第33話 書いてよ

「えっ? 記者さんなの?」

「うん…まぁフリーだけどね」

「だから平日とか利用してるんだ」

「今日は、こっちで取材があったから、たまたまだよ」


 あまり職業とか聞いてくる嬢はいないもので、思わず答えてしまった。

「どんな取材だったの?」

「あぁ…祭りの実行員にね、由来とか…まぁ大した記事じゃないよ、ローカル紙だしね」

「ねぇ…今度、アタシのこと書いてよ~」

「何を? 僕は風俗ライターじゃないんだぜ」

「なんかさ、誰かに知ってほしいじゃない、そんな気持ちになることない?」

「知ってほしい…か」


 解らないでもないさ…


 僕は、嬢をそっと抱きしめた。

 少し切ない気持ちになった。

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