手パーツやスネ当てパーツと違って、全体を包み込んでいるので隙間がなく防御性能は高まっている。

 それでいて動きやすいというのだから、ある意味画期的な軽鎧でもある。

 下半身パーツも蜂魔物の外皮を使ったホットパンツに、足の付け根からくるぶしの辺りまでシースルーパーツが付いている。

 足が完全に見えるスケスケ状態の超絶セクシー装備なのだ。

 ホットパンツの部分は黄色になっているので、上半身の黒と合わせると蜂っぽい感じにはなっている。


 ヘルムは、『キラービーヘルム』という名称で、『闇影の義人団』仕様の『キラービーフェイス』とは仕様が異なる。色は黄色である。

 この商品バージョンは、蜂魔物の頭部の下半分を切断し、上部を加工した兜だ。

 蜂魔物の頭の上半分をかぶる感じで、目も触角もついている。

 ヘルムだけ極端に蜂っぽい意匠になっている。

 ちなみに『闇影の義人団』仕様の『キラービーフェイス』は、顔を隠せるようにフルフェイス型になっている。

 蜂魔物の頭部を上下で切断せずに、サイズをうまく調整して作ってある。

 フルフェイスのヘルメットを被っている感じだ。


 防具は、『ビーシールド』という黒い丸盾だ。

 蜂魔物の体の外皮を、蜂魔物手足で補強したものである。


 武器もナーナのセンスを感じさせる武器が各種用意されている。


 『ビーニードル』は、格闘専用の武器だ。

 手の甲に装着する固定型の武器で、蜂魔物の針が装備されていて、拳の先に長く針が突き出た形状になっている。

 敵を殴るかたちで刺し貫く、接近戦専用の武器なのだ。

 ただ、よほどの体術の使い手じゃないと使いこなせない武器だと思う。


 『ビーダガー』は、蜂間物の針で作った短剣だ。


 『ビーランス』も、同様に蜂魔物の針で作られた槍である。


 『ビーアックス』は、蜂魔物の牙顎を使った斧だ。


 『ビーロングアックス』は、同様に蜂魔物の牙顎を使った長柄斧である。


 以上の『ビーシリーズ』は、全て『階級』が『上級ハイ』になっている。


 値段もそれなりの金額なのだが、派手好きな女性冒険者に受けていて、既にいくつか売れているようだ。ブキンさんの話では、今後人気に火がつく可能性が高いらしい。


 もう一つナーナが開発した魔竹を使った『魔竹シリーズ』の発売している。

 俺的には、かっこ悪い装備と思っていたのだが、意外と反応がいいようだ。

 ちょっと驚きだ。

 というか……ナーナに謝らなきゃいけないかもしれない。

 絶対売れないと思ったんだけど……。


 やはり英雄譚の『魔法機械帝国と九人の勇者』に出てくる『斬撃の勇者』の初期装備にそっくりというのが、反応がいい理由らしい。

 あとは、色が赤黒いから、意外といい感じにかっこよく見えるというのもあるかもしれない。


『魔竹シリーズ』は、『階級』が『中級ミドル』になってしまい、それなりの値段をつけざるを得ないのだが、それでも既にいくつか売れているようだ。

 特売商品にしないとダメだと本気で思っていたのだが、思い込みはいけないようだ。反省しようと思う。

 軽鎧は『魔竹アーマー』という『名称』だ。

 上半身は剣道の胴のような形状で竹を編み込んだものになっていて、ある意味『竹籠』を着ているような感じになっている。

 小手とスネ当ては、『魔竹』を丁度いい形状に裁断して加工してあり、それなりにいい感じにできている。

 腰の部分も剣道のたれのような感じに、『魔竹』を編み込んだパーツが下げられているが、何度見ても、俺的には『ざるそば』の下にひいてあるやつにしか見えない。

 ヘルムは、『魔竹の面』という『名称』だ。

 深型の目の荒いザルを被っている感じで、ギリギリ剣道の面に見えなくもない……でもやっぱりかっこ悪い。

 防具は、『魔竹の丸盾』という丸盾だ。

 見た目は……まんまザルだ。

 武器は『魔竹の竹刀しない』という剣道の竹刀にそっくりな奴だ。

 この『魔竹の竹刀しない』が、一番よく売れているようだ。

 他にも『魔竹の竹槍』『魔竹の棍棒』『魔竹の長竿』という武器がある。


『魔法機械帝国と九人の勇者』の話に出てくる『斬撃の勇者』の人気は、すごいようだ。

 おかげで、俺的には剣道の道具一式を、カッコ悪く下位互換しただけにしか見えない装備が人気なんだからね。



 十六、銀行事業本部——『フェアリー銀行』を展開。

 現在は、『マグネの街』に本店、『領都ピグシード』『ナンネの町』に支店がある。

 今後『イシード市』にも出店予定。ヘルシング伯爵領には、今のところ出店の予定は無い。

 事業本部長は、『マグネ本店』の事業支配人のサーヤである。

 この部門は、非常に高度な判断が要求されるので、今のところサーヤに兼務してもらうしかない。

  事業内容は、事業に対する貸付及びコンサルティングである。



 十七、製パン事業本部——『フェアリーパン』を展開。

 現在は、『マグネの街』に本店、『領都ピグシード』『ナンネの町』に支店がある。

 今後『イシード市』にも出店予定。ヘルシング伯爵領の『サングの街』にももうすぐオープンする。他の市町には、今のところ出店の予定は無い。

 事業本部長は、『マグネ本店』の事業支配人のチョリスタさんである。

  事業内容は、パンの製造販売である。

『マグネ本店』、『領都支店』は四つのエリアブロック、『ナンネの街』の店舗は、どれも大盛況だ。


 商品ラインナップは、『やわらかパン』『レーズンパン』『野イチゴジャムパン』『ブルーベリージャムパン』『リンゴジャムパン』で、新商品が『ピーナツバターパン』とチョコチップを混ぜ込んだ『チョコチップパン』とコッペパンを開いてチョコをべったりかけた『チョコパン』だ。


 まだ新商品のアイデアはいくつもあるが、連日大盛況で現状の品数を作るだけでも大変なので、当面はこのままでもいいかと思っている。

 ただ飽きられないように、少しずつ新商品を投入しようと思っているけどね。



 十八、教育事業本部——『ぽかぽか養護院』『ぽかぽか塾』『ハンター育成学校』『使用人育成学校』を展開。

 事業本部長は、『使用人育成学校』の校長で執事のタバスさんにお願いした。

  事業内容は、養護院の運営と教育事業全般である。


 ○『ぽかぽか養護院』は、『マグネの街』とヘルシング伯爵領の『サングの街』で運営している。

 ヘルシング伯爵領の他の市町でも、必要があれば始めようと思っている。

 ピグシード辺境伯領の『領都ピグシード』と『ナンネの街』には、領立の『シンオベロン養護院』があるので、『ぽかぽか養護院』は作っていない。

 ただ『シンオベロン養護院』の運営は、『ぽかぽか養護院』を参考にして行っているので、ほとんどグループのようなものだ。

 これから復興する『イシード市』にも、『領立シンオベロン養護院』ができる予定だ。


 ○『ぽかぽか塾』は、『マグネの街』、『領都ピグシード』の四つのエリア、『ナンネの街』で運営している。

 子供たちに無償で、文字の読み書きを教えるために始めたが、大人も受け入れることにしているので、大人の参加者も多い。


 ○『ハンター育成学校』は、一期生を育成中だ。

 一期生は、三十名を選抜した。

 希望する者はできるだけ受け入れてあげたかったが、最低限の体力テストを通過できた者が三十名だったようだ。

 応募者自体は、五十名ほどいたようだ。

 領軍でも衛兵の募集をした直後だったので、その割には集まった方ではないだろうか。

 三十名の中には、『アルテミナ公国』の駆け出し冒険者が何人か入っているようだ。

 どうもトップランクの冒険者だった『炎武』のみなさんに直接指導が受けられるという話を耳にして、わざわざ訪れたようだ。

『ハンター育成学校』は、当面、『領都』のみでの開校だ。


 ○『使用人育成学校』は、『マグネの街』でのみ開校となる。

 執事、メイド、その他使用人全般について教育を行っている。

 希望者が実際に働きながら学ぶというかたちで、家具工房や鍛治工房への弟子入りと同じような感じだ。

 そういう意味では、『家具工房』や『鍛治工房』も『職人育成学校』として、この教育事業部門に組み込んでもいいのだが、今のところは別になっている。

 あと事実上『薬師育成学校』となっている『フェアリー薬局』の育成部門も、将来的にはこの部門に組み込んでもいいかもしれない。


 これらの各学校は、収益を上げるのが目的ではないので、どれも赤字部門だ。

 ただ『ハンター育成学校』は、いずれ授業の一環として魔物狩りなどをするので、ある程度稼ぎも上がる予定だ。

 そして『使用人育成学校』や『家具工房』『鍛治工房』『フェアリー薬局薬師育成部門』は、学ぶ者たちが働き手にもなっているので、完全な赤字というわけではない。



 

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