オモイノコシ 〜気づかなかった恋〜

翔人。

第一章

第1話 「付き合うって。。」

幼稚園のお遊戯会で

紙の首飾りが切れて

固まってた時に

とっさに自分の首飾りを

掛けてくれたよね


私は覚えてるけど。。


きっと、、

覚えてないよね?



小学4年生の頃

クラスでサッカーが流行ってて


男子はみんな、

暑くても、寒くても

外に出て遊んでた


女子も、

クラスの勢いに乗って

校庭のベンチにちょこんと

座って応援してさ


ボールを追いかけてる

友達たちの後ろを

赤い顔で走ってて

ボールに触ったとこは、、、


あんまり、、

見た事なかったけど。


でも、



いつも一生懸命だったし


ボールを触ってる子よりも


私はいつも、一生懸命に

走っているだけの君を

ちゃんと見てたし

応援だって、、してた


心の中でだったけどね



中学2年生のバレンタインの日


初めてチョコレートを貰ったって私に自慢してたよね


食べようとした時

ハートが割れちゃってて


その時の君が見せた

驚きと残念な気持ちが

混じった顔、


今でも覚えてるし


今でも笑いたくなっちゃう。。



なぁ、柚子!

ちょっと箸取ってくんない?


えっ?

あっ!うん


目の前に座ってる男子高校生は

私の幼馴染の直也


柚子は頰杖をつきながら直也に言う


スパゲッティと言えばミートソース

フォークじゃなくて

箸で食べるとこも、相変わらずだね


学校から程近いファミレスで

学校帰りに食事をしていた。


直也は制服の白いシャツに

数滴のソースをつけ

ムッとした表情を浮かべながら


うるせぇよ!


っと一言、呟くと

また、麺をすすり出した


「ところでさ

また、彼女変わったの?」


直也は分かりやすく動揺し

スパゲッティを詰まらせた


「なんで!その事、知ってんの?!」


柚子は悪戯に笑顔を浮かべて返す


「さぁ〜ね」


残りのスパゲッティを再び食べながら

直也は私に

彼女の話をし始めた

出会いや、容姿、趣味や学校


私は自分で持ちかけた話題なのに

直也が平気な顔で時折、

笑顔を見せながら語る姿が


どこか



寂しかった




「純星ってさ、

セーラー服じゃん?


ブレザーに見慣れてる分

一緒に歩くだけで

ドキドキしちゃってさ」



私の耳に届いてた直也の声は

段々と聞こえなくなっていった



あの頃から、いつも隣にいた


そう


隣にいる事が当たり前だと思っていたけど


直也は当然のように

段々と成長して、普通の高校生になった


だけど、


私は、何にも成長してない


付き合うって良くわかんないし



ただ


自分に都合良く

現状を理解して、自分に言い聞かせて

聞き分けのある人間に

人前で演じられる

ズルさが身についただけ


そして、好きと言う気持ちを

いつか伝えたい


それだけ。



いっそ、

今、気持ちを伝えて


フラれて


心の中のモヤモヤを晴らして


ただの幼馴染のままでいようと思ったけど


言えるはずもなく。




私は強く、口をぎゅっと閉じた





「それでさ、彼女が」


「ゴメン!ちょっと私

桃花に呼ばれたから


先に帰るね!


ここは、彼女が出来た記念に

奢らせていただきます」


「え!マジで?ラッキー!

サンキュッ」


私は、何も表示されてない

携帯の画面を触りながら


不機嫌に、伝票を取った



帰り道、

柚子の気持ちにリンクするように


激しく、ローファーが

コンクリートを打ち鳴らす


次第にその音はゆっくりと安定し

一定のリズムを刻む


「あ〜あ、馬鹿みたい。


なんで、あんな奴。」


私はまた、

直也への気持ちを捨てきれず


心に留めたまま。



付き合うって何なのか

わからないまま


知った風な口ぶりと態度で


直也だけじゃなく

みんなに接するんだと思う




道沿いにある

ショップの鏡に写った私を


私は嫌いだ。



少し明るい茶髪な前髪を触りながら

思い出す



「俺さ、高校に入ったら

絶対、茶髪にする!」


「え〜!似合う気しないんだけど?」


「うるせぇ!

俺に似合ってなくても

彼女は絶対、

茶髪の美人に決めてんだから」


「決めてるって、そんな子が

アンタを好きなるわけないから」



「全然。似合ってないな。

黒髪に戻そう

あいつも気づいてないみたいだし。」

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