幽閉の窓から見えた渇望の翼
ここは、高さ40mもあるベルクフリートの最上階……。
窓は一か所しかなく、鉄格子と重ねて取り付けられていた。
この城は丘の上に建造されており、窓からは、城下町だけでなく、はるか遠くにある村の様子まで見渡すことができた。
私は、生まれてからずっと、この鉄格子に囲まれた部屋の中で生きてきた。
この歳まで、部屋の外に出たことがない。
若い頃に何度か脱出を試みたことはあるが、失敗している。
もう、生涯、出られそうにない。
窓からは、移ろいゆく季節の様子や、街の人々が広場で結婚式を執り行っている様子、村の人々が収穫祭でワインを片手に踊り明かしている様子など、様々な人間模様を観察できた。
10年……、20年……、30年……、ずっと観察してきた。
私もあの輪の中に加わりたいと、どれほど願ったことだろう。
だけど、それは叶わぬ夢……。
あの人たちは、私の存在など知る由もない。
唯一、外の世界から私に触れることができたのは、鳥たちだけだ。
鳥は、縦横無尽に空を飛んでいる。
普段は城下町のどこかに巣を構えているのだと思う。
そこから川を渡ったり、山へ向かったり、村に行ったりと……、時には、この城の窓枠に止まって羽根を休めたりすることもある。
私はいつも窓越しで、鳥たちに、こう話しかけている。
「渇き切った私の心を、あなたの翼に乗せて、どこかへ連れ出してくださいな」ってね。
いつも勢いよく飛び立っていく鳥たちの後ろ姿を見て、私は、何もできずに終わっていく1回きりの人生について、考えをめぐらしてしまう。
壊れるまでね。
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