第17話 星喰みとの決戦-2

 ワシは皆が出ていった後、島全体に結界を張ってここから戦いぶりを見守っていた。全員、ワシの予想以上の力で星みに立ち向かってくれている。

 うちの弟子もまさかグルタを召喚するとは思わんかったが、それ以上に驚いたのは彼らだ。確かにアレと戦えるだろうという算段を持ってはいたが、まさかあそこまでとは想像だにしなかった。普通の相手なら彼らに任せれば大丈夫だろう。そう、なら。


(さて、どうしたもんかな)


 ワシは右手で顎を撫でながら思案する。

 彼らも気付いているだろうが、アレの再生力は凄まじいようだ。どれだけ叩こうと、切り刻もうと、焼き尽くそうと、それがものの数十秒ほどで回復してしまっている。あれでは食い止めることはできても、倒すことは決してできんだろう。


 だが、カラクリは予想がつく。アレはおそらく、ワシが飼っているものと同じ系統の魔法生物だ。となれば、体内のどこかに莫大な魔力を宿した核が存在する。それが傷ついた場所を片っ端から自己回復させているのだろう。その核がどこにあるかさえ分かれば手の打ちようがあるが……。


(あの大きさではなあ。ワシが全部吹き飛ばしてしまうわけにもいかんし)


 あまりに大きな力を使えばその分の反動で巨大な余波が発生する。この島はワシの結界があるが、他の島はそうはいかんだろう。例えば巨大な津波を発生させてしまって飲み込まれてしまうのでは元も子もない。いやいや、何とも悩ましい。


「あの……皆は大丈夫スよね?」


 ノイがワシにおずおずと話しかける。つい難しい顔が表に出てしまったのだろう。ワシは表情を崩してノイの頭を優しく撫でた。


「ああ、そう心配しなさんな。彼らがきっと……いや、そうか。お手柄だ、ノイ!」


 その時、ワシに一つのひらめきが生まれた。絶好の力を持った者が今、ヤツと戦っているではないか。

 すぐ様、ワシはその一人に連絡を取った。



「くそ、何なのだコイツは! どれだけブレスで焼こうともすぐに傷口が塞がってしまう!」


「諦めるなグルタ! 絶対にこいつを島に近づけちゃいけない!」


「諦めるつもりなど毛頭ない! だが、このままではこちらが消耗する一方だ!」


 僕とグルタは星みの上空を旋回していた。

 ここから何度もグルタのブレスをアイツに叩き込んで傷を負わせるところまではいい。問題は、その傷があっという間に塞がってしまうことだ。グルタも手を抜いてるわけじゃない。単純に、こっちの力が足りなすぎるんだ。


 島からでは大きすぎてどんな形をしているのか掴めなかったけど、こうして空から見ることでようやく星みの全容が分かった。

 黄金に輝くずんぐりと丸い本体に体の半分まで裂けた巨大な口。確かにこの口なら島だって一飲みだ。後ろには巨大な尾ひれがついていて、形は魚に近かった。背中には巨大な穴が空いていて、そこから光線が放たれてこちらを攻撃してくる。


 その時、僕の耳に直接、師匠の声が届けられた。


『やあ、ちょっといいかね?』


「師匠! 一体どうしたんです?」


『お前さんにやってもらいたいことがあってね。砂の目でアレを見てもらえるかい』


「え? ええ、いいですけど」


 そう言われて僕は砂の目に魔力を込める。砂の目に星みの魔力の流れがぼんやりとだけど映し出された。でも何だこれ? 魔力の流れが複雑過ぎて、何がどうなってるのか全然理解できない。見ているだけで目が回って気持ち悪くなる……。


「師匠、ちょっとこれはなんて言えばいいか……」


『いやいや結構。今、お前さんの目を通して見せてもらってる。お前さんはそのまま砂の目でこいつを捉え続けてくれ。しんどいかもしれんが頼んだよ』


「わ、分かりました!」


 こんなので何が分かるのか全然分からないけど、何やら師匠には考えがあるみたいだ。僕はそのまま砂の目を維持して星みを凝視し続ける。でも、この気持ち悪い流れを見続けると世界が回ってクラクラしそうだ……。


「オオオォォオォオォォォ……」


 体を空に反らせて、星みが大きく吠える。すると、星みの上部に開いている大きな穴から、青く輝く光が放たれた。それは空中で弾けると、何十本もの光線となってこちらに襲いかかる。


「くそ、またアレが来るぞ!」


 そう言うとグルタは光線から逃げるようにスピードを上げて軌道を変える。しかし、この攻撃は僕達をどこまでも執拗に追尾するので、それはただの時間稼ぎにしかならない。けど、グルタが稼いでくれた時間を使って僕は魔法の詠唱を始める。


「守護神エギスよ、絶対不可侵のなんじの力を持って我らを護り給え! 神々の盾ゴッドガード・シールド!」


 唱え終わった後に僕は振り返って右手をかざした。そこから球状の赤い結界が発生して僕達を覆う。間髪入れず光線と結界が接触し、激しい音を立てて相殺した。凄まじい衝撃が右手にかかり、僕は苦悶の表情を浮かべる。


「くっ!」


 この時、僕とグルタは完全に光線の対応に気を取られていた。だから、星みが一度海の中に潜ったことに気付いていなかった。

 状況が一変したのに気付いたのはそのすぐ後。水が爆ぜる轟音が僕達の真下から轟いた。その音に驚いて僕達が下を見ると、星みが大きくジャンプして、その体を空中でくるりと一回転させる。その巨大な尾ひれが、僕達に向かって思いっきり叩きつけられた。


「うわあああぁぁぁぁ!!!」


 圧倒的な質量の前に、僕の結界はほとんど役に立たなかった。バリン、という音と共に結界はあっけなく砕かれ、僕はグルタの背から叩き落とされてしまう。結界が砕かれた時の衝撃で吹き飛んだので、直接尾びれで叩かれることはなかったけど、僕は凄まじいスピードで頭から海面へと墜落していく。


(やばい! けど……!)


 勢いが付きすぎて口や体が全然動かない! 何とかとっさに魔力を制御して浮遊の魔法をかけてみたけど、無詠唱じゃこの勢いは殺しきれない。このままじゃ、海面に叩きつけられて確実に死んでしまう!


 その時、僕の体に何か細いものが巻き付いたのに気付いた。それはゆっくりと僕の勢いを殺していく。そして気付いた時には、トスッという感触と共に、僕は誰かの腕の中で抱き抱えられていた。


「危なかったな。ジェフお兄さんが助けに来たぜ!」


 僕を助けてくれたのはジェフさんだった! 僕に巻き付いていたのはカークのしっぽだったみたいで、シュルッと僕の体から離れると、ジェフさんの鎧の中に戻っていった。


 ジェフさんに支えられて水面に立つと、グルタが翼をはためかせて降りてきた。良かった、どうやらグルタは無事だったみたいだ。


「この馬鹿者! 落ちたら助けんと言ったばかりだろうが!」


「ごめん……」


「……いや、すまない。避けられなかった俺が悪かったのだ。お前を責める筋合いはなかった」


「なあ、フレデリック君。いつの間にかいるこの赤いトカゲ君はどこのどなたさん?」


「誰がトカゲだ! どいつもこいつも俺のことをトカゲ扱いしおってからに!」


 そんなやりとりをしていると、騒ぎを見つけたのか残りのみんなが集まってきた。その姿は傷だらけで、かなり消耗させられてしまっているのが見て取れる。


 チヅさんが鈍器を肩に担ぎ直し、大きくため息を吐いた。


「で、いい加減どうしようかしらコイツ。いくらぶん殴っても効いてる様子がないのよね」


「斬撃も駄目だな。散々やったが、切ったそばからくっついちまう」


「おそらく、根本的に破壊力が足りないんだろう。ヤツの回復力を上回る何かで攻撃できればあるいは……」


「でもでも、今の私達じゃこれが全力だよ!」


 皆が思い思いに議論を始めるけど突破口は見つからない。

 彼らは持てる力を全て出して星みと戦っている。これ以上、彼らに求めるのは酷というものだろう。


 僕もグルタを召喚できたはいいものの、そこからは攻めあぐねてしまっている。

 師匠の魔力経路のおかげで魔力は潤沢にあるけど、それで師匠みたいな強大な魔法が行使できるかと言うとそうじゃない。魔法には大なり小なりの反動が存在し、強力すぎる魔法を使うと僕の体が反動で壊れてしまう。ましてや、アレを倒す規模ともなるとどう考えても僕の体が保たない。


 するとその時、星みが突然体の方向を変えた。あの方向は……。


「まずい! 星みがノイ達の島に!」


 今までは僕達が必死に戦って星みの興味を引いていたから島に向かうことはなかった。でも多分、星みはこれ以上構っていても仕方ないと僕達への興味を失ったんだ。

 僕の予感は的中し、星みは徐々にスピードを上げてノイ達の島へ突進していく。


「お前ら、俺の体に掴まれ!」


 一番足の早いジェフさんが両腕を皆に差し出す。皆がその腕に捕まると、ジェフさんはブーツから白炎を吹かして星みの先に回り込もうと、凄いスピードで飛び出していった。


「グルタ!」


「ああ、俺達も行くぞ!」


 僕はグルタの背に乗り、みんなの後を追いかける。


 星みと僕達の距離がグングンと近づく。でもそれ以上に星みの動きが早い。このままじゃ間に合わない!


「くそ! 間に合わん!」


 グルタが毒づいたのと同時に、星みが島を守る結界に頭から突っ込んだ。


ズドオオオオオオォォォォォォン!!!


 腹の底から震えるような鈍い重低音が響き、結界は星みの衝突に耐える。結界を突き破れなかった星みの体はくの字に折れ曲がり、空高く跳ね上がって遠くの海へ落ちた。星みが落ちた衝撃で大津波が発生し、海が大時化のようにうねり、荒れ狂った。


 一方の島の方はというと、結界のおかげで何とか食べられずに済んだみたいだ。でも、結界の状況が明らかにおかしい。あちこちがひび割れたり崩れてしまって、深刻なダメージを負ってしまったのが見て取れる。


 僕は放心したまま、グルタの背から降りる。僕達はただ、起きてしまったその光景を見つめるしかできなかった。


 その時、突然頭の中に声が響いた。


『お前さん、聞こえるかい?』


「師匠! 大丈夫でしたか!?」


『ああ、こちらは何とか大丈夫だ。だがあれはまずい。もう一度突っ込まれたら次は破られるだろう。酷なことを言うが、何としても次の突進は止めるんだ』


 師匠の命令に、僕は絶句する他なかった。


(あの巨体を……止める? 一体どうやって? いや、考えろ、考えろ……)


 ぐちゃぐちゃになりそうな思考の中、ありとあらゆる方法を頭の中で走らせる。


(どんな魔法なら? 結界魔法? いや、駄目だ。師匠の結界魔法でさえ一撃が限界だったんだ。僕のなんかじゃどうやっても保たない。攻撃魔法? いや、それこそ駄目だ。じゃあ……)


 もう思考回路はショート寸前だった。

 その時、僕の頭にポンッと何かが置かれた。


「言ったろ? こういうのは俺達に任せとけってな」


 それはジェフさんの手だった。見れば、いつの間にか皆が僕を取り囲んでいた。


「私達が絶対に止めてみせる」


「ああ。ここから先は俺達の仕事だ」


「まっかせて! 全力で止めてみせるから!」


 ああ、まただ。また彼らはこうやって僕の前に立って、僕を守ってくれようとしてくれる。それに比べて僕はなんにもできない。今の僕は戦っているふりをして、彼らのそばにいるだけの足手まといだ。

 何もかも諦めて、考えるのさえ止めて彼らに任せようとする思いが湧く。ただ一言、お願いしますと、その甘えた言葉が口から出ようとした瞬間、僕を送り出してくれた時の師匠の姿が頭をよぎった。


「……違う」


「どうしたの、フレッド君? 大丈夫よ、私達に任せてくれれば……」


 僕に触れようとしたチヅさんの手を、僕は跳ね除けるように乱暴に振り払った。


「違う! 僕は守られるためにここにいるわけじゃない! 僕は師匠に託されたんだ。皆と一緒に戦ってくれって! ここで甘えたら僕は師匠を、自分だって裏切ることになる! 僕だって……僕だって戦えるんだ!」


「フレッド君……」


 チヅさんが振り払われた手を押さえて呆然と立ち尽くす。

 やってしまった……。場はしん、となって沈黙が耳に突き刺さる。僕のせいで、皆の雰囲気をぶち壊してしまったんだ……。


 すると、アルさんが突然、僕の前に進み出ると膝をついて正面から僕を見た。強く真っ直ぐな瞳に僕は思わず目を逸してしまう。けど、アルさんの口から出た言葉は、僕の思いもよらないものだった。


「すまない、フレッド君。俺達は思い違いをしていたようだ。君はまだ小さな子供だ。だから、危険な局面では俺達がなんとかしなければと、そう思っていた。だが、それは間違いだったんだな」


 そう語るアルさんの表情はすごく優しくて、普段の引き締まって厳しい顔からはまるで想像もつかなかった。それを見た瞬間、なぜか僕の胸が熱くなり、両目からは自然と涙がこぼれていた。

 その涙を、チヅさんが優しく拭ってくれる。


「そうね。ごめんなさい。私達が間違っていたわ。ここにいることがあなたの覚悟だったのね」


「ごめんね、フレッド君! でも、でも私達、君を仲間外れにしようとか考えてたわけじゃないんだよ!」


「ああ、情けねぇなちくしょう! 何もかも分かったつもりでいた自分が恥ずかしいぜ」


 ああ違う、違うんだ。皆が悪いわけじゃない。僕の力が足りないのが悪いんだ。でも、彼らはまるで自分のことのように僕を想ってくれている。その優しさが辛くて、でも嬉しくて、もうどんな顔をしていいのか分からなかった。


 その時、僕の襟首を何かが掴み、僕の体がポーンっと宙に浮いた。そのまま体が一回転して落下すると、僕はグルタの背にまたがっていた。


「奴がまた動き出した。俺に一つ策がある。お前達、それまで時間稼ぎを頼めるか?」


 グルタの言葉通り、星みがまた動き出し、こちらに向かって突撃してきている。

 グルタの頼みに、皆は一様に頷いて応えた。


「ええ! 任せて、絶対にそれまで持たせてみせるわ。行くわよ、皆!」


『おう!』


 チヅさんの掛け声を皮切りに、皆はまた星みへと向かっていく。残された僕達を信じて。


「グルタ……」


「涙を拭け。前を見ろ。お前は戦えるのだろう? だったらそれを証明して見せろ!」


 グルタの叱咤激励。それを受けてようやく僕の腹は決まった。目に溜まった涙を袖で乱暴に拭き、星みを両の目でしっかりと見据える。

 グルタはそんな僕を一瞥すると、すぐに前に向き直った。


「グルタ、僕はどうすればいい?」


「とにかく俺に魔力を流し込め。竜に伝わる秘奥が一つを見せてやる」


 何をするのかと問おうとしたけど寸前でそれを飲み込んだ。もう迷ってる時間なんてない。今はただ、グルタを信じるだけだ!

 僕はグルタの背に両手を当てる。ただ魔力を流し込むだけじゃ駄目だ。師匠の魔力の波長はそのままじゃグルタの魔力と馴染まない。それを一度僕の中でグルタに馴染みやすい波長に変換した後、それを両手からグルタの中に絶えず流し込む。


 異変はすぐに起きた。魔力を流し込むごとに、グルタの体が大きく鳴動する。そしてその度に、グルタの体が膨れ上がっていくのを感じた。肥大化した体に押し上げられてバリバリと鱗が割れる。その下から新しい鱗が現れ、グルタは変容を続けていく。

 そして最後には、グルタの体は元の五倍はあるかというほどに巨大化していた。その内に秘める魔力量は大人のドラゴンに匹敵するか、それ以上だ。


「これが覇竜の力ドラゴニック・フォースだ。本来は成竜したドラゴンが自身の力をさらに高めるための技だが、小竜でも魔力さえあればここまでやれる。だが気を抜くなよ? 少しでも魔力が乱れれば、その瞬間俺は力を失ってしまう。だが、これがお前のなのだろう?」


「……ああ! 任せろ! 全力でお前を支えてやる!」


「ふ、いつもの調子が戻ってきたではないか! 行くぞ!」


 言うが早いか、グルタが翼を一振りする。すると、グルタの体が殺人的な加速を見せた。小竜の時とは比べ物にもならないスピードだ!

 みるみるうちに星みとの距離は縮まり、グルタはその勢いのまま星みへと突撃した。全身がバラバラになりそうなほどの凄まじい衝撃が僕の体に伝わる。


「フレッド君!」


 チヅさんの声が聞こえたので周りを見れば、皆が星みを押し止めようと頑張っていた。


「遅くなりました!」


「待たせたな! このままここで食い止めるぞ!」


「よっしゃ任せろ! スーヤも気張れよ!」


「ジェフに言われなくったって、私はいつも全力全開なんだから!」


 全員で星みを必死に食い止める。前に進もうとする星みの行く手は僕達に阻まれ、完全にその力は拮抗していた。いける! 後はこの状況を保つことができれば……。


 星みがぶるりとその巨体を震わせる。見れば上空で光が弾け、僕達目掛けて降り注いでいた。皆の手が塞がってしまっている中、何とかできるのは僕だけしかいない!

 グルタに送り込む魔力を維持しつつ、それとは別の魔力を何とか確保する。


「守護神エギスよ、絶対不可侵のなんじの力を持って我らを護り給え! 神々の盾ゴッドガード・シールド!」


 詠唱と共に、赤い結界が僕達を包み込む。星みから放たれた光の奔流は僕達を飲み込むが、結界はギリギリのところで何とか耐えていた。

 一瞬だって気を抜けない。少しでも集中を切らしたら最後、結界が壊れるかグルタの姿が元に戻ってしまう。まさに極限状態だった。


 その時だった。星みの動きが変わる。今まで力任せに押し通ろうとしていた力の向きが、突然上に変わった。体を大きく反り、僕達を空高く引っ張り上げたのだ。


「きゃあああぁぁぁ!」


「うおおおぉぉぉぉ! こなくそ、絶対に離してたまるか!」


 皆はまだ何とか星みにしがみついている。けどその後、星みは更に今度は頭を水面に叩きつけた。僕達は海中に沈み、発生した凄まじい水流で一人、また一人と星みの体から引き剥がされてしまう。

 僕とグルタは最後までしがみついていた。しかし、とどめの横振りでついに、グルタの爪が星みから外れてしまった。

 荒れ狂う海中の中、グルタは何とか水面に浮かび上がる。


「――ぷは! げほ! グルタ、星みは?!」


「くそ、逃げられた! あそこだ!」


 グルタの視線が指す方向に星みが見える。星みは今まさに、ノイ達の島に進路を向け、今度こそその全てを喰わんと加速していく最中だった。その距離はもう島の直前まで迫っている。


「師匠! ノイ! ちくしょおおおぉぉぉ!」


 僕の叫び声は漆黒の大海へ無常に消える。もう僕達は、島が飲み込まれてしまうのをただ見ているしかできなかった……。

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