第4話 約束
仕事が終わり、近くの公園へ向かう。
知らない人のはず、なのだけれど。その思い詰めた真剣な彼の表情を見て『話だけでも聞こう』と思った。
この冬の最低気温だと言われたのがつい先日。夜風が頬をなぞり身震いした私は、マフラーをきつく巻き付けて、公園へと急ぐ。
私の姿を見つけた彼はベンチから立ち上がり歩み寄ってきた。
「すみません。お待たせしました」
と言うと
「いえ、俺が無理に約束したようなものなので。お仕事でお疲れの所申し訳ございません」
と、彼は微笑んだ。
「早速本題に入ります。タメ語で失礼します」
息を飲み、彼の言葉を待つ。
貴方は言った。
「アイを教えてくれないか」
目が点になっている、とはこの事だろう。頭では処理が追いついていない。なのに、私の口は勝手に「はい」と告げていた。
私の目に映るのは、キラキラと輝く満天の星空。私を見つめる真剣な眼差しの彼だった。
はい、と告げて数秒の沈黙。彼の顔が嬉しそうに、安心したかのように綻んだ。
「で、でも……」
私は恋愛経験が無く「愛」なんて教えられるか不安だ。何より、私を愛してくれる人なんて……そう思って俯くと彼が言った。
「誰でもない、君が良いんだ」と。
こうして、彼との奇妙な関係が始まったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます