第9話 対峙

その場の全員の視線がガラキに集中する。

「所長、前回は、この研究所の悪魔の実験が世の中にばれずに良かったな。

研究施設の秘密を守るために、あんたがテレビカメラの前で大泣きした、涙の記者会見は笑わせて見せてもらったよ。

人類の幸せの為に研究を続けてきたって、なんの研究をしてきたんだろうね。

俺たちは、戦う為の強化と訓練ばかりされてきて、軍用犬や銃を持った兵隊とも戦える。

大きな施設の破壊や、戦車にも負けない能力をもらったが、力があるだけだった。

幸せになる方法なんて一つもない。そんな事をする奴が人類の幸せとは笑わせてもらったぜ。」

所長は顔を真っ赤にしてわめき出した。

「お前らの要求はデタラメばかりだった。選挙に行かせろ、外の世界のことを教えろ、健康で文化的な生活をさせろって、キツネやタヌキの言うことか!そんな事できるわけないだろ。」

所長は拳銃を取り出し、ガラキに向け、狙いすましている。


いつのまにか、所長のはるか後にある、コントロール室の入り口にキュービが到達している。

それを確認したガラキは言った。

「前回は、我々のような強化動物を世の中に放っちゃ人間に迷惑と思ったが、あれから人類の幸せの為に研究してるんだから、中の動物達が出てきて、街中に出歩いても大丈夫だよな。みんな人間の言葉が喋れるんだもんな。」

バシュー、コントロール室の自動ドアの開く音に、所長は慌てて振り向いた。

キュービがリズミカルな走りで駆け込んで行った。


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