377.基地の、整備。
この『竜羽基地』の北側ブロックを、秘密基地としての機能を集積した場所にするのはいいが、秘密基地の機能といっても、なにがあるのだろう……。
そう考えていると……
「作戦司令室に決まってるでしょ! 秘密基地なんだから、作戦司令室はなきゃダメでしょ!」
ニアがそう宣言して、ドヤ顔で右手を突き上げた!
左手を腰に当てて、右手人差し指を突き上げるといういつもの残念ポーズだ。
作戦司令室とか……また『ライジングカープ』のキンちゃんの『固有スキル』の『ランダムチャンネル』による情報かと思ったが、違ったようだ。
ニアによると、過去の逸話に秘密基地の記述があるそうなのだ。
確かに、ユーフェミア公爵たちも秘密基地というものを知っていたしね。
異世界から転移してきた勇者が、秘密の基地を作って作戦司令部を置いて、人々を救う活動をしていたというもののようだ。
その中で、秘密基地や作戦司令室の描写が激アツらしく、ニアは憧れていたようだ。
だからユーフェミア公爵たちが秘密基地として使うことを提案してくれたときに、あんなに反応していたのか……。
今にしてよくわかった。
その転移してきた勇者の話は、今度ゆっくり聞かせてもらいたい。
前にニアが、伝承や逸話の中に召喚転移した勇者の話や、生まれ変わりでやってくる転生者の話があると言っていた。
秘密基地を作っていたという勇者の話もその一つだろう。
しかし作戦司令室以外に、基地の施設が思い浮かばないのだが……
ニアにも意見を求めたが、特には出なかった。
そこでみんなで相談の結果、訓練施設やドロシーちゃんとミネちゃんの研究室を作ることになった。
研究室はこの『司令本部ブロック』に作って、危険な実験を行う実験室や、大掛かりなものを作る工作室を『格納庫ブロック』に作るということになった。
ちなみに格納庫をメインとした西側のブロックは『格納庫ブロック』という名前になり、居住エリアにする東側のブロックは『居住ブロック』という名前になった。
そして司令本部を置く北側のブロックは『指令本部ブロック』となり、予備の居住ブロックで避難民などの受け入れを想定したエリアにする南側のブロックは『予備ブロック』という名前になった。
そして、秘密の入り口から降りてきて最初にある中心に位置している体育館くらいの大きさの広場は、『センターサークル』という名前になり、食堂などのスペースにすることになった。
なんとなく……大掛かりなフードコートのようなイメージだ。
まぁ現時点では、利用者がないからフードコートもなにもないのだが……。
ということで、俺はまず『センターサークル』に、オープンキッチンを作っている。
『波動収納』に収納してあるものをいろいろ活用し、キッチンを作り上げているのだ。
テーブルと椅子も、ある程度は『波動収納』に入れてあったので、今いる人たちの分は十分にある。
とりあえずは、それを設置する。
テーブルと椅子を設置した時点で、みんなもう待ち切れない感じになっていた。
俺はやむを得ずキッチン作りを一旦中断し、『波動収納』にしまってある食べ物を魔法カバン経由で出した。
我慢させるのは可哀想なので、とりあえずお腹を満たしてもらうことにしたのだ。
取り出したのは、朝食と同じ屋台メニューだ。
本当は肉も焼いてあげたかったが、換気がしっかりできるかわからない。
煙が充満してしまう可能性があるので、煙が出やすい肉は今日のところはやめることにした。
まぁだいぶ広いから充満して、煙いということにはならないと思うが……。
そのかわり、みんなが食べている間に調理台を作って、『ホットケーキ』を焼いてあげることにしたのだ。
ホットケーキなら、煙は最小限だからね。
ミネちゃんは食べたことがないし、喜ばせてあげたいという思いもあった。
ということで、『ホットケーキ』を出したのだが……
やばい……ミネちゃんのフードファイター魂に火をつけてしまったようだ……。
…………もう何枚『ホットケーキ』を焼いたかわからない……。
ミネちゃんが……『わんこそば』状態で『ホットケーキ』を食べてるんですけど……。
そんなこんなで昼食も終わり、クリスティアさんとエマさんを除くメンバーは、秘密基地の整備にとりかかった。
最初に作戦司令室に手をつけたのだが……普通の会議室のようにしかならなかった……トホホ。
やはり大型スクリーンとかがないと、作戦司令室っぽくならないんだよね……。
艦橋ブリッジのような作りにして……できれば椅子が可動式だと更に雰囲気は出るのだが……。
俺が好きだったリアル系ロボットアニメの白い木馬の宇宙船の戦闘ブリッジのように、オペレーターとかが空中可動式の椅子に座ってると、めちゃくちゃ雰囲気が出るんだけどなあ……。
まぁそこまではいかなくても、地球の危機を救うために銀河の果てまで旅をする宇宙戦艦のブリッジくらいの感じは、作ろうと思えば作れるよね。
ただ、やはり大画面のスクリーンがないと、ただの歪なオフィスでしかない。
実際問題……作戦司令室を完成させるのは、だいぶ難しそうだ。
各領主に国王から貸与されているという通信の魔法道具は、音声通信だけでなく画像もあるらしい。
『魔芯核』を大量に消費するようで、気軽に使うことはできないようだ。
『階級』は『
素人考えだが……いろんな魔法というか魔術式・魔法陣を組み合わせれば、何とかなりそうな気もしないではないが……。
ただ俺がマスターしている『秘伝! 魔法の巻物の作り方 初級編』には、載っていなかったけどね。
『ドワーフ』の天才少女ミネちゃんに、俺の要望を話してみた。
「うーん……考えてみるのです。映像と音声を転送することができれば、いいと思うのです。ただそのためには、戦闘の現場の映像を撮影するなにかが必要なのです。いろいろ考えてみるのです」
おお……なんとかなるかも……ダメ元で期待してみよう。
「ニア様が言っていた過去の勇者様の伝説の中で出てきた秘密基地の記述は、私も読んだことがあります。
私の集めている本の中にもあるので、もう一度読み返してみます。なにかヒントがあるかもしれません」
今度は人族の天才少女、ゲンバイン公爵家長女で王立研究所の上級研究員のドロシーちゃんがそう言ってくれた。
ここは、この天才少女二人に大いに期待しよう。
アンナ辺境伯をはじめ他のみんなは、『居住エリア』の整備をしてくれている。
今日と明日で、二泊するからね。
俺は二人の天才少女に要望を一通り説明し終えたところで、ミネちゃんに一つの質問をした。
それは、ミネちゃんから話に出た『魔竹』の生育場所についてだ。
屋台で使う簡易容器をすぐにでも作りたいのだ。
異世界版のプラスチックともいえる製品だ。
土に還る環境にも優しい夢のプラスチックともいえる。
まぁ元の世界にも、土に還る生分解性プラスチックというもの自体はあったけど、一部の農業用資材などでしか普及していなかったからね。
さっき、俺の代わりに『ドワーフ』の里にミネちゃんのことを話しに行ってくれていたサーヤから念話が入った。
ミネちゃんが俺といることを説明しつつ、ミネちゃんが提案してくれたことが問題にならないか確認を取ってもらっていたのだ。
ミネちゃんは善意でいろいろ提案してくれているが、『ドワーフ』族の禁忌に触れるようなことになったらまずいからね。
ミネちゃんは、やはり族長やご両親の制止を振りきって遊びに来ていたようだ。
前回もそうだったらしい。
だが帰ってくると今までになく楽しそうに話をするので、家族としては半ば諦めている状態だそうだ。
サーヤがうまく話してくれたのと、族長たちも俺たちといる分には安全だと思ってくれているようで、今のところは大丈夫なようだ。
あきらめ半ばということもあるのだろうが、ミネちゃんのいい経験になればとも考えているようだ。
そんな中で『魔竹』の話もしてもらい、生育場所を教えてもらってもいいかと確認してもらったのだ。
族長は、全く問題ないと言ってくれたらしい。
それゆえに、ミネちゃんに具体的な場所を尋ねているというわけである。
ミネちゃんによると……その場所は、驚くことにピグシード辺境伯領の東地方の『タシード市』と東端の『トウネの街』の中間のエリアだった。
そこの山林の一部に『魔竹』が自生しているようだ。
つまりは、その場所には魔素が多いということなのだろう。
そしてその場所は……『ミノタウロスの小迷宮』のミノショウさんが教えてくれた『テスター迷宮』の姉妹迷宮がある可能性があるエリアの一つだった。
今のところ、その場所もそこを南に下ったセイバーン公爵領内のもう一つの候補地も、周辺調査中のスライムたちからは、発見の報告は上がっていない。
まぁ人の気配もないということだから、『正義の爪痕』に利用されている可能性も低いので、焦って探してはいなかった。
ほとんど放置状態だったのだが……
いい機会なので、ついでに迷宮も探索してこようかと思ってる。
『魔竹』が生育しているところは魔素が多いところだから、近くに迷宮が作られていてもおかしくはないと思うんだよね……。
というか……ある予感しかしない……。
そんなに都合よく見つかるかどうかは別にして、本気で探してみよう。
明日の早朝、一人抜け出してさっと確認してこようと思っている。
『魔竹』だけでなく、『テスター迷宮』の姉妹迷宮が見つけられたら、儲け物だ!
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