292.魔法で、建築。
ミリアさんとの打ち合わせを終えて、俺はすぐにサーヤとともに大森林に転移した。
『家魔法』で、大きな屋敷を作る練習をするためだ。
俺は、早速試してみることにした。
大森林の広場にある俺の家の近くに、新しいスペースを作った。
もし上手く出来たら、そのまま大森林の屋敷にしてもいいと思っている。
サーヤも言っていたが、一般的な家ならともかく、大きなお屋敷を魔法で作り出すのは中々に難しいようだ。
全ての部屋をイメージできていないと、作り出せないからね。
部屋数が多いと言うだけで、かなり大変になるのだ。
俺は必死で、『マグネの街』の守護の屋敷を思い出し……イメージをする。
「
———ズズズズズッ
———ポンポンポンッ
おお! 巨大な屋敷が出現した!
魔法自体は、問題なく使えたようだ。
やはり……かなりの魔力を消費する。
そして……残念ながら失敗だったようだ……。
魔力調整が上手くできていなかったらしく……超巨大サイズの屋敷が出現してしまった。
最小限の魔力でやったつもりなのだが…………。
三階建てなのに……三十メートルくらいの高さになっている。
巨人が住めるような家になってしまった……。
まぁ大森林のメンバーのサイズからすれば、ちょうどいいかもしれないけどね。
大森林の仲間たちは、小さいタイプの仲間でも人族くらいの大きさがあるし、三メートル以上の大きさの仲間もいるからね。
『アラクネ』のケニーや『マナ・クイーン・アーミーアント』のアリリたちなら、ログハウスタイプの家にも普通に入れるけど、大きめのメンバーだとかなり狭いんだよね。
『ライジングカープ』のキンちゃんたちなんかは、鯉のぼりサイズだから入ってくることができなかったけど、今回のこの家なら入ることも可能かもしれない。
まぁそれでも狭いだろうけどね。
このままみんなのために残そうかとも思ったが…………
三十メートルはちょっと高過ぎるので……失敗作として『波動収納』に回収した。
俺が創ってしまったどデカイ屋敷を見て、周りで訓練をしていたリリイを始めとする子供たちや近くの仲間たちがみんな集まってきてしまった。
そして何故か……みんなそれぞれに……思い思いの家を創り始めてしまった……。
一応『共有スキル』に『
ただ戦闘などには直接関係ないスキルなので、ほとんど誰も使ったことがなかったようで、面白がってやりだしてしまったのだ。
せっかくの迷宮前広場が……分譲住宅地みたいになってしまった……。
とんでもないチートな建築家集団になってしまったのだ……。
かなりの魔力を消費するのだが、やってみるとみんな楽しいようで、『魔力回復薬』を飲みながら二つ目の創作に入る者もいた。
完全に『魔力回復薬』の無駄遣いな気がするが……まぁ大量にあるからいいけどね。
「ばあちゃんの家ができたのだ! これはいいのだ!」
リリイがそう言いながら俺の手を引いて、自分の作った家に連れてきた。
前にリリイが、おばあさんと一緒に住んでいた家にそっくりだ。
頭の中にしっかりイメージできる物だし、サイズも適度だからだろう、一発で成功してしまったようだ。
それにしても……リリイはやっぱり魔法の適性が高いようだ。
「チャッピーは、遊ぶお家作ったなの〜」
今度はチャッピーがそう言って、俺の手を引いた。
チャッピーは、小さめのログハウスみたいな感じのかわいい家を作ったようだ。
よく遊園地にある……小さな子供が潜ったりして遊ぶ感じのかわいいやつだ。
「私は、だん吉たちが住みやすそうな家を創ってみました!」
今度は、トルコーネさんの娘で『虫使い』のロネちゃんが、俺の手を引きながらそう言った。
ロネちゃんは、虫馬のだん吉たちが暮らしやすそうな、広くてかっこいい厩舎を創ったようだ。
なんか出入り口がゲートみたいになっていて……秘密基地からの発進シーンを連想させるかっこいい感じなのだ。
それにしても……みんな凄いなぁ…… 一回で成功し……かつ完成度が高い……。
なんか……上手くできなかった自分が……惨めな気持ちになってくる……トホホ。
スキルレベルが10の状態でセットされているというのも要因だろうが……それにしてもみんな上手いなぁ……。
『蛇使い』のギュリちゃんや『石使い』のカーラちゃんも、前に自分が住んでいた家なのだろうか……それぞれのイメージで家を創っていた。
「オーナー! ウチの家も見てほしいし! これで男子の視線気にせず安心して寝れるし!マジアゲアゲ! マジマンジ!」
『ライジング・カープ』のキンちゃんがそう言いながら飛んできたので、見に行くと長方形のどデカイ……電車のプラットホームみたいな感じの家ができていた……巨大なガレージといってもいいかもしれない……。
俺は苦笑いするほかなかった……。
途中から広場にスペースが無くなってきたので、『アラクネ』のケニーと相談して近くに新たな住宅スペースを作ることにした。
場所を決めて、みんなの力で一気に整備してしまった。
樹木などは、いつものように『ドライアド』のフラニーと『トレント』のレントンに移植してもらった。
そして広場にあるみんなが建築した建物を、俺が一旦『波動収納』に回収して、住宅スペースに移設してあげた。
これで広場も元通りの“広場”に戻ることができた。
ただ森の中に突然巨大な住宅地ができていると、万が一この上空を通った何者かに怪しまれる可能性があるので、カモフラージュするようにケニーに頼んでおいた。
まぁ俺が頼まなくても、ケニーになら抜かりなくやると思うけどね。
俺は、魔法の練習や魔法道具を試し打ちをするために作ってある実験スペースに移動し、この家づくりの魔法を練習することにした。
子供たちですら初めてやってあんなに出来るのに、諦めるのは自分でも情け無い。
いつもなら諦めてサーヤに頼むところだが……今回は自分で出来るように練習しようと思う。
『自問自答』スキルの『ナビゲーター』コマンドのナビーにも、なんで俺は上手く出来なかったのか……半分自虐的に訊いてみたところ……
(マスターは、なんだかんだ言って、ちゃんと練習をしてませんから……。もっと努力した方がいいと思います! 仲間を頼ることは悪いことではありませんが、そろそろちゃんとしてください!」
という感じで……ディスられた上に、ビシッと言われてしまったのだ……トホホ。
それもあり……俺は奮起することにしたのだ!
俺だって……やってやる!
ということで……“創っては『波動収納』に回収し”ということを繰り返すこと……二十数回……やっとイメージしている感じの屋敷を作ることが出来るようになった。
それを完成品として『波動収納』に回収すると同時に、『波動複写』でコピーもいくつか作成しておいた。
これでこのサイズの屋敷は、いつでも設置することが可能になった。
ついでに……一階建てではあるが、巨人サイズの大きな家を創った。
そして、広場の俺の家の近くに設置した。
大森林の仲間たちでも入れるサイズだから、みんなに自由に使ってもらおうと思っている。
一階建てなら十メートルくらいで、全く目立たないしね。
そして『役所庁舎』や『ギルド会館』や『フェアリー商会』の『本部建物』や『店舗建物』なども、イメージ通りのものができるまで何度も練習した。
そしてなんとか創ることが出来た。
一度創ることが出来れば『波動収納』に回収し、その波動情報を元に『波動複写』でいくらでもコピー出来る。
そして、どうも……『波動収納』に回収すると詳細な波動情報が分かるからなのか、その後に家魔法で創るとき、イメージしやすくなって短時間で完成するようになった。
すごく創りやすくなるんだよね……。
練習で凄い数の建物を建てたので……さすがの俺も魔力が切れそうになった。
だが、自然回復力と『魔力回復薬』を飲んだお陰で、全く問題なく繰り返すことができた。
俺はすぐに『ナンネの街』に戻って、各種建物の建設をすることにした。
もう日が暮れる時間なので、名残惜しそうだったがリリイとチャッピーも一緒に連れて帰ってきた。
建築予定地では、いつものようにレントンに草を操作してもらい、目隠しをしてもらった。
人に見られない状況を作って、家魔法『
『波動収納』に入れてあるコピーした建物を設置してもよかったのだが、コツを忘れないためにも魔法で創ったのだ。
『守護の屋敷』を創ってしまったので、空いてる仮設住宅を借りて休まなくてもよくなった。
『マグネの街』の守護の屋敷とかなり似た建物で、本館のみならず別館も創ってしまった。
まだ、庭園や厩舎、使用人棟などを創っていないが、後からでいいだろう。
庭園などについては、サーヤにお願いしようかと思っている。
庭作りは慣れているし、魔法でやるにしろ魔法を使わないにしろ、楽しみながらできるのではないかと思ったからだ。
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