異世界を魅了するファンタジスタ 〜『限界突破ステータス』『チートスキル』『大勢の生物(仲間)達』で無双ですが、のんびり生きたいと思います〜

今大光明

第一章

1.ピクシー、飛ぶ!

「ちょっと! 起きなさいよ! おーい! もしもーし! 生きてるんでしょ?……生きてるよね?」


 ……誰かの声がする……目蓋が重い……少しずつしか上がらない。


 ……小さな顔が覗き込んでる……人形?……飛んでる?


 え、……喋ってる! 騒いでる!えっ


「なんじゃこりゃ!」


 俺は、身体を起こしながら叫んでいた。


「ちょっと! 開口一番『なんじゃこりゃ』はないでしょ。この美少女妖精にむかって、失礼なヤツ!」


 三十センチくらいの人形、いや妖精がプンスカ怒ってる。


 確かに、美少女と言っていい可愛い外見だ。

 しかし、自分で美少女妖精と言ってる時点で、なんとなく残念感が漂っている。


 それにしても、妖精なんて……夢を見てるのか?


「ちょっと! 今度は無視? なんとか言いなさいよ!」


 やばい、妖精さんの顔にオコってマークがついてる。


「ごめん、ごめん、ビックリしちゃって……」


 慌てて返事をしたものの、頭がボーッとして言葉が続かない。


「失礼オジサン、あんた誰?」


 ん、なんか失礼なこと言われた気がするが……まぁ、いいか。オジサンなのは間違いないし……

 ……あれ……俺、誰だっけ? 自分の名前が思い出せない。

 なぜか、四十五歳、バツイチというのはわかるのだが……。


「んー、名前が思い出せないんだよね……」


「何それ、、、、こ、これはもしや、き、記憶喪失!……ということは、こ、こ、これは恋の始まりのテンプレ来たー!」


 なんか鼻息荒く飛び回り出した。


「でも、こんなオジサンは嫌よ……無しよ、無し! ……でも年の差を超えた真実の愛……ありかも……」


 急に止まったと思ったら、顎を触りながらブツブツ言ってる。


 心の声がダダ漏れなんですけど……。

 年の差以前に、種族の差じゃないかと突っ込みたいところだけど、ここは、スルーしておこう。


「君は誰かな?」


 そっと声をかけると、彼女はキョトンとした顔になってから、居住まいをただし、名乗りをあげた。


「私は、妖精族の中でも美人が多いと評判のピクシー族の、その中でも更にの美少女ニアよ。サインはあげないわよ」


 なんか凄いドヤ顔になってるけど、残念感が半端ない。

 そもそもサイン頼んでねーし!

 この妖精ツッコミ所が多すぎるわ。


 ピクシーか……、昔やったゲームで出てたな。

 好きなキャラだったけど……やっぱ夢なのかな。

 でも、このリアル感……夢とは思えないんだよな。


 もしや……これは……異世界、そうアニメで観た異世界もの……。


 オタクと言えるほど詳しくはないが、アニメで育った世代としては、今でもアニメは好きでよく観ていた。

 世代的にはロボットアニメが好きなのだが、最近のアニメはやたらと異世界ものが多くて、流行っているのは知っていた。

 この状況は、どう考えても異世界に転移しました的な感じのやつなんだけど……。


 景色は、普通の草むらに見えるが……。

 言葉も通じてる……日本語が話されているのか、日本語に変換されているのかはわからないが……


「ちょっと! 人がせっかく名乗ってあげてるのに、また無視! ほんと、失礼なオジサン」


 ヤバイ、また怒り出した。


「ゴメン、ちょっと色々考えちゃって……。ここって、もしかして異世界?」


「異世界? 何それ?………もしかして……あなた、違う世界からの転移人なの?」


 ニアが急に真顔で訊いてくる。


「うーん、これが夢でなければ、だぶんそうかな。俺のいた世界には、君みたいな妖精がいなかったからね」


「それって、私みたいな美少女妖精がいなかったってこと? それとも、妖精族自体がいなかったってこと?」


 なんかまた残念感漂ってるけど、ここは……付き合うしかない。


「妖精自体がいなかった。妖精は物語の中の想像の生き物だったよ。 大体が金髪碧眼で耳が長い感じかな。 君みたいに黒髪黒眼で、お洒落カッコイイ服着た美少女はいなかった」


 若干持ち上げてみた。

 確かに、黙ってれば美少女アイドル顔負けの容姿だ。服も人気アイドルグループっぽい。


 本物のアイドルというか、人間と違うところは、身長が三十センチくらいなのと、背中に半透明のトンボの羽のようなものが四枚付いて飛んでいるということだ。


「あ、当たり前よ。金髪のどこにでもいるような妖精と一緒にしないで。みんなバカのひとつ覚えみたいにワンピース着てるけど、私は違うのよ! あんた、意外と見る目あるじゃない! お洒落カッコイイだなんて……ムフフ、、、」


 何か嫌なことでも思い出したのか不機嫌そうに言ったが、持ち上げたのが良かったのか、後半は機嫌が直ったようだ。なにかと忙しい子である。


 それより、大事なことを訊かなきゃ。


「異世界からの転移者っているの?」


「私は会ったことないけど……いると思うよ。今の時代にいるかどうかはともかく、過去の伝承にもでてくるし、人族の歴史書には色々書いてあるんじゃないかな。大体は、召喚された勇者の話が多いはずだけど。稀に、偶発的要素で転移してしまった自然転移の人もいたみたい。 あと、死んでから生まれ変わりでやってくる転生者というのもいるみたいだけどね。 あんた、どう見ても勇者っぽくないから、召喚転移ではなく自然転移ね、たぶん……」


 また、サラッと失礼なことを言われた気がするが、気にしたら負けだ、無視。

 無言の俺を見て、ニアが続けた。


「そういえば、自分のステータス見れないの?」


「ステータス? それって、ゲームに出てくるあれ? 見れるの?」


 これは驚きだ。

 ゲームのようなシステマチックな世界なのか………いや、異世界という時点で、もはやなんでもありか。


「ゲームでっていうのはよく分からないけど、自分の手とかを見ながら、『ステータス』って念じてみて。たぶん画面が出てくると思うんだけど」


 ニアが身振りを交えながら教えてくれる。


 これはやってみるしかない。

 左の手のひらを見ながら念じる――ステータス――


 おお、何か薄赤の半透明の画面があらわれた。

 目の前なのか、網膜なのかわからないが、不思議な感じだ。

 もう左手は関係ないみたいだ。

 ゲームの主人公のようでちょっと感動する。

 どれどれ、中味は……


[基本ステータス]

<種族> 人族

<名称> グリム

<性別> 男

<年齢> 四十五歳

<職業> ――

<状態> 記憶喪失(一部)

<レベル> 1

<身体力(HP)> 10

<スタミナ力> 10

<気力> 10

<魔力(MP)> 10


 名前は、グリム………こんな名前だった気はしないな……

 なんとなくしっくりくる感じはあるけど……本名じゃないよな、きっと。あだ名か何かだったのかな……。

 やっぱり一部記憶喪失で間違いなさそうだ。


 しかし、レベル1って……無理ゲー過ぎるだろ。

 ステータス数値もどう見ても普通だろうし、いきなり高レベルとか、ハイスペックステータスとかチート待遇を期待してたんだが……現実は甘くないってことか……トホホ……。


[サブステータス]

<攻撃力> 1

<防御力> 1

<魔法攻撃力> 1

<魔法防御力> 1

<知力> 1

<器用> 1

<速度> 1


 これも、最低値。


 もうスキルだ、スキルに期待するしかない。チートスキル、カモン!


[特殊ステータス]

<称号> ファンタジスタ 転移者

<加護> 精霊の加護

<スキル> テイムLV.1 精霊使いLV.1 言霊使いLV.1 限界突破LV.1 一粒万倍LV.1 促成栽培LV.1 財宝発掘LV.1

<固有スキル> 不思議な魅力LV.1 絆LV.1 波動LV.1 ポイントカードLV.1 怠惰LV.1 未開放 未開放 未開放 未開放 未開放 未開放 未開放


 称号がファンタジスタ? 何それ? 意味不明………サッカー選手でもあるまいし……。


 転移者とあるから転移してきたのは確実のようだ。


 それよりも肝心のスキルだ。


 うーん、よく分からん。良いのか悪いのか……わかりやすいのプリーズ!


  『テイム』にしろ、『精霊使い』にしろ、どうも自分は戦わない系らしい。

 戦闘系スキルっぽいものはない。


 『一粒万倍』とか、『促成栽培』とか、農業系スキルだろうな。

 いろんな仕事してきたけど、農業が一番楽しいし、今やってるのも農業だし、いいけどね。


 そう思って気付いたけど、仕事のことは思い出せる。

 今までやってきた様々な仕事が思い出せる。

 とりあえず、四十五歳、バツイチで、転職経験豊富で、最終的には農家だったということはわかる。


 『財宝発掘』は、なんかワクワクする響き、ちょっといいかも。


 最後の望みの固有スキルは……もっと分からない。


『不思議な魅力』って何よ、

『絆』って、

『波動』って何?

『ポイントカード』ってわけわからん。


 名前からしておかしくね、スキルと言っていいかさえ疑問な名前。

 誰か説明を……プリーズ!


 極めつけは、『怠惰』って………

 もう言葉が出ない……ノーコメントだ!


 戦闘系スキルは無さそうだし。トホホ……。


 思わず溜め息を漏らしてしまった。


 ……でも、戦闘がない安全で楽しい世界なのかもしれないな。

 それならいいんだけど。


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