64.悪魔に、猪突猛進!
ウルルたちは、麻痺で動けないワシシたちの救出に入る。
ウルルたちが『赤の下級悪魔』たちの注意を引いている間に、このエリア担当の『マナ・スパイダー』たちに糸で安全圏に引き寄せてもらう作戦なのだ。
『赤の下級悪魔』たちは、十二体おり、『マナ・ウルフ』二十体と『マナ・ファング・ウルフ』二体のウルフチームの方が数では優っている。
だが、かなり格下の『マナ・ウルフ』たちには、牽制だけでも命がけであった。
そんなウルフチームの懸命の牽制により、なんとか隙を突き、『マナ・スパイダー』たちが、イーグルチーム十二体を回収することに成功した。
『マナ・スパイダー』たちの持つ『マナ・ハキリアント』謹製の『身体力回復薬』と『麻痺解除薬』で、みんな一命は取り留める。
ただ、この麻痺攻撃には、呪いの力が付加されているらしく、完全回復には至らないようだ。
『赤の下級悪魔』たちは腕力による物理攻撃と、火炎の攻撃が主体であった。
火炎攻撃は、口からの放射で、飛距離は長くない。
また、一撃必殺の攻撃力もないが、殴り技との組み合わせで十分いやらしい攻撃となっていた。
すでに、『マナ・ウルフ』の何体かが火炎で焼かれている。
幸い、致命傷にはなっていないようだが、二十体のマナ・ウルフの内すでに八体が戦線を離脱していた。
ウルルは焦っていた。
この『赤の下級悪魔』が一体か二体ならば、自分とパートナーの『マナ・ファング・ウルフ』でなんとか対処できただろう。
レベル的にも、それほど大きな差は無い。
ただ十二体はどう考えても多すぎた。
無駄に仲間の『マナ・ウルフ』を死なせるわけにもいかず、攻めあぐねていたのだ。
今度は集団で牽制している『マナ・ウルフ』たちが殴りつけられている。
かなりの腕力で、相当のダメージをくらっている。
念話で、周囲に待機している『マナ・スパイダー』たちに依頼し、傷ついた者は、随時回収し、回復してもらってはいる……
……だが……このままでは確実にジリ貧だった……。
しかし、ケニーと約束した通り、救援が来るまでは誰も死なせずに持ちこたえる。
その気合が、彼を奮い立たせていた。
そして必殺の種族固有スキル『剣牙』で、『赤の下級悪魔』に襲いかかるのだった。
しかし、数の有利も失ったウルフチームでは、十分な応戦は叶わなかった。
ウルルとパートナーの『マナ・ファング・ウルフ』の種族固有スキルを使った攻撃も、一対一の局面を作れず、決定打とはならなかったのだ。
二十体いた『マナ・ウルフ』たちも、すでに戦える状態の者が五体を切っていた。
ウルルは自身も含め、残りの者たちに、無理な戦闘をやめさせ、回避に専念させる。
ここに、足止めし時間を稼ぐ作戦に切り替えたようだ。
それでも、『赤の下級悪魔』は強く、『マナ・ウルフ』たちは火炎を浴び、動けるものがいなくなってしまった。
そして、『剣牙』による攻撃で、噛み付いていたパートナーの『マナ・ファング・ウルフ』も打撃と火炎を浴び、吹っ飛んでしまった。
もはや戦えるのはウルルのみとなった。
だが、ウルルの瞳はまだ死んでいなかった。
敵を睨みつけながら、
そう、この時を待っていたのだ。
——地響きが迫る。
ケニーが派遣してくれた救援部隊が到着したようだ。
二体の『マナ・ドリル・ボア』に率いられた『マナ・ワイルド・ボア』たちが地響きを上げながら、向かってくる。
そしてそのまま、『赤の下級悪魔』に突進する。
先頭を走る二体の上位種『マナ・ドリル・ボア』は、牙が螺旋形状にうねりドリル状になっている。
そして、種族固有スキル『猪突猛進』を使い、超加速で突撃攻撃を仕掛ける。
この攻撃は、一度ターゲットをロックオンすると、超加速のまま方向を変更し、追尾できるボアたちの必殺技だ。
そして、突進スピードもブーストをかけられるため、身構える悪魔の直前でさらに急加速する。
突然の加速に『赤の下級悪魔』も避けることができず、弾き飛ばされる。
まるで暴走列車のような破壊力である。
激突の瞬間、螺旋回転したドリルの牙が長く伸び、二つの超速回転のドリルが、『赤の下級悪魔』を穿つ。
この攻撃で二体の『赤の下級悪魔』が靄となって消えた。
『マナ・ドリル・ボア』の二体はレベルが28で、ウルルたちよりも低く、『赤の下級悪魔』に対し格下であった。
しかし、突然の奇襲攻撃と種族固有スキル『猪突猛進』の威力で、見事に打ち倒したのだった。
ただ、残りの『マナ・ワイルド・ボア』たちは、レベルが15前後と、マナ・ウルフたちと同等であった。
そのため、二十体の集団で仕掛けた『猪突猛進』も、『赤の下級悪魔』を弾き飛ばしはしたが、致命傷とまでは至らなかったのだ。
だが、この混乱の隙をウルルは逃さなかった。
種族固有スキル『剣牙』の鋭い剣先を、『赤の下級悪魔』に突き立て、一体を噛み殺していた。
それでもまだ、『赤の下級悪魔』は九体残っている。
さらに身構えるウルルとボアチームの下に、もう一つの救援部隊が到着した。
マンティスチームだ。
レベル30の『マナ・デスサイズ・マンティス』のカママを筆頭に、レベル28の同族『マナ・デスサイズ・マンティス』十七体、それにレベル29の『マナ・ボクサー・マンティス』が二体という構成である。
そしてもう一体、風を切り裂き、怒涛の速さで助っ人が現れた。
「ワレが力を貸そう。ウルル殿、共に戦おうぞ」
現れたのは『スピリット・シルバー・ウルフ』のギンロだった。
彼は、合同訓練の中で、同じ狼の一族であるウルルたちと交流を深めていたのであった。
そして、その危機に駆けつけてくれたのである。
迷宮前広場にいた彼が一瞬で、駆け付けることができたのには理由があった。
霊域に戻らず、残ったフラニーが『
このフラニーの使う転移は、戦力起用の面で劇的な効果を発揮する。
戦局を左右するほどの強力なスキルであった。
ケニーにとっては、嬉しい誤算であり、フラニーとの協力で戦術の幅が大きく広がるという願っても無い戦力アップであった。
ギンロはレベル25であるが、霊獣であり、通常の魔物のレベル25とは違う次元にいた。
十分に強力な助っ人であった。
ここでカママから、念話で戦術提案があった。
数で利があるマンティスチームが、残る九体の赤の悪魔を牽制しながら抑える。
その隙に、ウルルとギンロで各個撃破。
『マナ・ドリル・ボア』の二体はその援護。
残りの『マナ・ワイルド・ボア』たちは、周辺警戒とマンティスチームの支援をするというものだった。
マンティスチームが矢面に立って惹きつけるという作戦だったが、ウルルもギンロも現状ではそれがベストという判断をし、同意したのだった。
そして、それぞれが動き出す……
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