331.入り口は、意外な場所に。
「あーあ……本当にここには、なにもないのかしら……」
魔法カバンから出てきた宝箱の大量の金貨を見て、一瞬テンションが上がっていたニアさんだが、やはり遺跡の新たな発見がないのは納得できないようだ。
確かに……俺もなにか……腑に落ちない感じがあるんだよね……。
『財宝発掘』スキルが疼くような感じもあるし。
俺はナビーのアドバイス通り、財宝に焦点を当てて『波動検知』を使ってみることにした。
『財宝発掘』スキルが連動してくれることを願いつつ……
………………………………
…………ん……なにかわからないが……なんとなく下のほうに、なにかある気がする……
待てよ……
今まで俺が見つけた遺跡といえば……『テスター迷宮』の姉妹シリーズの人造迷宮だけだけど……
全て地下が主体だった……。
地上部分は、おまけ的というか……破壊されていて……それでも迷宮自体には大した影響はないようだった。
そう考えると、このアリの巣状の遺跡のような場所にも、地下部分があってもおかしくないのではないだろうか。
切り立った崖の上に立てば、ここは地下ともいえるが、入り口に面している川から見れば地上部分ともいえる。
やはりもっと地下に、なにかあるのではないだろうか……。
「もしかしたら、地下になにかあるかもしれない!」
俺がそう言うと、みんなの目がキラリと光った。
「え、ほんと! どこ? どこ? どこにありそう?」
「すぐ行きたいのだ!」
「チャッピーも行きたいなの〜」
ニア、リリイ、チャッピーのテンションが急に上がった!
「入り口はわからないんだけど……なにか下にありそうなんだよね……。まずは一番下の場所に移ろう。ここは、かなり上の方だから」
俺はそうみんなに声をかけて、すぐに移動した。
そして一番下の場所まで行ったのだが……入り口らしきものは見つからない。
まぁそんなに簡単に見つかるようなら、とっくに『正義の爪痕』が見つけているわけだから、いちいち落ち込んでいるわけにはいかないが……。
俺はもう一度、『波動検知』で財宝に焦点を当てて探ってみる……
………………やはり下の方になにかありそうだけど……。
入り口らしきものはないか探しながら歩いていると、入り口の船着場みたいになっている場所まで戻ってきてしまった。
すると、入江からイルカたちが顔を出した。
(この下に水路があって、その先にも入江と陸地があります!)
突然そう教えてくれた。
『絆通信』のオープン回線を、イルカたちには繋いでいなかったはずだが……
なぜか俺たちが、新たな遺跡の入り口を探していることを知っていたようだ。
イルカにはなにか……テレパシーのような力があるのだろうか……。
それにしても、非常にありがたい情報だ。
イルカたちがいなかったら、知る由もない場所だからね。
入り口が水の中にあるなんて、普通は思い付かない。
まぁまだそこにあると決まったわけではないが……。
すぐに確認することにしよう。
(そこに行ったことはあるのかい?)
(はい。一度行ったことがあります。中もここと同じような構造で、水に満ちた入江と陸地の空間があります。そしてなぜか昼のように明るかったのです。入江の部分には特に何もなかったので、すぐに戻りましたが……)
ほほう……やはりかなり確率の高い情報のようだ。
(そこには、陸地が広がっている感じだったかい?)
(はい。そう見えました)
(案内してくれるかい?)
(もちろんです!)
俺は、早速イルカの背に乗って行ってみることにした。
まず俺が行ってみて、問題がなかったら念話することにした。
その後みんなもイルカの背に乗って、きてもらうことにする。
俺はイルカの背に乗り、水中に潜った。
この入江の下方には、確かに大きな水中トンネルがあった。
ただ大きなトンネルといっても、大型船が通れるほどのサイズではない。
もっとも、大きさが充分だったとしても、完全な水中トンネルなので潜水艦でもない限り通れないけどね。
そしてその水中トンネルをしばらく行くと、突然入江が広がった。
確かに先ほどいた船着場と同じように、入江と陸地の空間が広がっている。
そして外の光は届かないはずなのに、なぜか明るい。
この場所は、さっきいた場所よりも下にあるはずだ。
本来なら水がもっと入ってきて、空間全体が水で埋まるような気もするのだが……そうはなっていない。
潜ってきた水中トンネルは、緩やかに下に降っていて、最後にはこの入江と平行になって繋がっているようだ。
普通ならどう考えても水が押し寄せてきて、水に飲み込まれると思うのだが……
謎の明るさと同じように、なにかの力が働いているのだろう。
『ミノタウロスの小迷宮』も地下なのに、外と変わらない明るさがあった。
なんとなく……ここも迷宮なのではないかという気がしてくるが……
とりあえず俺は陸地部分に上陸して、周囲の様子を窺った。
やはりアリの巣状の構造をしているようだ。
だが特に人の気配もないし、魔物などの気配も感じられない。
今のところ、危険はなさそうだ。
そして『正義の爪痕』も、ここは発見できていなかったようだ。
一応の安全が確認できたので、俺はみんなを呼ぶことにした。
ここまで来るのに、かなり息を止めていたと思うので、普通の人間のレベルはきついかもしれない。
だが、レベルアップしてる仲間たちなら、多分大丈夫だと思う。
俺は仲間たちに今の状況を伝え、長い時間息を止めてないといけないことも伝え、イルカと一緒にくるように伝えた。
そしてイルカたちには、できるだけスピードを出して早く着いてくれるようにお願いした。
息を止めている時間を、少しでも短くしてあげたいからね。
少し待っていると、みんなイルカたちともに無事に着いた。
そしてニア、リリイ、チャッピーはワクワクが止まらないという顔をして、鼻息を荒くしている。
シチミ、オリョウ、タトル、トーラも楽しそうないい顔をしている。
よし! じゃあこれから、本格的な洞窟探検と行きますか!
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