古城ミフユ・クロニクル 高校3年生編
早藤 祐
4月 新入生オリエンテーション
(1)朝の出来事
4月の朝。目覚まし時計がなる直前に目覚めた。カーテンの隙間からは青空が見える。「今日はあれかあ」なんて事を思いながらエイやっと起きると身支度を整えていつもとは少し違う、でも懐かしさを感じる制服姿で階段を降りた。
今日はお母さんが朝食当番。手伝おうかなと思いながら台所に行ったらお母さんは既にフライパンと格闘中。そしてパジャマ姿のミアキがグラスになみなみと牛乳を注いでゴクゴク飲んでいた。
「おはよう、お母さん、ミアキ」
「あ、おはよう、ミフユ。悪いけどパンを焼いてくれるかな?」
「わかった。やっとくね」
台所に入って買い置きのパンを切ってトースターに入れた。すると牛乳を飲み干したミアキが私のある事に気付いて目ざとくツッコミを入れてきた。
「お姉ちゃん。今日は珍しくスカートって事は学校で何かあるの?」
「今日は新入生に生徒自治会とか部活動の紹介やるから」
ミアキの灰色の何かのスイッチがポーンと入ったらしい。満面の笑みで私の方を見た。
「ふーん。デモンストレーションっていうの?そういう奴だよね。お姉ちゃん、スラックスもスカートもどっちも似合ってるから。私も高校生になったらその制服着たい!」
「ミアキ、まずは学校の勉強でもう少しムラなくちゃんとしようね。でないとミフユの学校には入れないから」
目玉焼きを焼いていたお母さんが背中越しにミアキにツッコミを入れた。ミアキは計算やら理科やらは学年トップ争いするぐらい得意だけどあれだけ本を読んでるのにそちらの点は今ひとつ。この子に言わせれば「問題の意図がヘン」。まあ、この子は特定のジャンルの小説が好きなだけからそういうものかも。
それにしてもデモンストレーションって言い換えるあたり相変わらずこの子はどこでそんな言葉を覚えるのやら。スカートは自転車通学が乗りにくいから私は好きじゃないんだけどね。
生徒自治会は体育館で行われる新入生200名のためのオリエンテーションで大忙し。新年度最初の大イベントだ。どうも新入生が昨年の制服改革に驚いたらしく増やした制服バリエーションの意味を正しく受け取ってくれてないようだったので執行部で私と小夜子ちゃんがスカートで、陽子ちゃんと加美さんがスラックスという分担で今日は登校してオリエンテーションに臨む事にしたのだった。
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