カフェ ブルーム

板里奇足

第1話 コーヒーカップ

「返すわ、これ」とテラスさんがコーヒーカップをカウンターの上に置いた。

「気に入ったって……」サキちゃんはカウンターの向こうで不思議そうな顔をする。

「最初はね」テラスさんはため息をつく。「おもしろかったわよ」

「何、それ?」イタリ氏が口をはさんできた。

「見ての通りよ」

「だって、おもしろいっていうから。カップにおもしろいも何もないでしょ?」

「漏るのよ」

「漏るの?」イタリ氏は大喜びでコーヒーカップを手に取った。

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