《第十九章 勇者VSニセ勇者》中編
「では、これよりどちらが勇者に相応しいかの勝負を始めます!」
魔王役の男があたりに響く声で司会を務める。
「おふたりには勇者に必要な素質を、3つの課題、すなわち『勇気』、『剣技』、『体力』で競っていただきます! なお、審査員はこちらの三人です」
魔王役の司会が審査員を紹介する。
「1人目はこの街の
おお! と歓声があがる。その中には彼女に仕事を斡旋してもらったものも少なからずいる。
「本来このようなことはしないのですが、お仕事という形で引き受けることになりました。もちろん公正に判定させていただきます」
ぺこりとエリカがお辞儀する。
「さて次はこれまたこの街の酒場、たおやかな花を思い起こさせる女店主、リーナさんです!」
うおおお! とさっきよりも歓声が高く上がる。
リーナは美人で気立ての良い、みなに好かれる女性なのだから当然と言えば当然だった。
「お買い物してたら、いきなりこんな場に連れられてしまったけど、面白そうなので参加させていただきますね」
にこりとリーナが微笑むと、観衆から「リーナちゃーん!」の声が上がる。
「さぁ! 最後の審査員はこの方です!」
司会に呼ばれて出て来た審査員に観衆はどよめく。最後の審査員は勇者の妻、シンシアであった。
「シンシア! なに審査員になってんだよ!?」と勇者。
「だってヒマだし、他にすることもないんだもん。あ、もちろん身内だからといって、えこひいきはしないわよ?」
「ちゃんと審査はしろよな?」
「ありがとう、シンシアさん。こんな余興に付き合わせてしまって……」
横から美男子勇者がシンシアに礼を述べる。
「あ、い、いえ。
シンシアが恥じらう乙女のようにもじもじする。
「あたし」でなくあえて「私」に変えてるのも勇者は気に入らなかった。
なんだよ! その恋する乙女のような顔は! 色気づきやがって……!
「ではこちらをご覧ください!」
司会が指さす先はギルドの2階の窓だ。
「最初の課題、『勇気』では高所の恐怖に打ち勝ってあの窓から飛び降りてもらって審査をします! 飛び降りの際の体勢の美しさも審査対象となります。もちろん魔法の使用は禁止とします!」
観客がおおっと沸き、勇者とニセ勇者の闘いの火蓋が切って落とされた。
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