329.アジト、探索。
俺は『薬の博士』のアジトに戻ってきた。
改めてこのアジトの洞窟を、隅々まで調べることにした。
メンバーは、俺、ニア、『ミミックデラックス』のシチミ、『竜馬』のオリョウ、リリイ、チャッピー、『スピリット・タートル』のタトル、『スピリット・ブラック・タイガー』のトーラだ。
ちなみに『スピリット・オウル』のフウには、上空から怪しい動きがないか監視してもらっている。
もしかしたら近くに『正義の爪痕』の構成員がいて、奪還などに向けて動き出すとも限らないからね。
このアリの巣状の遺跡は、複雑な構造になっているので、俺たちは二手に分かれて探索することにした。
俺が『波動検知』をかけて拾える情報を拾い、『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーが、『絆通信』のオープン回線を通じて皆に位置情報などの指示を出すことにした。
このやり方で探索を進めるのが、一番効率的だと思う。
明確なマップ機能ではないが、ナビーがそれっぽいことをしてくれるのでこのやり方ができるのだ。
ニア、シチミ、オリョウの一番隊メンバーと、俺とリリイ、チャッピー、タトル、トーラの二番隊メンバーの二手に分かれることにした。
◇
一通りの探索を終えた俺たちは、二人の博士たちがいた中央付近の大きな広場に戻ってきた。
かなり奥まであったが、特に新たな発見はなくアリの巣状の空間が広がっていただけだった。
なにか……釈然としないものがあるのだが……
ニアも新しい発見を期待していたようだが、特別なものはなにも見つけられず、がっくり肩を落としている。
まぁ俺たちが普通に探して見つかるぐらいなら『正義の爪痕』が見つけているだろうから、簡単に見つかるはずもないのだが……。
というか……もしかしたら既に『正義の爪痕』は、なにかお宝的なものを見つけているかもしれない。
という話を俺がすると……ニア、リリイ、チャッピーは目を輝かせて、この広場に面した倉庫らしき場所に入り、いろいろあさり出したのだが……特別なものはなかったようだ。
ただこの倉庫には、長期保存できる大量の食料があった。
麦類が中心ではあるが、芋類やカボチャやウリ系の野菜が数多くあった。
かぼちゃなども俺が種を持っていない種類なので、少し嬉しい発見だった。
またリンゴとともにパイナップルもあり、これまた嬉しい発見だった。
もっと詳しく確認すると、面白い食料や種子などが発見できるかもしれない。
まぁあとで、ゆっくり確認することにしよう。
落ち着いたら、アンナ辺境伯にお願いして、珍しい野菜、果物、種については分けてもらうと思っている。
なんとなく俺の功績として、全てもらえそうな気もするが……
一応は証拠品という意味もあるし、提出するべきものだと思う。
『道具の博士』のアジトだった『アイテマー迷宮』でやっていたような、家畜の飼育や魚貝類の養殖はやっていないようだ。
おそらく川から魚貝類が取れるので、それを食料にしていたのだろう。
野菜や果物なども豊富にストックされていたので、定期的にどこかから船で調達していたのかもしれない。
その際、ある程度の肉類なんかも入れていたかもしれない。
さすがに生肉は残ってはいなかったが、干し肉はかなりの量が備蓄されていたからね。
そう考えると、この近くに協力する組織か、別のアジトがある可能性もある。
このアジト自体がかなり広いので、まだなにかが隠されているかもしれない。
見つけられていないだけかも……。
『正義の爪痕』がこの場所を発見したときに、もしお宝的なものを発見していたとしたら、既にどこかに持ち出したのかもしれない。
もしくは、各博士の個室に隠されているのではないかと思う。
もう一度探してみよう。
まずは『武器の博士』の個室だ。
だが、特に新しい発見はなかった。
まぁ『武器の博士』は『アイテムボックス』スキルを持っていたので、重要なものは『アイテムボックス』に入れていたのだろう。
領城に連行したときに、全て取り出させた。
武器などを隠されていたら、尋問のときにクリスティアさんたちが危険にさらされる恐れもあったからね。
『武器の博士』は、俺をひどく恐れていて、素直に全部『アイテムボックス』から取り出してくれた。
少ししか威圧はしていない……少ししか……。
『武器の博士』は、やはりかなりの武器マニアでいろいろな武器を持っていた。
細かくは見ていないが、この辺の目録作りもクリスティアさんたちが行なってくれるとのことだ。
あとでゆっくり確認しようと思う。
『薬の博士』については、『アイテムボックス』スキルを持っていなかったので、重要なものはこのアジトの博士の部屋にあると思うのだが……
研究記録や覚書みたいなものや、それなりの道具類はあるのだが……特別なものはない感じだ。
ただ『薬の博士』ほどの幹部なら魔法カバンを持っているのが普通だと思う。
現に『道具の博士』は、魔法カバンを持っていたからね。
だが……この部屋には魔法カバンらしきものはない……。
でも……なにか釈然としない……。
(ナビー、他に『正義の爪痕』の構成員や二人の博士たちが、隠しているようなものはないかな?)
困った時のナビー頼み! 俺は『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーを頼った。
(確かに……『薬の博士』ほどの幹部が、魔法カバンを所持していないというのは不自然です。魔法カバンに焦点を当てて『波動検知』をしてみてはどうでしょう? もしどこかに隠しているのであれば、検知できる可能性もあります。また漠然としすぎていて、検知できるか分かりませんが、財宝に焦点を当てて『波動検知』をかけてみてはどうでしょう? もしかしたら『財宝発掘』スキルの影響を受けて、検知できるかもしれません)
ナビーが、そんな提案をしてくれた。
……なるほど……。
今までそんな使い方はしたことないし、考えてもみなかった。
魔法カバンに焦点を当てるのは具体的だし、イメージできる。
なんか……探せそうな気がしてきた。
そして、もし財宝という漠然としたものでも、『財宝発掘』スキルとのコンボで『波動検知』できたら、滅茶苦茶すごいんだけど……。
それもこの際だから試してみよう。
さすがナビーだ……。
まずは、魔法カバンを探してみる。
仲間たちの持っている魔法カバンは、普段は『共有スキル』の『アイテムボックス』にしまってあるので、検知されることはないだろう。
波動検知……魔法カバンに焦点を当てて……
…………………………ん……あった!
ここは……
『薬の博士』の部屋の床の下から感じられる……。
どうも床に隠しスペースがあるようだ。
魔法カバンが隠されている場所はわかったが……床をいくら叩いても蓋や扉のようなものがない。
隠し空間があるようだが、扉が全くわからない……。
(ナビー、なにかいい方法があるかな?)
俺は、困ったときのナビー頼みをすることにした。
(分りません。最悪は『魔剣 ネイリング』で床を切り取るしか……。ただ、慎重にやらないと魔法カバンまで破壊してしまう可能性もあります。もしかしたら……床や隠し扉が魔法道具のような構造になっている可能性もあります。魔法のカバンがあると感じられる場所の床に手を当てて、魔力を流してみてはどうでしょう? 今のマスターならできるはずです)
おお……ナビーが認めてくれた。
やってみるか……。
実は俺は、なんとか魔力調整ができるようになったのだ。
みんなと『ミノタウロスの小迷宮』で合宿をしている間、俺は魔力調整の特訓をしていたのだ。
その努力の甲斐あって、ある程度の調整はできるようになったのだ。
リリイやチャッピーのように精密な調整は、まだできないけどね。
俺は床に手を当てて、最小限の魔力をイメージして流してみる……
すると……
床が一瞬光り、床板がガタガタ振動をはじめた!
……あれ……やばいかも……
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