第4話 約束

 仕事が終わり、近くの公園へ向かう。


 知らない人のはず、なのだけれど。その思い詰めた真剣な彼の表情を見て『話だけでも聞こう』と思った。


 この冬の最低気温だと言われたのがつい先日。夜風が頬をなぞり身震いした私は、マフラーをきつく巻き付けて、公園へと急ぐ。


 私の姿を見つけた彼はベンチから立ち上がり歩み寄ってきた。


「すみません。お待たせしました」

と言うと

「いえ、俺が無理に約束したようなものなので。お仕事でお疲れの所申し訳ございません」

と、彼は微笑んだ。


「早速本題に入ります。タメ語で失礼します」

 息を飲み、彼の言葉を待つ。

 貴方は言った。


「アイを教えてくれないか」


 目が点になっている、とはこの事だろう。頭では処理が追いついていない。なのに、私の口は勝手に「はい」と告げていた。


 私の目に映るのは、キラキラと輝く満天の星空。私を見つめる真剣な眼差しの彼だった。


 はい、と告げて数秒の沈黙。彼の顔が嬉しそうに、安心したかのように綻んだ。


「で、でも……」

 私は恋愛経験が無く「愛」なんて教えられるか不安だ。何より、私を愛してくれる人なんて……そう思って俯くと彼が言った。

「誰でもない、君が良いんだ」と。


 こうして、彼との奇妙な関係が始まったのだった。



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