あたたかなキス
「う~ん…」
アタシはうなる。
「どうした? …あぁ、ホラ。口元付いてる」
「んんっ」
彼に口元をハンカチで拭かれた。
お昼休み、生徒会室で彼と二人っきりでお弁当を食べていた。
我が高校の生徒会長が彼だから、こうやって貸切状態でいられるんだけど…。
ととっ。話がズレた。
「いや、最近よくあることなんだけど」
彼が作ってくれたお弁当を食べながら、思い出す。
「うん」
「アタシとアンタ、付き合ってたっけ?」
「…うん?」
あっ、今の微妙な間はマズいかも。
やっぱり言うべきじゃなかったか。
彼とは結構長い付き合い。
でも恋愛感情を持っているかと聞かれても、首を傾げる。
彼はアタシにお弁当を毎日作ってくれる。
頭が良いから、勉強も教えてくれる。
よく二人っきりで遊びに行く。
アタシのワガママを、何でも聞いてくれる。
そして時々…キスをしたり、抱き合ったりしている。
…付き合っていると、一般的には言えるだろうな。
だから周囲の人達からは、「付き合っているんでしょ?」と言われる。
でもアタシは否定する。
だから驚かれる。
コレが3ケタに入ると、流石のアタシも悩んできた。
だからうなっていたんだけど…。
「あっあのね! 別にキライじゃないのよ、アンタのことは。でもホラ、近くに居過ぎて家族のようになっているというか、何と言うか…」
…なっ何か落ち込んでる?
彼の周囲に、暗雲が見えるんだけど…。
「あぁ、もう分かったよ。オレもハッキリ言わないのが、悪いかなとは思ってたから」
「うん…」
彼は真っ直ぐにアタシを見つめた。
「好きだよ、お前のこと。小さな頃から、ずっと」
どくんっ!
心臓が高鳴った…せいか。
「ごほっ! ぐほっ! がはっ!」
息が詰まった。
「だっ大丈夫か?」
「うっうん…」
告白されてむせるなんて、情けない…。
ムードの欠片も無い…どころか、女の子としての可愛さが無い。
でも彼は心配そうに、アタシの背中を撫でてくれる。
…何で彼はアタシのことが好きなんだろう?
アタシは冷めた性格をしている。
けれど彼は優しくて、あたたかい人。
イケメンだし、温和な性格もしているから、人気が高い。
だからアタシと一緒にいると、ヘンな眼で見られやすいのに…。
「も、平気だから」
「そうか?」
げっそりした顔で振り返る。
彼は優しく微笑んでくれてる。
だからアタシは…彼に寄り掛かる。
「おっおい、本当に大丈夫なのか? 保健室、行くか?」
「良いの。ココが1番、安心するんだから」
ぎゅうっと抱き付いて、彼の顔をじっと見つめる。
彼は心得たように、キスをしてくれる。
アタシの求める、あたたかなキスを。
「うん、やっぱり良いわね」
「何がだよ?」
「このあたたかさが、よ。手放す気が、なくなるわ」
そう言って頬にキスをすると、眩しい笑顔がアタシを照らした。
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