477.フェアリー商会の、新体制、その五(『バイヤーズ』という名の食材ハンター)。

 

 七、食品販売事業本部——『フェアリー商店』を展開。

 現在は、『マグネの街』に本店、『領都ピグシード』『ナンネの町』に支店がある。

 今後『イシード市』とヘルシング伯爵領の各市町にも出店予定。

 ただ、『サングの街』には、『闇影の義人団』のメンバーのアシアさんの『アシアラ商会』がある。

 食品系の商品を中心に幅広く商品を仕入れて、販売しているので、業態的に被ってしまう。

 そこで、競合しないように『サングの街』には、出店しないことにした。

 ただ『フェアリー商会』の商品を『アシアラ商会』に卸して販売してもらう予定だ。

 前にその話をしたときには、アシアさんは大喜びしてくれて、特設コーナーを作ってくれると言っていた。

 事業本部長は、『マグネ本店』の店長であり事業支配人のショクニールさんにお願いすることになっている。

  事業内容は、食品全般、調味料などの販売である。


 この部門の『マグネ本店』には、店舗のスタッフ以外に凄腕の仕入れ担当者が三人いる。

 シイレードさん、カイツゲルさん、オロシンさんの三人で、みんな四十歳前後の精悍な顔付きのナイスミドルだ。

 長年仕入れ担当として交渉力を磨いた彼らは、百戦錬磨の営業マンといった雰囲気を持ったやり手なのである。

 この優秀な人材である三人には、今後の商会の成長のために新たな役割を担ってもらうことにした。


 シイレードさんは、今まで通り食品を中心とした商品の仕入れを担当してもらうが、『フェアリー食品』で扱う商品に限らず『フェアリー商会』で扱うもの全般に関連する情報収集や仕入れルート作りをしてもらうことにする。

 部門を新設し『仕入買付事業本部』を立ち上げることにし、事業本部長に就任してもらうことにした。

 仕入れ先を確保して安定的に仕入れることと、スポット的に特別に買い付けること、そして外注生産やOEM生産なども担当してもらおうと思っている。

 この部門で優秀なバイヤーを育成してもらい、重要な仕入れ商品が見込める支店には、バイヤーを配置する予定だ。

『バイヤーズ』という名の最強仕入れ部隊を目指している。

 ただ……実は一番の任務は、俺が欲しいと思っている食材や植物などを探し出すこと……いわば『食材ハンター』なのだ。

 ある意味、一番重要な部門かもしれない。

 食べたいものとか……欲しい調味料とか……探せば絶対どこかにありそうなものが、いくつもあるからね。

 コーヒーとかだって、絶対どこかにあるはずだ。

 まさに、この部門は俺の肝いり部門なのだ。

 そして『バイヤーズ』というチーム名をつけたのも俺なのだ。

 でも今回は……ニアさんにジト目攻撃を受けなかった……まぁまぁイケてる名前だったらしい。


 カイツゲルさんには、『アラクネロード』のケニーが指揮する行商団をまとめる『行商事業本部』の事業本部長をやってもらう予定だ。

 ケニーの行商団は、ピグシード辺境伯領の特産品を広めるために各地に行商に行くのだが、同時に様々な情報を収集をする諜報部隊でもあるのだ。

 俺の眷属となっている『聖血鬼』のメンバーで構成されているのである。

 ただ各地に散らばる行商団を取りまとめる本部の人材が必要なので、カイツゲルさんを抜擢したのだ。

 そして行商団は、各地の特産品情報なども拾い上げ、有望な商品があれば仕入れてくるという業務も行う。

 もちろん、俺の探している食材の情報も拾ってもらう。

 行商団が拾ってくる情報もかなり期待できるので、『仕入買付事業本部』のシイレードさんとの連携も重要になる。

 その点この二人は、今まで一緒に仕事をしてきたので、バッチリやってくれると思う。

 行商団は、『バイヤーズ』の活動を補完する役割も持っているのだ。


 そしてもう一人のオロシンさんには、『卸売事業本部』の事業本部長に就任してもらう予定だ。

『卸売事業本部』は、『フェアリー商会』の商品を購入したいという大口取引希望の行商人や行商団との商談窓口となる部門だ。

 いわば卸売り専門部門なのだ。

 また『サングの街』の『アシアラ商会』のように、定期的な販売チャンネルの一つとしての卸し先も今後増えることが予想される。

 スポット的な買付依頼に対応するだけではなく、このような販売チャンネルへの卸売も管轄してもらう。

 ピグシード辺境伯領の有望な商品を本当に特産品として広めるには、様々な販売チャンネルに商品を流す必要があるので、ここも重要な部門となる。

 様々な地域の商会や商団と共存共栄ができればいいと思っている。


『マグネ本店』と『領都支店』の四つのエリアにある各支店及び『ナンネ支店』の中での売れ筋商品は……


 割合的に一番多いのは『フェアリー牧場』や『フェアリー農場』で作っている牛乳、卵や各種野菜、米などのようだ。

 まぁ一番販売するのに力を入れているからね。日持ちしないし。

 そして、米が結構普及してきている。

 これは今まで行った『炊き出し』などでの『おにぎり』効果だ。


 単独商品として一番売れているのは、『フェアリー食品』で作っている『マヨネーズ』と『ケチャップ』のようだ。

 これは納得だ。

 今のところ陶器の壺に入れて販売しているのだが、壺の調達が追いつかない状態だ。

『魔竹』で作るプラスチックのようなもの……『魔竹プラスチック』という名前にしたが、それで容器を作ることを現在検討中だ。

 商品が増えるほど容器の問題がどうしても出てくる。

 そこで商会内に容器の製造部門を作ることにした。

『容器包装事業本部』として、商会の商品に使う容器や包装資材を作る予定だ。

 商品としての容器も販売しようと思っている。

 もちろん、この異世界を包装ゴミまみれにさせたくないので、なるべくゴミにならないようなリユースできる容器だけを作っていこうと思っている。

 事業本部長には、『フェアリー商店』で雑用係として働いていたヒンナさんを大抜擢した。

 彼女は、元々のお店だった時から働いていたメンバーの一人で、二十歳のとても愛嬌のある元気な女性なのだが、ちょっとした工夫をするセンスがすごいらしい。

 お客さんが喜ぶように商品を詰めてあげたり、商品の展示も自分なりに工夫しているそうだ。

 そんな彼女の感性を容器開発に活かせたらいいと思って、サーヤの進言に基づいて大抜擢したのだ。

 ただ、彼女はお客さんと話すことが大好きで、接客をしたいという気持ちもあるようなので、事業本部長といいつつも、ある程度自由に動けるようにしてあげようと思っている。

 お客さんとのやりとりの中で、要望を聞いたり不便な点を聞き出して容器を開発することができるだろうからね。


 単独商品では、まだ『マヨネーズ』や『ケチャップ』には及ばないものの、販売したばかりの『チョコレート』や『ピーナツバター』も早速売れているらしい。

 ただ嗜好品という感じが強いので、現状では余裕のある人にしか売れていないようだ。

 ショクニールさんによると、一度購入してくれた人はその味が忘れられず完全にリピート客になっているとのことだ。

 そういうことなら、今後は“試食販売”を積極的に展開した方がいいだろう。

 食べさせてしまえば、こっちのものなのだ。



 八、家具調度品販売事業本部——『フェアリー家具』を展開。

 現在は、『マグネの街』に本店、『領都ピグシード』『ナンネの町』に支店がある。

 今後『イシード市』にも出店予定。ヘルシング伯爵領には、今のところ出店の予定は無い。

 事業本部長は、『マグネ本店』の店長であり事業支配人のカグンさんにお願いした。

 事業内容は、家具・調度品の製造販売などである。

 この部門には工房がある。

『家具工房』で、自社製品を作っているのだ。

 工房長のモコザイグさんを筆頭に、カグツクさん、テブルさん、イースさんと一人前の職人が揃っている。

 それ故に、家具はほとんど自社製造で賄えているのだ。

 大きいものは、ベッド、テーブル、椅子、タンス、机などを作っている。

 さらに大きいものとして、馬車を作ることもある。

 調度品である小さな木工品も製造している。

 壺、花瓶などのお洒落な装飾品は、仕入れて販売している。

 今後は、『領都支店』で稼働した『焼物工房』で作る花瓶なども販売する予定だ。

 『家具工房』は『マグネ本店』に、『焼物工房』は『領都支店』にあるのだ。

 それぞれの工房には、職人希望の若者が多く配属されていて、職人の育成も行っているのだ。


『マグネ本店』『領都支店』『ナンネ支店』のそれぞれのお店では、今のところ家具や調度品がバカ売れしているということはない。

 やはり悪魔の襲撃による悲劇が起きて間もないので、こういう商品は動きにくいのだ。

 ただ一つだけ、新しく作った商品で結構売れ出しているものがある。

 それは……買い物カート型の手押し車だ。

 スーパーなんかで、買い物の時に使うカートと似たようなかたちだ。

 ただすべて木製で、タイヤだけは木製の輪に蛇魔物の皮が巻き付けてある。

 ほぼゴムタイヤと同じような感覚で使えるものだ。

 商品名は、そのままダイレクトに『カート』という名前にした。

 荷物を運んだり、買い物をした物を入れたり、小さな子供を入れたりといろんな用途で使えて、人気が出てきているのだ。

 価格を一万ゴルと抑え目にしたのも良かったようだ。

 モコザイグ親方の話では、一人前の職人を目指す弟子たちが腕を磨くのに、丁度いい製品だそうだ。

 半人前の弟子たちが修行として作った作品ということもあり、安く提供しているのだ。

 もちろん、一定水準以上の物しか販売してないけどね。



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