海と彼女と、思い出と・・・
勝利だギューちゃん
第1話
「久しぶりだね、元気だった?」
「元気じゃなかったら、ここにいない」
「確かにそうだね」
彼女は笑う。
「ねえ、。久しぶりに出かけようか?」
「どこへ?」
答えはわかっている。
でもそれを、彼女の口から聞きたかった。
「私たちの、思い出の場所へ・・・」
僕の住んでいる所は、海のない県。
いわゆる内陸県。
一番近い海でも、電車で3時間はかかる。
これでも、早い方だ。
海の近くにいる人は見飽きているが、僕にはとても新鮮だ。
ふと、海を見たくなるのも人情。
高校3年の夏休み、僕は海を見に出かけた。
受験生ではあるが、両親は気晴らしも必要と、あっさり承諾。
2泊3日で、海へ出かけた。
車窓からは、青い水平線が見えてくる。
ここの海は、都会の海と違い、とても住んでいて奇麗だ。
実はここに来るのは初めてではない。
随分前に、来た事がある。
その時、ひとりの少女と出会った。
互いの名前は、知らない。
顔もおぼろげだ。
でも、その子と遊んだと言う確かな記憶はある。
確か、旅館の娘さんだった。
たしか、ふたりで洞窟体験をした。
無謀だったが、宝物を置いてきた。
今、会ってもわからないだろう。
でも、それでよかった。
いい思い出にしておきたかった。
目的の駅に降り立つ。
「さてと、どこに宿を取ろうか?」
悩んでいる時、
「うちに来なよ」
その声に振り向く。
するとそこには、記憶の中の少女がいた。
「久しぶりだね。元気だった」
おぼろげだった記憶が蘇ってくる。
「やあ、元気そうだね」
「それだけが、取り柄だもん」
彼女が繰り返した。
「久しぶりだね、元気だった?」
「元気じゃなかったら、ここにいない」
「確かにそうだね」
彼女は笑う。
「ねえ、。久しぶりに出かけようか?」
「どこへ?」
答えはわかっている。
でもそれを、彼女の口から聞きたかった。
「私たちの、思い出の場所へ・・・」
こうして、2人で海の近くにある洞窟へと向かった。
宝箱は無事だろうか?
「そういやまだ、名前を知らなかったね」
「そうだね」
必要ないと思っていたからだ。
「改めてご挨拶。私は佐久良琴美。君は?」
「僕は・・・」
僕の声は、波にかき消されたが、彼女には届いたようだ。
「よろしくね」
「こちらこそ」
差し出された手を握る。
とても、やわらかく、そして・・・温かい。
海と彼女と、思い出と・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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