337.ナビー、顕現!

顕現誘導リアルナビ!」


 俺は早速、『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのサブコマンドを発動させた。


 体からなにかを引き抜かれるような……不思議な感覚が、ほんの一瞬あった。


 だが次の瞬間には、目の前に……ナビーがいた!


 いつも脳内映像で見ていた……タイトなスカートのビジネススーツに身を包んだメガネ美人だ!

 黒髪を後頭部でまとめて、アップにしている。

 できるキャリアウーマンの雰囲気が滲み出ている……メガネも少し鋭角だし。

 そしてなぜか……手にはバインダー式ファイルのような……情報端末のような……そんなものを持っている。

 ……完全に俺がイメージする秘書の姿そのものだな……

 というか……俺のこのイメージのせいでナビーの姿ができているんだよね……。

 そして異世界には……あまりにもミスマッチな姿だ……。

 この件をあまり考えていると……ナビーにディスられそうだから、思考はここで止めておこう。


 顕現した当のナビーは、一瞬驚きを浮かべていたが、すぐに自分の手足を触って感触を確かめている……。

 そして……かなりニヤけている……。

 あのナビーがニヤけているなんて……レアすぎる!


 こう見るとナビーって、綺麗かわいい感じだ……。


「ナビー、実際に会えるなんて、嬉しいよ! ナビーに触れることができるなんて……思いもしなかった!」


 俺はそう言って、ナビーに近づいて右手を差し出した。


 俺の声に我に帰ったかのように、ナビーはいつも美人顔に戻った。


「これで、よりマスターの役に立てます。仲間たちとも、一緒に活動できるようになります! 素直に……嬉しいです! ただ……マスターの最後の発言は……かなりのセクハラ発言に認定される可能性があります。注意してください。そして……万が一にも触らないでください!」


 ナビーは、にこやかに微笑みながら俺と握手をしたのに……最後には結構きついこと言った……トホホ。


 まぁそれでこそナビーだけどね……。

 ドSもナビーの魅力のうちかな……と考えてしまう俺って……かなりやばい方向に向かっている気がする……いかんいかん!


 ニア、リリイ、チャッピー、サーヤを始め仲間たちもみんな驚いていたが、俺の分身体のようなものだし、最近では念話でそれぞれコミニケーションをとっていたから、皆一様に喜んでくれた。


 そして俺に接するのと同じように……というかそれ以上に親しみを込めて、ナビーに接してくれている感じだ。


 ナビーも驚くほどハイテンションな感じになっていて、リリイ、チャッピーを始め仲間たちを何度も抱きしめていた。

 俺には触れるなとか言ったくせに……まぁいいけど。


 大精霊ノームのノンちゃんも、とても喜んでくれていた。


 なぜか……途中からナビーが仲間たちを『抱っこブンブン』状態にしていた。

 俺はノンちゃんとリリイとチャッピーにしかやっていなかったのだが……ナビーは全員にやっている…。

  大きめの猫サイズのトーラや陸ガメサイズのタトルぐらいまではわかるが……自分より大きな『竜馬』のオリョウをお姫様抱っこしてブンブンさせていたのには驚いた。

 というか……なんのこっちゃ! ドンダケ怪力なわけ……?

 まぁ俺と同じステータスだから、できて当然だけど……。


 そしてなぜか……大人サーヤやエリンさんまで、お姫様抱っこしてブンブンしちゃってたし……。

 ナビー……男前すぎるだろ!

 なぜサーヤとエリンさんが、それを求めたのかも全くわからないが……。

 こんな既成事実を作られて……今後俺に求められたら、断れないじゃないか……。

 まぁそんなことにはならないと思うが……。


 そしてニアさんは……ただ掴まれて振り回されているだけのように見えたが……本人がゲラゲラ笑っていたので、満足しているのだろう。


 なんとなくこう見ると……俺の分身のような存在とはいえ、俺に対するよりもナビーに対する方が、みんな接しやすいのだろうか……ちょっと自信をなくすわ……まぁいいか……。


 てか……ナビーって、俺にだけきついようだ……他のみんなには優しいらしい……トホホ。



 ちなみにナビーを顕現させるのに、俺の限界を突破した膨大な魔力を、なんと二割以上も消費してしまった。

 普通のステータスだったら、かなり厳しかったと思う。

 ナビーの顕現状態を維持しているだけでも、それなりに魔力を消費する。

 俺は魔力の自然回復量もかなりの量なので、魔力切れになるということはないだろうが、常時、顕現状態にするのは大変かもしれない。

 まぁ少なくとも寝ているときは顕現を解除すればいいし、日中もフルで顕現状態でなくてもいいだろうけどね。

 ナビーが顕現して別個体になっても、念話で意思疎通できるし、今まで通り自問自答もできる。

 ただ……なんとなくレスポンスが遅いような感じはする……。

 大きな支障というわけではないが、重要な局面ではナビーに戻ってもらった方がいいのかもしれない……。

 その辺も含めて、これから訓練と検証を重ねていくしかないね。


 ノンちゃんが少し教えてくれたのだが、ナビーの顕現は『土使い』のエリンさんが身に付けた極上級土魔法の『リアルゴーレム召喚』と同様の原理で機能しているようだ。

 スキルの力で、万物の元である霊素をイメージに沿って構築しているのだそうだ。

 よくわからないが……霊素は万物の元だけに、どんなものにもなるようだ。

 ナビーは、顕現体としての人間の体も、衣服などもすべて霊素を元に作り出していることになるらしい。

 ただ、これをスムーズに行うには、精錬されたれ霊素である『精霊』の力が不可欠で、『精霊』に愛されていないとスキルが使えないとのことだ。

 エリンさんは、『大精霊ノームの加護』を得たことによって、『土使い』スキルの中にコマンドとして『リアルゴーレム召喚』が発生したというわけだ。

 ノンちゃんの加護がなければ……『土使い』スキルだけでは、『リアルゴーレム召喚』は使えなかったのだろう。


 俺はもともと『精霊の加護』を持っていたから、スキルレベルが上がればこのサブコマンドが発生していたとは思うが……。

 そもそも……スキルレベルが一気に2レベルも上がったのはノンちゃんのお陰だし、今回ノンちゃんがつけてくれた『大精霊ノームの加護』のお陰で、『土魔法——土の癒し』も使えるようになった。

 やはりノンちゃんに大感謝だね!

 ナビーが顕現して独自に活動できるということは、俺にとっては超絶パワーアップだからね!



 ニアなんか……ナビーが、レベルもステータスもスキルも俺と同じだと知って……呆れ顔になった後に、猛烈なジト目を向けてきたからね。


 そして……


「やっぱりグリムって……COCね……まったく、このチートオブチート! ……もう考えるのが馬鹿らしくなってきた……」


 と吐き捨てるように言っていた。 


 喜んでいたはずなのに……なぜに不機嫌になるのよ……トホホ。


 そして久々にCOC発言が出てしまった……CEOみたいな感じで、『称号』についちゃうと嫌だから、本当にやめてもらいたい……。

 ただでさえ商会の会頭をやっていて、CEO(最高経営責任者)みたいなポジションなんだから……ややこしいわ!

 CEOならまだしも、COC(チートオブチート)なんて『称号』は、絶対にイヤだ!


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