めぐみ「もうすぐ春になるねえ」

おうか「そがんやねえ。めぐはどうすっつもり?」

めぐみ「決まっとる。高校卒業したら、東京いくけん」

おうか「やっぱり、歌手めざすと?」

めぐみ「決まっとる。絶対にトップ目指すばい」

おうか「がんばりな」

めぐみ「ところで新作できた?」

おうか「まだ」

めぐみ「そいぎ、もう春ってことで春の歌にして」

おうか「うーん、考えてみる」


********

風が吹いている

温かく激しく

街を通り抜ける

花のつぼみが膨らむ

ピンクに色づく

サクラの花びら


夢があると語る君の瞳は

キラキラと輝いて

はるか遠い明日を見ていた

卒業したら、この街を離れて

都会へと踏み出した

君の背中を見送るしかなかった

遠くで祈っている

それだけでいいのかな

君とともに歩きたかった

春が来ると

思い出す


風が吹いている

やさしくて暖かい

君のいる場所にも

サクラ舞い散る

今年もまた

あの頃と同じように


風が吹いている

温かく激しく

情熱をこの胸に

新しい明日を探して

この街を去っていく


サクラが咲き乱れて

旅立ちの時が来る

それぞれの道の先に

また

つながりますように


さよなら

またね


********


めぐみ「なつかしいわね」

おうか「どうしたの?」

めぐみ「この歌詞が懐かしいと思って」

おうか「どうして?」

めぐみ「たしか、高校卒業する少し前に作ったものでしょ」

おうか「そうだけど?」

めぐみ「高校時代を思い出すわね」

おうか「そう?」

めぐみ「そうよ。まあ、つまらなかったけど」

おうか「はっ?そうかしら?」

めぐみ「つまらないわよ。好きな人のいなかった高校生活よ。信じられないわ」

おうか「そういえば、あんた、高校のとき、好きな子いなかもんね」

めぐみ「あら?あなたはいたの?」

おうか「さあ、どうかしら?」

めぐみ「なによ。結局、あんたも彼一筋なわけね」

おうか「バカ言わないで。それよりもあんたは、まだあいつ追いかけているの?」

めぐみ「当たり前よ~ん。小学生のころから彼一筋だもの」

おうか「あんた、こりないわね。いつも『あきらめろ』とか『うざい』とか言われ    ているじゃない」

めぐみ「あれは愛情の裏返しよ♡えへ♡」

おうか「はいはい。本当にポジティブね」


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