1-12
食事が終わり、ひな子さんが帰ってから、真紅郎さんに僕は今日父に聞いたことを話した。
「ふうん、なるほど。でもなんなんだろうね?善意会の真の他の目的って」
「わかりません。そのうち話してくれると思います」
「そうか。わかったよ」
思案顔で真紅郎さんは頷いた。僕は例の話題を切り出す。
「それで、『蒼の怪盗』って知ってますか?」
真紅郎さんはそれを聞いて、少し考えている風だったが、急に何か思い立ったのか顔を上げた。
そのまま真紅郎さんは席を立ち上がって「ちょっと待ってて」と言い残し、リビングを離れてしまった。なんだろうと思っていたが、程なくして何か手にして戻って来た。ノートパソコンだ。
「ごめんごめん。実はぼくも正直『蒼の怪盗』なんて知らないからさ、ネットで調べてみようかなって思って」
そう言いながら、パソコンを立ち上げる。やっぱり、父さんは真紅郎さんに無理に押し付けたらしい。
「インターネットで『蒼の怪盗』なんてヒットするんですか?」
「んー、もしかしたら……あるかもじゃない?」
そう言って、真紅郎さんは起動させたパソコンをインターネットに繋ぎ、キーワードを打ち込み検索をクリックする。意外にもかなりの数がヒットしていた。
「あ。結構あるもんだね……じゃあ、手始めにウィルペディアの検索を見てみよっか」
ウィルペディア、とはネット上で誰でも編集できる百科事典サイトである。
真紅郎さんは「蒼の怪盗—Willpedia」をクリックする。そこにはこう書かれていた。
「蒼の怪盗 正式名は怪盗
「……昔の大怪盗が、記憶を呼び戻すキーワードだったって訳か」
真紅郎さんは納得したように頷いた。
「もっと深い意味があると思いますか?」
「どうだろうね?あんまり深い意味は無いと、ぼくは思うけどね」
「そうかも、しれませんね」
僕は、少し歯切れ悪く言った。
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