446.増えた、眷属。

 懸案だった『血の博士』の隠し部屋を見つけることができ、俺はアジトの探索を一旦終了することにした。


 そして『魚使い』のジョージたちや仲間たちを連れて、秘密の地下街『ピア街道地下街』に移動することにした。


『ピア街道地下街』は、ピグシード辺境伯領の『マグネの街』と『アルテミナ公国』を繋ぐ、不可侵領域の街道の中央付近の地下に構築している施設だ。

 不可侵領域の街道には、名前がなかったので、施設を作るときに『ピア街道』と勝手につけてしまったのだ。

 ピグシード辺境伯領の『ピ』と、『アルテミナ公国』の『ア』で『ピア街道』としたのだ。


『ピア街道地下街』には、無理矢理吸血鬼にされた人たちや、吸血鬼一歩手前の『適応体』状態の人たちを密かに保護している。


 吸血鬼にされた人たちで、希望する者には俺の血を与えて、『聖血鬼せいけつき』に変性させてあげようと思っている。


 そしてジョージたちには、温泉でゆっくりしてもらおうと思っている。

 源泉があったので、温泉を作ってあるからね。

 前世が日本人のジョージなら大喜びするはずだ。



『ピア街道地下街』に着いて、早速吸血鬼にされた人たちに集まってもらった。

 ここの運営を任せてある『アラクネロード』のケニーにも、来てもらった。


 無理矢理吸血鬼にされた人たちは百五十三人で、みんなレベルが10台の『下級吸血鬼 ヴァンパイア』だったのだが、今は、レベルが30になり『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』にクラスアップしているのだ。


 実は、ケニーからの提案で、希望者に対してレベル上げをしてあげたのだ。

 最終的に全員が希望し、『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』にクラスチェンジしたのである。


 レベル30を超えると、クラスチェンジできるので、そこまでは『ミノタウロスの小迷宮』に連れて行き、一気にレベルを上げてしまったのだ。

 本当はパワーレベリングはあまり良くないというか……もったいないことなのだが、今回はパワーレベリングしてしまった。


 中級吸血鬼になると、『種族固有スキル』で『闇纏い』が身に付くので、太陽光の下でも活動できるようになる。

 その能力を得れば、彼らは太陽光の下でも普通に暮らせるようになるので、クラスチェンジすることを優先させたのだ。

 ケニーが、彼らのことを思って提案してくれたことだった。


 俺はそこまで思いつかなかったのだが、さすがケニーといったところである。

 ケニーはいつでも仲間や関わった人たちについて、親身になって考えてくれるんだよね。

 ほんと仲間全体のお母さん的な感じなのだ。

 怜悧な美人の外見と違って、中身はあったかお母さんなのだ。


 俺はケニーの提案をすぐに許可していた。

 この数日でレベルアップして、みんなクラスチェンジしていたようだ。


 結果論として考えれば、俺の血を飲んで『聖血鬼』になれば、日光が弱点ではなくなるので、無理にレベルを上げる必要はなかったのだが……。

 ただ今後、この世界を生き抜くためには、いずれにしろレベルが高いに越したことはないので、無駄ではなかったと思う。


 そしてキャロラインさんのときもそうだったが、変性してもレベルは維持されるので、『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』として変性すれば、『聖血鬼 ホーリー・ヴァンパイアナイト』になれるのである。


 ちなみに、変性して『聖血鬼』になると、吸血鬼の時に持っていた『種族固有スキル』は使えなくなる。

 そのかわり『聖血鬼』としての『種族固有スキル』が発生する。

 キャロラインさんが変性した後に、改めて『波動鑑定』させてもらって確認している。

『聖血鬼』としての『種族固有スキル』は、現時点では二つあった。

 ちなみに『通常スキル』は、持ち越せていたようだ。

『種族固有スキル』は、以下の二つである。


『献血』——対象者に噛み付き、聖なる血を流し込むことで、対象者の自然回復能力を高める。自然回復能力を高める率は、スキルレベルによる。吸血鬼に対しこれを行うと、毒と同等の効果を発揮して継続ダメージを与えることができる。


 これは、なかなかに凄い能力である。

 一般の人に対して使うと、自然回復能力を高めてあげることができるし、吸血鬼に対しては、専用の毒という特殊な攻撃スキルとなる。

 これは下級吸血鬼に相当する『聖血鬼 ホーリー・ヴァンパイア』の時点で身に付く能力なのだ。


『聖なる翼』——一時的に聖なる翼を得て、飛行することができる。


 これは『聖血鬼 ホーリー・ヴァンパイアナイト』になると身に付く『種族固有スキル』だ。

 キャロラインさんにスキルを使ってみてもらったところ、背中に綺麗な羽が生え飛行できるようになっていた。

 羽は蝙蝠の形の羽だが、真っ白でとても綺麗な羽だった。


 あまりにも羽が綺麗だったので、キャロラインさんを褒めたところ、キャロラインさんは真っ赤になってなぜか俺に抱きついてきてしまった。

 俺は突然のことにされるがままになっていたのだが……

 その後、凄まじいニアの『頭ポカポカ』攻撃、クリスティアさんとエマさんの『お尻ツネツネ』攻撃にさらされてしまった……トホホ。



 俺は無理矢理吸血鬼にされてしまった人たちに、俺の血を飲むことで『聖血鬼』になり、より強化された種族になること、『種族固有スキル』のこと、俺の眷属になってしまうことなどを話した。

 それを納得した上で、希望する者には血を与えるという話をした。


 みんな喜んで希望してくれた。

 俺の眷属になってしまうので大丈夫かと心配したが、助けてくれた恩人だし、ぜひ仲間にしてほしいということだった。

 ただなんとなくだが……俺の仲間になりたいというよりは、ケニーの仲間になりたいというような雰囲気を出していたが……。

 どうも……みんなの世話をしてくれ、かつレベル上げの手配をしてくれたケニーに心酔してるようで、ミノタウロスのミノ太ほどではないが、皆ケニーの部下というか親衛隊みたいな感じになっている。

 レベルが上がって強くなったからか、全員精悍な顔付きになり、規律の取れた騎士団みたいになっているのだ。

 そして、言動がケニーに忠誠を誓っているっぽい感じになっている。

 ケニーさん……やはり凄腕すぎる……。

 この集団……まさかミノ太や『舎弟ズ』みたいな変態にはならないよね……深く考えるのはやめておこう。


 この保護している吸血鬼にされた人たち百五十三人に飲ませる血液は、普通に用意したのでは時間がかかる。いくら俺でも、そんなに無尽蔵には提供できないのだ。

 そこで、自分の血を『波動複写』でコピー生産した。

 百五十三人分作り、早速飲んでもらった。


 全員が無事に、『聖血鬼 ホーリー・ヴァンパイアナイト』になった。


 これでこの地下街に潜む必要もなくなった。

 希望者は元の生活に戻ることもできる。

 ただ俺の眷属になっているので、新しく仲間になった者にするような説明を一通りし、秘密保持も徹底するように頼んだ。


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