百年後と百年前

青山えむ

第1話 西暦二千百年

 西暦二千百年。混沌の時代、とよく表現される。二十一世紀最後。

 この時代に、私たちは生きている。


 この時代に、なんて、歌詞や物語の一節みたいな表現をしてしまった。

 私は二十八歳になる。今までは仕事を覚える事に必死で、恋愛にも少し必死だったかもしれない。

 今は仕事も一通り覚えて、恋愛は諦め期間で、ちょっと気が緩んだのかもしれない。時代や人生について、考えたくなった。

 

 区切りの良い西暦二千百年。その前の区切り、西暦二千年ってどんな時代だったんだろう。

 先日、おばあちゃんの家に行ってきた。おばあちゃんは八十歳を過ぎたけれど中々元気だ。お喋りをするのが好きみたいで、私は昔の話をよく聞く。

 おばあちゃんの亡くなったお母さん、つまり私のひいおばあちゃんが、百年前の時代を生きていた。おばあちゃんがひいおばあちゃんから聞いた百年前の話を、私はよく聞いていた。

 

 現在、LGBTという単語は当然のように目に耳にする。公共施設や更衣室などにそのように書かれている。

 何でも百年前までは、そういった仕組みが無かったらしい。どんなに不便だったんだろう。今の自分に置き換えたとしたら、男女混合の部屋で着替えをするようなものではないのか。


 スマホの普及は当たり前かと思いつつも、フィーチャーフォンを所持している人にも別段驚かない。自分が使いたい携帯電話を使うのは、自然な事だ。

 百年前は、スマホ以外の携帯電話を持っていると驚かれたらしい。

 昔の家の固定電話はダイヤル式と云って、番号を回すやつだったらしい。何かの展示会で見て触った事があるけれど、爪に振動が来てびっくりした。


 病院や介護や工事現場では、ロボットが活躍している。あと、防犯カメラの数がとても多い。何でも昔、災害が多発した時期に、混乱に乗じて犯罪が増えたらしい。それに腹を立てた何処かの投資家が、犯罪抑制に資金を出したとか何とか。ありがたや。


 ファッションや髪型は、百年前と比べて多様化していると云われている。

 服のサイズは、男女同一サイズ表示になっている物がある。ジャストタイプ以外の服はほとんどそんな感じだ。

 私は男子のファッションを真似してみたくなる時があるし、男子が女子の服を着てみたいと思う事もあるからだ。

 ただ、そのパターンのサイズは在庫が少ないので、見つけたらすぐに買わないと逃してしまう。


 マッサージやエステなど、体に触れる事に関しては『女性のみ』という表記がある。LGBTの方は、LGBTスタッフの対応になるけれど、まだまだ人手不足らしい。

 誰もが過ごしやすい社会、というのは難しいけれど、それを目指す努力を絶やしてはならない。


「昔に比べて、良くなった事もあるしそうでない事もある」ひいおばあちゃんもおばあちゃんも、そう云っていた。

 私は昔、と云える程長くは生きていないし、云えない程短く生きている訳でもない。


 世界情勢は、百年経っても変わらない。あの国とあの国が対立しているとか、あの国とあの国が仲直りしたとか。けれども歴史の教科書って、どんどん足されていくのかな。

 日本の元号が昭和だった時、とても長かったらしい。


 犯罪は、新しい技術と共に新しい手口が出てくる。企業では、それを抑える為の部署が新設される程だ。私の勤める会社にもある。

 新しい発明をする部署と、どのように悪用されるかを考える部署が情報交換をしている様子は、ちょっと笑ってしまう。


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