348.武器の博士の、コレクション。
第一王女で審問官のクリスティアさんの報告は、終わったかに思えたが、まだ残っていた。
『武器の博士』についての報告をしてくれるようだ。
そういえば今までの報告は、ほとんど『薬の博士』に関するものだった。
どうも『武器の博士』は、俺に対してビビっていて、まともに相手しなかったせいで印象が薄いんだよね。
とはいえ……彼女も四博士の一人だし、組織の幹部だからね。
それにあの『ナンネの街』襲撃事件の首謀者だからね。
『武器の博士』は、『道具の博士』が捕まったが生きていると思い込んでいたようだ。
それで奪還をするために、単独で作戦を開始したらしい。
その背景には……なにか特別な武器の製造を依頼していたというのと、『土使い』のエリンさんの力があれば『ナンネの街』を一気に制圧できるし、『領都』に極秘に潜入して奪還もできるという目論見があったようだ。
一つの街の地下丸ごとという最強のアジトを作るために、『ナンネの街』を手に入れるつもりだったようだ。
そして次は『領都』をも、手中に収めることを目論んでいたらしい。
事実、一瞬にして『ナンネの街』は制圧されてしまったわけだけど……。
ただその後は、俺たちによって奪還され、無残にも計画は頓挫したわけだ。
計画では『ナンネの街』の地下に、そのまま巨大なアジトを形成し勢力を拡大する予定だったらしい。
したがって、主戦力である急襲部隊の『ソードワン』のほとんどの人員を投入してしまったのだそうだ。
これにより、ほとんどの戦力を失ってしまったわけだ。
ただ失った理由は、『武器の博士』自身が改良型の『死人薬』を起動させ、構成員たちを死人魔物にしてしまったからなわけで、自業自得だ。
というか……人を人とも思わない非道な行い以外の何物でもない。
ちなみに、少し気になったので、この幹部である二人の博士が今後どうなるのか聞いてみたら……
十分な尋問の後に、犯罪者として公開処刑される可能性が高いとのことだ。
今まで踏みにじってきた命を考えれば、当然だと思う。
ただ、彼らが作り出してきた薬の対抗薬などを作るために、協力させる可能性もあるらしい。
彼ら自身が一番の知識と技術を持っているから、それを役立てるという判断をするかもしれないとのことだ。
もっとも、それをしたからといって、刑が軽くなるわけではないらしいが。
クリスティアさんは、『武器の博士』の『アイテムボックス』スキルから押収した武器のコレクションについても報告を上げてくれた。
しっかり目録を作ってくれたようだ。
結構いろんな武器があったらしい。
『武器の博士』のコレクションだけに、結構掘り出し物があるんじゃないだろうか……期待できる!
早速見てみよう。
まずは大剣が二本ある。
これはおそらく、『武器の博士』が領城を襲ったときに使っていたものだろう。
確か……大剣の剣先から魔力弾を連射させていた。
『名称』が『魔剣 ハウリング 右牙』となっていて、『階級』が『
もう一本も『名称』が『魔剣 ハウリング 左牙』となっていて、『階級』が『
どうやら二対で一組の魔法剣のようだ。
それぞれ単体で使っても、切れ味鋭く、大剣の強みでもある破壊力に優れた剣のようだ。
そして剣先からは、魔力弾を連射できるという優れた特性を持っている。
この時点で、反則級の性能だ。
二本セットで使うと、もっとすごいらしい。
共鳴現象を起こさせ、衝撃波を出したり、超音波攻撃をしたりという使い方ができるようだ。
ただクリスティアさんの見解では、かなり優れた剣士でなければ、使いこなせないのではないかとのことだ。
二刀流でかつ優れた剣士となると……かなり使い手を選ぶ剣といえるかもしれない。
場合によっては、息の合ったコンビ二人で使いこなすというやり方もあるかもしれないとクリスティアさんは言っていた。
昔の英雄譚の中には、二人一組で連携して戦う剣士の逸話などもあるそうだ。
逆にその使い方が、本来の使い方という可能性もあるかもしれないね……。
大剣の二刀流なんて……普通では考えられないからね。
逆にそれをやっていた『武器の博士』は、やはりハイレベルの剣士であることは間違いないようだ。
ただ、クリスティアさんの尋問によれば、『武器の博士』はまだ使いこなすまでには至っていなかったようだ。
確かに強力な攻撃が使えたなら、あの『ナンネの街』の襲撃事件のときに使っていたはずだからね。
訓練中だったのかもしれない……。
そしてこの魔法剣は、『血の博士』から与えられたものだったようだ。
それゆえに、『武器の博士』にはどこでどのようにして入手したのかは、わからないらしい。
『武器の博士』のコレクションの中で、 一番『階級』が高いのはこの大剣だったようだ。
他の武器も、なかなかにすごい。
『
『
『
コレクションだからか、階級の高いものだけに絞ってあったのだろう。
ちなみにこれらは全て、戦利品として俺に与えるとのことだった。
やはり一次的な判断権限は、アンナ辺境伯にあるので問題ないそうだ。
明らかに『正義の爪痕』で製造されたものでない限りは、功労者に戦利品として与えるのは当然の判断とのことだ。
『武器の博士』を名乗るほどの人間のコレクションだけに、なかなかに興味をそそる。
あとでゆっくり確認することにしよう。
俺は、ありがたく頂戴することにした。
ただ、もしアンナ辺境伯たちが欲しい武具あれば、言ってほしいという話だけはしておいた。
もっとも以前と同様に、『フェアリー商会』から納入した『マグネ一式シリーズ』の武具で十分と考えているようだが。
これで、クリスティアさんからの報告は終了したようだ。
まだまだ引き出すべき情報がたくさんあるので、引き続き尋問を続けてくれるとのことだ。
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