335.ノームの、加護。
「グリム君のところに四人も『使い人』が集まっているのは、ありがたいことなのじゃ! 必然かもしれぬのう。グリム君自体が、この時代の一番の不確定要素じゃからのう……」
今度はノンちゃんがそんなことを言った。
やはり大精霊だけに、俺の限界突破をしたレベルとステータスのことは把握しているのだろう。
「私が……不確定要素とは……」
「それはのう……ワシにもわからんのじゃ。まぁそれゆえに、不確定要素なのじゃが……。まぁあまり気にすることはないのじゃ。おぬしは、この世界で好きなように生きればいいのじゃ。そんなことよりも、『土使い』の娘を呼んでくれんかのう。加護を授けてやりたいのじゃ」
おお……ノンちゃんがエリンさんに加護を授けてくれるのか!
俺はすぐにサーヤに念話を繋ぎ、『土使い』の女性エリンさんを転移で連れてきてくれるように頼んだ。
『正義の爪痕』のアジトだった洞窟の入り口の船着場に、飛竜船が置いてある。
飛竜船には『家馬車』がセットしてあるので、そこまでは転移で来れるはずだ。
しばらくすると、サーヤから飛竜船の『家馬車』のところに着いたと念話が入った。
「仲間から『土使い』のエリンさんを連れてきたと連絡が入りました。洞窟の入り口のところまで、迎えに行ってきます」
俺はノンちゃんにそう告げたのだが、ノンちゃんはかぶせるように言った。
「大丈夫なのじゃ! 洞窟の入り口あたりもワシの支配領域じゃから、自由に転移させられるのじゃ!」
ノンちゃんがそう言い終わると、サーヤとエリンさんが現れた。
突然転移させられて、サーヤとエリンさんは驚いている。
「ワシは、大精霊ノームなのじゃ。『土使い』の娘よ。ワシが加護を授けるのじゃ! これでおぬしは、より強くなれるのじゃ。『土使い』のスキルの力を引き出すことができるのじゃ!」
ノンちゃんはそう言うと、エリンさんに向けて右手をかざした。
エリンさんは驚き呆然としていたが、この空気を読んですぐに跪いて頭を下げた。
ノンちゃんの右手から光が放射され、エリンさんが優しい光に包まれた。
その光は、徐々にエリンさんの体に吸収され消えてしまった。
確認のためエリンさんに『波動鑑定』をかけると……『称号』の欄に『大精霊ノームの加護』が追加されていた。
「ノーム様、ありがとうございます。私は……これからどうすれば、よろしいのでしょう?」
エリンさんはノンちゃんに礼を言うとともに、少し不安げな表情になった。
「エリンちゃん、よろしくなのじゃ! エリンちゃんもワシのことは、ノンちゃんと呼ぶのじゃ。エリンちゃんは、自分で考えて、やりたいことをやればいいのじゃ! ワシは一緒に行動することはできぬのじゃが、ワシの加護が常にエリンちゃんを守るのじゃ!」
ノンちゃんはそう言いながら、跪いているエリンちゃんに近づいて抱きしめた。
ただノンちゃんは五歳くらいの小さい子なので、抱きしめたというよりはお母さんに甘えているようにしか見えない……。
二十歳のエリンさんだが、大人びていて二十代後半に見えるので、十分親子に見えてしまうのだ。
「はい。私は二度と、この力を悪用されないように……人を助けられるように、強くなります!」
エリンちゃんは、ノンちゃんを抱き返しながら力強く宣言した。
「それは、よきことなのじゃ! 力を悪用されぬよう、自分の心で力の使い道を決めるのじゃよ」
「はい。グリムさんのもとで精進いたします!」
「『土使い』スキルは、土属性の魔法を使いこなせる特別なスキルなのじゃ。最初からスキル内コマンドとして上級土魔法の『ゴーレム創造』が使えたのは、そのためじゃ。ワシの加護により『リアルゴーレム創造』というスキル内コマンドが増えているはずじゃ。これは同名の土魔法と全く同じものじゃ。『リアルゴーレム創造』は、極上土魔法なのじゃ! 『ゴーレム創造』で作る通常の泥人形型のゴーレムと違い、普通の生物に見えるゴーレムが作れるのじゃ! まぁ魔力消費が激しくて、通常は一体しか稼動できぬと思うがの。とはいえ、リアルゴーレムは高性能ゆえエレンちゃんの『
ノンちゃんが鼻息を荒くしながら、胸を張って説明をした。
すごい……加護のおかげで『土使い』スキルの中に、コマンドが増えたなんて……
しかも話を聞く限り……めちゃめちゃ凄い機能じゃないか……。
どうも『土使い』というスキルは、土魔法に属する魔法が、スキル内コマンドとして使えるようになるスキルらしい。
もし全ての土魔法がスキル内コマンドとして使えたら、凄いことになりそうだ。
「あ、ありがとうございます。嬉しいです! あ、あの……使ってみてもいいでしょうか?」
エリンさんは嬉しそうな笑顔を作った後、そう申し出た。
「もちろんなのじゃ! コツは具体的にイメージすることなのじゃ。人でも動物でも具体的にイメージできれば、どんな生物でもリアルに構築できるはずじゃ。もっとも人型にするのが、一番汎用性が高いと思うがのう」
「わかりました。やってみます! ……リアルゴーレム創造!」
エリンさんはそう言うと、目を閉じた。念じているのだろう。
……すると、彼女の周囲に風が巻き起こり、茶髪のロングヘアーが風にたなびいた。
スラッとした知的美人のエリンさんが風にあおられると、なんか妙にかっこいい感じだ。
そしてエリンさんの目の前には、犬がいた!
なんか……シェパード犬に似ている。
色は真っ白だけど……大きさも形もシェパード犬そっくりだ!
警察犬のドラマなんかで、好きだったんだよね……。
モフモフな感じだし……ちょっとうらやましい……。
「うっひょう! 犬なのじゃ! 人型を勧めたつもりだったのじゃが……まぁいいのじゃ」
「す、すみません。つ、つい……子供の時に飼っていた犬を思い出してしまって……」
エリンさんが頬を真っ赤にして、ノンちゃんに謝った。
「別に謝る必要はないのじゃ。エリンちゃんが望む形が一番なのじゃ。常に魔力は消費してしまうが、常時発動させておくこともできるのじゃ。もう一人の自分のような存在じゃから、良き相棒となるじゃろう。名前は、なんというのじゃ?」
「カールです」
「良き名じゃ。このカールのレベルは、術者であるエリンちゃんと同じになる。精進するのじゃ!」
「はい!」
エリンさんは、ノンちゃんに頭を下げた。
そして目の前にいる犬型の『リアルゴーレム』のカールに抱きついた。
カールは、ちぎれそうなほど尻尾を振りまくっている……本物の犬にしか見えない……。
おそらく……エリンさんの記憶が、そのまま反映されているのだろう。
俺は近づいてエリンさんに声をかけた。
「エリンさん、よかったね。他の『使い人』の子たちと同じように、エリンさんにも素敵な仲間ができて、俺も嬉しいよ!」
「はい。ありがとうございます。すべてグリムさんや、お仲間の皆さんのおかげです」
「ちょっと! エリンちゃん、もう私たちの仲間なんだから、そんな水臭い言い方しちゃダメよ!」
そう言いながら、ニアが飛んできた。
「はい。ありがとうございます」
「と、ところで……エリンちゃん、私もカールをモフモフしてもいいかしら?」
ニアは頬を緩めながら、エリンさんに尋ねた。
どうやら考えていたことは、俺と同じだったようだ。
エリンさんが微笑みながら頷くと、ニアは速攻でカールの背中にダイブした!
俺もカールを撫でさせてもらう。
おお……完全に普通の犬と同じだ。
モフモフで可愛いい……。
「カールは、本物の犬さんなのだ! かわいいのだ!」
「トーラと同じくらいモフモフなの〜。トーラとカールに挟まれたいなの〜」
リリイとチャッピーもすぐにやってきて、モフモフを楽しんでいた。
他の仲間たちも楽しそうに周りを取り囲んでいた。
そして最終的には……ノンちゃんがカールの背中に乗って、走り回って大はしゃぎするという状態になっていた……なんでこうなった?
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