愛娘
勝利だギューちゃん
第1話
娘がひとりいる。
今年から高校生だ。
妻はいない。
娘が幼い頃に、他界した。
以来、男手ひとつで、娘を育ててきた。
私と娘は、ふたりで助け合って生きてきた。
普通なら、思春期で反抗期に入るが、そのせいか、今のところそれはない。
どうにか仲良くやっている。
まあ、時間の問題だが・・・
学校が遠いせいもあり、娘は私よりも早く出かける。
食事は交代制。
今日は、娘の当番の日。
私が起きると、既に朝食とお弁当が用意されていた。
丁度、娘が出かけるところだ。
「あっ、お父さん、お早う」
「ああ、お早う」
「行ってきまーす」
「ああ、気をつけてな」
「はーい」
今は、娘の成長だけが、生きがいだ。
せめて、娘が嫁ぐ日までは、何としても持ちこたえよう。
そう、思っている。
私の家が、父娘家庭と言うのは、仕事場の人はみんな知っている。
「先輩、今日も愛娘弁当ですか?」
「まあな」
「いい娘さんですね」
「ああ、(今のところは)助かってるよ」
本当にそう思う。
ぐれることなく、反発することもなく、育ってくれた。
私にこの娘を残してくれた事を、亡き妻と、神様に感謝したい。
そんなある日、娘から、とんでもない告白をされた。
「学校を辞めたい」と・・・
わけを訊くと、このまま学校へ通っていても、意味のない気がしてきた。
それならば、自分にとって有意義のなる事をしたいと言うのだ。
娘の眼を見ると、とても真剣で、一時的な浮ついた考えでない事を悟った。
私は、「お前の人生だ。お前の好きにしろ」とだけ言った。
しかし、ひとつだけ条件を出した。
「将来、あの時高校を辞めなければ良かったと、後悔をするな」と・・・
娘はだまって、頷いた。
翌日、娘とふたりで、退学届を出した。
当然学校は反対したが、もう決心が揺らぐ事はなかった。
今、娘は看護学校に通っている。
大変だが、とても充実しているようだ。
私は娘を、愛している。
これからも、助け合っていこう。
追伸
『お父さん、私もお父さんの事、大好きだよ』
娘から手紙をもらった。
宝物が、ひとつ増えた。
愛娘 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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