430.防衛戦の、あと。

 俺は密かにジョージ君の戦いを見ていたが、凄い戦いだった。


『貝殻ビキニアーマー』も、恥ずかしい装備ではあるが、さすが『伝説の秘宝級レジェンズ』の装備ですごい防御力だった。

 レベル差を全く無視した防御性能だった。

 あの『貝殻ビキニアーマー』をつけている限り、ジョージ君は安全と言えるだろう。

 まぁ違う意味で、メンタルをやられるかもしれないけどね。


 それに『炎盾ホタテ』も素晴らしかった。

 あの纏わりつくような炎はかなり特殊で、防御しながら敵にダメージを与えられる素晴らしい性能だ。

 纏わりつく炎は、継続してダメージを与えるので、相手にとってはかなり嫌な攻撃だろう。


 そしてなんといっても、あのただの冷凍マグロにしか見えない武器……『冷刀レイトウ 真黒マグロ』は、圧巻だった。

 コマンド名とかは……なんかいろいろツッコミどころ満載だったが……さすが『伝説の秘宝級レジェンズ』の武器だった。

 特にあのロボットアニメの最終決戦兵器のようなビット攻撃は、素晴らしかった。

 かっこいいかどうかはともかくとして……俺も少し使ってみたい気がした。

 まぁマグロ頭の攻撃は、かなり気持ち悪かったのでジョージ君が貸してくれたとしても、実際には使う気は無いけどね。

 目からドロドロの液体を出す攻撃なんて……ただのグロテスク映像だったからね。


 今回はマグロの骨の部分が刀になった状態での攻撃は見れなかったが、おそらくあれも凄い威力があるに違いない。


 『魔導の博士』からすべての情報を聞き出す前に、死なせることになってしまったが……やむを得ないだろう。

 まだ『謎の博士』が残っているから、情報自体は『謎の博士』から引き出せるはずだ。


 ただ反省しなければいけないのは、やはりもう少し厳重に対策を取るべきだった。

 急いでいたのもあって、細心の注意が足りなかった。

 今となっては、言い訳でしかないが……。

 改めて考えれば、以前秘密基地『竜羽基地』で吸血鬼たちに尋問したときのように、『隷属の首輪』を使い行動を制限するべきだった。


 今度『謎の博士』を尋問するときは、『隷属の首輪』をはめて万全を期すことにしよう。





  ◇





 俺たちはアジトの探索を一旦終了して、『領都ヘルシング』に戻ることにした。


『魔導の博士』への尋問で、場所の特定ができたヘルシング伯爵領内の新たな三つのアジトについては、『アラクネロード』のケニーと『アメージングシルキー』のサーヤたちが制圧してくれた。

 構成員は多くなかったが、やはり急襲部隊『ブラッドワン』のメンバーで、全員が『中級吸血鬼 ヴァンパイアナイト』だったようだ。

『ドワーフ銀』を打ち込んで、仮死状態にして制圧したようだ。

 囚われている人や、家畜動物などはいなかったらしい。


 仮死状態にした構成員たちは、『謎の博士』たちがいたメインのアジトの吸血用に囚われていた人たちが入れられていた檻にまとめて入れておいた。

 後でゆっくり尋問する予定だ。


 どうも三つのアジトとも、『吸血蝙蝠ヴァンパイアバット』と『吸血ヴァンパイアモスキート』たちを育成することがメインの目的だったらしく、他の用途は見受けられなかったらしい。


  一番最初に訪れたときに壊滅させたアジトと、今回のメインのアジトと合わせると全部で五つのアジトがこの領内にあったことになる。

 メインのアジトは、後で王国やヘルシング伯爵領で調査に入る可能性があるが、他のアジトはおそらく入らないだろうと予想して、ケニーとサーヤに指示をして大きな岩などで入り口を厳重に封鎖してもらった。

 再利用されないようにだ。

 今までの感じからすると、多分俺の方でこれらのアジトを接収してしまっても問題はないと思う。

 だが、勝手にやってしまうのもまずい気がするし、特に使い道も思い浮かばなかったので、現時点ではただ封鎖状態にした。

 もし何か使い道が思いついたら許可を得ればいいし、ヘルシング伯爵領で使う用途があるなら使ってもらえばいいと思っている。



 この領内の各市町を救ってくれた頼もしい仲間たちには、お礼を言って帰ってもらった。

 みんなのお陰で、今回の襲撃によっての死者は出ていないようだ。


 これだけ大規模な侵攻で死者が出なかったのは、本当に奇跡としか言いようがない。

 ピグシード辺境伯領が悪魔の襲撃を受けたときは、考えられないくらいの死者が出てしまっていた。

 二度とあんな光景を見るのは御免だったので、本当に仲間たちに感謝だ。


 落ち着いたら大森林で、みんなで盛大な宴を開きたいと思っている。

 少しそんな話をしたら……『ライジングカープ』のキンちゃんが、めちゃくちゃ張り切っていた……なにか……嫌な予感しかないが……。

 そして『マナ・クイーン・アーミー・アント』のアリリは、喜びすぎてまた産気づいていた……。

 相変わらず、いつも産気づいている。

 今や、アリリの子供たちがすごい数になっている……。

 まぁかわいいからいいけどね。


 それから『サングの街』では、川イルカのキューちゃんたちも救援に来てくれたようだ。

 キューちゃんからの報告によると、『闇影の義人団』のメンバーも、『舎弟ズ』たちもかなり頑張ってくれたようだ。

 嬉しい報告だった。

 そして『植物使い』のデイジーちゃんにも、頼もしい味方が出現したようで、今から会うのが楽しみだ。


 『領都ヘルシング』に残って、警戒をしつつ軍団メンバーを集めてくれていた『エンペラースライム』のリン、『スピリット・オウル』のフウ、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラと、『スピリット・タートル』のタトルから、軍団メンバーの勧誘が終わったという報告も上がっている。


 それぞれ『スライム軍団』は 二十六体、『野鳥軍団』は百九体、『野良軍団』は六十六体、『爬虫類軍団』は八十三体という構成になったようだ。

 面積が広い領都にしては数が少ないが、限られた時間だったし、こんなものだろう。



 俺たちは、これから領城に向うつもりだ。

 領主の妹で『ヴァンパイアハンター』でもあるエレナさんや、親友のキャロラインさんを訪ねようと思っている。

『血の博士』たちによって、実質的に支配されていたヘルシング伯爵領を取り戻すことができたのは、彼女たちが立ち上がったからだ。

 まさに今回の立役者といえる。


 敵は倒したが、領内はまだ混乱が続いているので、手伝えることがあれば手伝おうと思っているのだ。


 領城に連れて行くのは、ニア、リリイ、チャッピー、『ドワーフ』の天才少女ミネちゃん、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃん、第一王女で審問官のクリスティアさんとその護衛官のエマさんだ。


 『ミミックデラックス』のシチミ、『竜馬』のオリョウ、『ワンダートレント』のレントン、『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビー顕現体は、『正義の爪痕』のメインアジトに残って、隠し通路などの探索をしてもらっている。

『魚使い』のジョージ君とその使い魔ファミリア『スピリット・グラウンドオクトパス』のオクティ、虫馬『サソリバギー』のスコピンにもそこに待機してもらって、吸血用に囚われていた人たちの世話をお願いしてある。

 ちなみにオリョウは、保護した同族である『竜馬』やラクダの世話もしてくれている。

 まぁ世話といっても、俺の仲間になった『竜馬』たちに、先輩としてのアドバイスや心得的なものを話しているようだ。

 荷引き動物たちに関しては、いつもオリョウが先輩として張り切って話をするのが恒例になっているのだ。

 そのうち……オリョウの『竜馬軍団』もしくはもっと広げた『荷引き動物軍団』が出来上がってしまうかもしれない……。



 『家精霊』こと『スピリット・ハウス』のナーナと、防衛戦のため応援に来ていた『スピリット・ブロンド・ホース』のフォウは、『領都ヘルシング』の外壁の外側にある荘園の村などに被害がないか調査に行ってくれている。

 もちろん、ナーナ自身でもある『家馬車』をフォウが引くかたちで、調査している。

 これなら怪しまれることはないし、何か聞かれても顕現しているナーナが答えればいいからね。



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