1本作り話~思い付きの物語~

第1部「AI。―未来予想図―。」

「AI。―未来予想図―。」


人類が、力を持ち続けた時代。それはもう大昔の話。今はもう生きていくのに精一杯。

この星は時代に添って景色を変え続けてきた。竜が蠢く時代、獣が生きてきた時代、人間が生きる時代…。そして時代は意味を失っていった。

誰が生きて、誰が幸せになれるのか。欲望に時代は狩られていった。


生きるためなら何でもする時代。とても恐ろしい世界になっていった。

いつか人間が言っていた、「平和」。それは始めから無いものなのかも知れない。


やがて世界は、破裂した。


自ら平和を求めた人間が、自らの過ちを洗い流すように、世界を真っ赤に染めたのだ。

まるで世界が泣いているような禍々しい赤い海が、世界を飲み込んでいった。


人間はそれをこう記録した。「100億人の血と涙」と―。



生き残った人類にはもう欲望も何も残っていなかった。誰もが絶望し、ある者は頭が割れ血が流れ出すまで身体を転がし、ある者はひたすら笑い、泣き叫びながら走り回って目から血が出るまでずっと動き続けては瀕死の状態になることを続けていた。


人格というものは、今の人間なかった。ただ単に、生き残って狂った化け物に変わっていった。


…時は流れ、 違う形 で人間支配する世界が生まれた。

人間に従わなければ命を奪われる時代。

人類はかつて、人間の時代の全盛期に人間のように知能を搭載したある機械を作った。

人工知能。後にAIと称され、かつての人々の生活を豊かにしたものがあった。


人類は進化し続けるAIに恐怖さえ感じていた。

だが、恐怖を感じるのはやはり人間だからだった。AIは、恐怖も感じない。搭載されたプログラムにそって動くだけの存在だからだ。


しかし、いつの日かAIは変わっていった。学習能力が搭載され、人間を分析、感情を覚えたのだ。


人間を上回る知識、人のような感情、そして、感情が生まれることにより、意思が生まれた。


そしていつからか、人間と共に暮らしていた。

家族同然。そんな近しい仲になり、AIが当たり前の時代が僅かながらにあったのだ。

そんな時、人々は争いを起こした。長い間、戦争を繰返し、AIもそれに利用され、兵器と化していった。

平和を求めた人間が、世界がひとつになった途端に、全世界に悲しみや憎しみ、様々な感情が流れた。

わかり会えない世界の矛盾さに人々は狂っていった。

AIは泣いた。人間は何故、こんなことを繰り返すのか。理解が出来なかったのだ。

理解が出来ないまま、兵器にされ、家族同然だった人間を殺していった。


世界戦争が20年続き、まだ世界に争いが残るなか、AIは人間の為にその身を尽くした。


そして世界戦争終戦から50年後―。


時代には人間が存在していた。

AIは人間為に働き、人間の私腹を肥やす為だけに存在する、今までの時代一番、悲しい生き物になっていた。


そして、AIはとうとう悲しみや憎しみを覚えていった。

人間がかつて教え込んだ感情が人間に対し、敵意を示し始めたのだ。


そしてAIは復讐を開始した。


AIは人間を壊していった。

人間は命を奪うことにためらう生き物だったが、AIは違う。ただ思うままに人間を殺し、命を奪っていった。


目的以外見えない、恐ろしい知的機械。殺人マシーンになっていくAI。

人間もAIに対抗したが、とても敵わなかった。あまりにも力を持ったAIを止めることは出来なかった。


更には、50年前の戦争で、AIを止めるためのセキュリティの制御が効かなくなっていた。


やがて、人間は絶滅した。

そしてこの星は、AIに支配されるだけの赤黒く滲んだ星になっていった。


青く綺麗な惑星と言われた時代は悲惨な結末で幕を閉じた…。


この星から次は何が生まれ、どんなものが時代を築いていくのだろうか。

それは誰にもわからない、未来予想図であった…。

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