(5)会議
4月始業式翌日の放課後、運動部・文化部・特別委員会と生徒自治会からなる団体長会議を中央校舎1階の空き教室で開催した。目玉議題は新入生オリエンテーリングについて。その中でも各団体発表順が焦点になった。この会議の当番議長は副会長・総務委員長たる陽子ちゃん。陽子ちゃんも大荒れの会議は予期してなかったと思う。
「……じゃあ、オリエンテーリングでのクラブ活動の発表順を決めます。昨年までクジ引きでしたので今年もそれで」
「異議あり!」
「うちも異議あり!」
そう声を上げてきたのは野球部の加古くんと吹部の平氏の姫君こと部長の平愛美さんだった。
野球部のエースにして部長の加古くんは女子のファンが多いんだけど普段のクールさをかなぐり捨てていた。
「野球部としては人数を考慮して欲しい。運動部ではうちは部員も多いし。クジのような運任せはもう勘弁してくれって先輩から引き継いだ時に釘を刺されているんだ」
平氏の姫君こと平さんも同様だった。彼女、ホルン吹きだからか肺活量が大きい。そして声も大きくて教室の隅々まで響き渡った。
「昨年、一昨年と煮え湯を飲まされてきたって思っています。断固として運任せにはしたくない。公平な勝負、そう、ジャンケンがいい。あとうちも人数が多いからそういう要素も加味してくれて良いのではって思うのよ!」
お料理研究会の永山くんはまたこれに輪を掛けて混乱させる意見を入れてきた。
「うちは人数のような数の横暴もクジ引きのような運任せも反対です。あいうえお順なんてどうかな。これは他の人数の少ない部はみんな同じ思いだと思うんだけど?」
永山くんの一声で人数の少ないキャンプ同好会や文芸同好会、天文同好会、漫画文化研究会の代表者から「永山くんに賛成」という声が上がってきたのは当然の事だった。
「うちはどっちでもいいけど、たしかに人数はちょっとね」
と言ったのはバレーボール部女子チーム主将兼部長になっている秋山菜乃佳さん。執行部員でもある彼女は陽子ちゃんを助けるつもりで言ったっぽいけど、あまり手助けになってないかな。秋山さんも気付いたようで「テヘッ、ごめんね」と合図送ってるし。
それにしても意外な所で荒れてくれた。図書委員会ってそんな猛威だったのって感じはある。先代会長の大村先輩、これは引き継いでくれなかったなあと思ったけど……あ、違う。
「音田さんはいい人だけど大変って古城さんはもう知ってるみたいだなあ」
と苦笑していた事があった。このような意味においては言われてたという事か。そう、問題の震源地はいつも音田先輩その人なのだ。
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